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在宅医療の診療所設置の条件や導入後の課題

在宅医療の診療所設置の条件や導入後の課題

在宅医療の診療所設置の条件や導入後の課題

医療機関に行くのが難しい高齢者が今後さらに増加するとみられており、医療業界では「患者を待つ医療」から「自ら患者に届ける医療」への転換が求められています。そのため、今後は在宅医療を新たに導入する医療機関が増えると目されています。また、訪問診療を主とするクリニックを開く医師もいるなど、訪問診療は今後の医療の鍵となりそうです。今回は、在宅医療について、在宅専門の診療所を設置する条件や導入後の課題をご紹介します。

在宅医療を「専門」とする診療所の設立はハードルが高い

「在宅医療」とは、医療機関に行くことが困難な患者さんに、計画的な医療を提供するサービスのことです。慢性的な疾患の治療を外来で行う場合は、定期的にクリニックに通ってもらい、状況・状態を確認しながら定期的かつ計画的に診療を行いますが、これと同じことを在宅で行います。臨時的な「往診」とは異なります。

在宅医療はどのクリニックも導入可能ではありますが、「在宅医療を専門とする在宅療養支援診療所」として認められると、診療報酬の点数が高くなり、クリニックの収益アップにつながります。しかし、「在宅医療を専門とする在宅療養支援診療所」として認められるには、厚生労働省が定めた以下の厳しい要件を満たす必要があります。

  • 保険医療機関たる診療所であること
  • 当該診療所において、24時間連絡を受ける医師又は看護職員を配置し、その連絡先を文書で患家に提供していること
  • 当該診療所において、または他の保険医療機関の保険医との連携により、当該診療所を中心として、患家の求めに応じて、24時間往診が可能な体制を確保し、往診担当医の氏名、担当日等を文書で患家に提供していること
  • 当該診療所において、または他の保険医療機関、訪問看護ステーション等の看護職員との連携により、患家の求めに応じて、当該診療所の医師の指示に基づき、24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保し、訪問看護の担当看護職員の氏名、担当日等を文書で患家に提供していること
  • 当該診療所において、または他の保険医療機関との連携により他の保険医療機関内において、在宅療養患者の緊急入院を受け入れる体制を確保していること
  • 医療サービスと介護サービスとの連携を担当する介護支援専門員(ケアマネジャー)等と連携していること
  • 当該診療所における在宅看取り数を報告すること

以下は平成28年度の診療報酬改定で追加

  • 在宅患者の占める割合が95%以上
  • 5か所/年以上の医療機関からの新規患者紹介実績
  • 看取り実績が20件/年以上または15歳未満の超・準超重症児の患者が10人/年以上
  • 施設総管の件数が在総管・施設総管の件数の70%以下
  • 「要介護3以上の患者+重症患者」の割合が「在総管・施設総管の件数」の50%以上

これらの条件を満たした上で、地方厚生局に必要書類を提出し、認可を得ることで「在宅医療を専門とする在宅療養支援診療所」と認められます。しかし、条件全てを満たすのはハードルが高く、外来と在宅医療の両方を実施しているクリニックも数多くあります。

訪問時間の確保や24時間体制の構築など課題は多い

外来と在宅医療を兼ねる場合、その比率をどうするかが課題です。例えば、在宅医療がほとんどで外来は一部というケースもあれば、外来が中心で必要に応じて在宅医療を行うというクリニックもあります。前者は外来なので時間調整がしやすいのですが、後者の場合は外来中心の中でいかにして在宅医療の時間を作るかが難しくなります。外来を休んで在宅医療のみを行う日を設けるかほか、外来を早めに終わらせて時間を作る、昼休みに対応するなどさまざまなパターンが考えられます。

また、「24時間体制の構築」も課題の一つです。在宅医療を受けられる患者は、一般的な外来患者よりも病状が重いケースが多く、例えば夜中に症状が悪化というケースも少なくありません。そうした事態に対応するために、在宅医療を提供する場合は24時間体制が求められます。受け入れている患者の状況によっては24時間体制が必要ないというケースもありますが、今後「在宅医療を専門とする在宅療養支援診療所」を目指すのであれば、避けられないハードルです。

在宅医療の時間や24時間体制の構築、またそれに伴う人員確保など課題は多くあります。単独のクリニックでは対応が簡単ではないため、別のクリニックと連携して在宅医療体制を構築するケースも多く見られます。連携することでお互いにカバーし合えます。厚生労働省の基準は単独だけでなく、複数の医療機関の連携による体制構築(連携型)も認められています。協力して「在宅医療を専門とする在宅療養支援診療所」の設置基準を満たすのも一つの方法です。

その他、外来に加えて在宅医療を提供する場合はそれだけ「資金」も必要です。例えば、患者さんの元に向かう際に使う車も必要ですし、在宅医療に用いる機器の購入、在宅医療専門の医療事務知識(資格)を持つ人を新たに雇う場合もあります。思わぬ出費でクリニックが傾いては在宅医療どころではありませんから、在宅医療の導入は慎重に行うべきでしょう。

在宅専門の診療所を設置する条件や導入後の課題をご紹介しました。「在宅医療を専門とする在宅療養支援診療所」は診療報酬が高いため、厳しいハードルを越えて認可を得るメリットは大きいでしょう。ただ、患者さんは医療費が高くなるため、在宅療養支援診療所として認められていないクリニックのほうが助かるという声もあります。どのような形で在宅医療を行うか、地域のニーズを考慮する必要があります。

参照:厚生労働省『平成28年度診療報酬改定』

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