患者満足度向上のために何ができる?
厚生労働省が公表している「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」によると、受診した病院に対して「満足している」と回答した人は、外来では59.3%、入院では67.8%という結果です。また、「普通」はそれぞれ30.7%と22.4%、「不満」は外来、入院ともに4.3%という結果です。「満足」の結果が1位とはいえ、不満を抱いている人も一定数いるのは残念なところ。では、顧客満足度を向上させるためにはどうすればいいのでしょうか? 早速考察していきましょう。
参照:厚生労働省「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」p.22(19枚目)より一部抜粋
患者はどんなことに不満を抱いている?
患者満足度を向上させるためには、患者がどのようなことに不満を抱いているかを知る必要があるでしょう。そこでまずは、「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」における「項目別にみた満足度」から、患者の満足度が低い項目を抜粋してみましょう。
「不満」と回答した患者の割合~外来患者~
第1位 | 診察までの待ち時間 | 26.6% |
第2位 | 診察時間 | 7.4% |
第3位 | 医師との対話 | 6.1% |
第4位 | 医師による診療・治療内容 | 5.5% |
第5位 | 医師以外の病院スタッフの対応 | 3.8% |
第6位 | 診察時のプライバシー保護の対応 | 2.9% |
「不満」と回答した患者の割合~入院患者~
第1位 | 食事の内容 | 14.9% |
第2位 | 病室・浴室・トイレなど | 9.1% |
第3位 | 病室でのプライバシー保護の対応 | 6.2% |
第4位 | 医師との対話 | 6.0% |
第5位 | 医師以外の病院スタッフの対応 | 4.6% |
第6位 | 医師による診療・治療内容 | 4.0% |
外来患者の不満ワースト2は、「診察までの待ち時間」と「診療時間」。なかには、「あれだけ待たされたのに診療時間はこんなに短いの!?」と感じている人もいることでしょう。一方、入院患者の不満ワースト2は、「食事の内容」と「病室・浴室・トイレなどに関すること」。治療や診療と直接関係することではないので、医師以外のスタッフも、改善に大きく関与することができそうです。
参照:厚生労働省「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」p.24(21枚目)より一部抜粋
不満点はどのように改善すればいい?
では、外来、入院患者それぞれの不満ワースト2を改善するためにはどんな対策が有効かをみていきましょう。
1. 「診察までの待ち時間」「診察時間」の改善策
まず、「診察までの待ち時間」と「診察時間」はお互いに影響しあっているものなので、あわせて考えることが大切でしょう。たくさんの患者を待たせていれば、そのぶんまきで診療していくことが必要になるので、おのずとひとりあたりの診察時間が短くなってしまうからです。そうなるのを防ぐためにも、オンライン予約システムを導入して患者数の平準化を図ったり、順番管理システムを活用してペース配分したりすることが望ましいといえるでしょう。
2. 「食事の内容」の改善策
「療養食だから薄味は仕方ない」「カロリーが優先」という考えは、過去のものだと思っていいでしょう。もちろん、「嚥下力に合わせたものを用意する」などの外せない条件ですし、そのなかでおいしさを追求することは大変なことではありますが、「おいしい」と感じることは身体や心が元気になるために大きな役割を果たしてくれます。病院食の改善や工夫に励んでいるクリニックや企業はいくつかあるので、ネットサーフィンなどで探して参考にするのもいいですね。
3. 「病室・浴室・トイレ」の改善 策
排泄の尊厳を守るためにも、安全で快適な水回りを保つことはとても大切。設備を最新のものに替えることは大変ですが、最低でも掃除や換気を徹底することで、誰もが気持ちよく使える空間を保ちましょう。
患者満足度向上のためにできることは他にもある!
上記に挙げた改善策以外にも、患者満足度向上のためにできることはたくさんあります。そのなかでもぜひ取り入れてもらいたい項目について紹介していきます。
1. 丁寧なインフォームドコンセント
形だけのインフォームドコンセントだと、患者がしっかりと理解できていない場合もあり得ます。医療は、患者が積極的に参加して、相互協力のうえで進めることがとても大切。患者だけでなくその家族も安心できるよう、丁寧に説明することを心がけましょう。
2. 相談窓口の設置
患者およびその家族が病気や病院に関して不安な点や困ったことがあるとき、気軽に相談できる窓口を設置するといいでしょう。ホームページに問い合わせフォームを設けるのも一手です。
3. 投書箱の設置、定期的なアンケートの実施
相談窓口の設置同様、患者の声を拾うものとして、投書箱の設置やアンケートも有効です。匿名ならより気軽に意見できるので、患者の不満が見えやすく、どこを改善すればいいかがわかります。
4. 利便性の向上を考える
予約システムの導入、ホームページ上で最新情報告知など、患者の利便性を向上させるためにできることはいくつもあります。どんなニーズがあるのかは、患者目線に立って考えると見えてきやすいでしょう。
5. プライバシー保護の対応を徹底させる
診察室の外に会話が漏れないような工夫はもちろん、採血や採尿が人目に触れない工夫をすることも徹底したいところ。また、名前ではなく番号で呼び出しするクリニックも増えてきています。
6. スタッフの教育に力を入れる
患者のクリニックに対する印象は、スタッフの対応によって大きく変わってきます。事務も看護師も一丸となって理想の医療を目指すと同時に、患者一人ひとりにしっかりと寄り添ってあげられることが望ましいです。
7. 地域への貢献を考える
医療提供機能や在宅ケア機能を高めることは、患者だけでなくその家族の満足度にもつながります。地域のみんなの健康を考えることができれば、普段から、頼れる存在だと思ってもらえるでしょう。
短期目標、中長期目標を定めよう
患者満足度向上のためにできることを今すぐ全部やろう! そう思えるのはすばらしいことですが、すべてを一度に変えていこうとしたら、そのぶん業務が疎かになってしまう可能性もあります。そうした事態を避けるためにも、まずは、何をいつまでに導入するかの目標を立てると同時に、クリニックの短期目標および中長期目標を定めていくといいでしょう。その際、ITに精通していないクリニックであれば、その際、予約システムの導入やホームページの刷新などは後回しにしてしまうかもしれません。しかし、集患・増患のためにも、患者にとっての利便性は一番に追求したいところ。面倒だと感じるかもしれませんが、早い段階で導入しておくと、後々とても楽に業務をこなせるようになるので、システムを提供してくれる企業などについて知りたい場合は、ぜひクリニック開業ナビにお気軽にお問い合わせくださいね。