在宅医療の現状について

「在宅医療」では、体の衰えや症状、自身の希望などによって入院・来院できない患者さんを、医師が訪問して診療を行います。すでに超高齢社会に突入している日本ですから、在宅医療の重要性とニーズはますます高まっています。今回は在宅医療の現状についてご紹介します。

在宅医療とは?

医師が患者さん宅を訪問して診察を行うことを意味する言葉に「往診」があります。この往診は、要請されて不定期に患者さん宅を訪れ診療を行うことを指します。体の具合が急に悪くなった、症状が急変したといった際に医師は往診を行います。

「訪問診療」という言葉もあります。こちらは、スケジュールを立てて定期的に患者さん宅を訪れ、診療を行うという意味です。

外来医療、入院医療に次ぐ「第三の医療」と呼ばれる在宅医療は、訪問診療と「往診」を組み合わせて、患者さんの自宅や入居している施設で診療に当たる医療の形態を指す言葉です。

いってみれば、医療サービスを患者さんの生活の場にまで広げるのが在宅医療ですが、これに当たるのは医師ばかりではありません。看護師、薬剤師はもとより、リハビリを担当する理学療法士なども関わります。そのため、在宅医療においては、その患者さんを担当する医療関係者同士の情報交換やチームワークが重要になります。

つまり、在宅医療においては、地域の医療環境、医療関係者のスキル・経験などによって患者さんが受けられる医療の質が異なってしまいます。在宅医療の難しさは、包括的な介護力・看護力・療養環境が求められるという点にあるのです。この「包括的」には、医療関係者だけではなく、地方自治体や患者さんの家族なども含まれます。

第三の医療と呼ばれ、重要性が増している在宅医療の質を向上させるためには、医師の力だけではなく総合力が問われるというわけです。

在宅医療のニーズは大幅に増えている


参照・引用元:「厚生労働省」「平成29年(2017)患者調査の概況」

「厚生労働省」の2017年(平成29年)の「患者調査」によれば、上掲のとおり、在宅医療を受けた患者さんの数は急増しています。

2005年(平成17年)には、

往診2万4,500人
訪問診療3万4,500人
医師・歯科医師以外の訪問5,900人

小計:6万4,800人

だったのが、2017年(平成29年)には、

往診4万4,300人
訪問診療11万6,300人
医師・歯科医師以外の1万9,600人

小計:18万100人

と約2.8倍になりました。日本の超高齢社会は継続しますので在宅医療のニーズが減少することはないと考えられます。

訪問診療の実施は診療所が多数

在宅医療を行った施設別に患者数を見ると以下のようになります。

2017年「施設別」在宅医療の患者数

病院
2万300人(11.3%)
一般診療所
10万5,200人(58.4%)
歯科診療所
5万4,600人(30.3%)

小計:18万100人


また上掲のグラフのとおり、「厚生労働省」の2016年(平成28年)7月6日付資料「在宅医療の現状」によれば、「訪問診療」を実施しているのは、

病院
12万3557件(11.5%)
診療所
94万8,728件(88.5%)

小計:107万2,285件

となります。つまり、在宅医療のほぼ9割は、病院よりも規模の小さい「診療所」が担当しているのです。

参照・引用元:「厚生労働省」「在宅医療の現状」

年齢ごとの在宅医療利用率

在宅医療の利用者を年齢別にみると以下のようになります。


※図は下記URLのデータを基に「クリニック開業ナビ」編集部が作成

参照・引用元:「e-Stat」「社会医療診療行為別統計(旧:社会医療診療行為別調査) / 社会医療診療行為別統計 / 令和元年社会医療診療行為別統計 報告書1 診療行為・調剤行為の状況 医科診療 」

60歳以上での診療点数を見ると「84.35%」ですので、職をリタイアする年齢あたりから在宅医療を受ける患者さんが増えることが分かります。また「75歳以上:65.90%」ですので、在宅医療の患者さんに対しては終末医療・ケアも視野に置いた診療を行うことが求められるのです。

まとめ

在宅医療のニーズは高まっており、利用する患者さんの数も増加しています。クリニックの経営を考えた場合、このような需用に応えていくのも一つの手段であるでしょう。ただし、在宅医療を行う場合には先述のとおり、包括的な医療体制が求められるもの。その患者さんに関わる医療関係者の力をいかに引き出すかが重要になるという点に留意してください。