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医療機器をリースで入れることの落とし穴

医療機器をリースで入れることの落とし穴

医療機器をリースで入れることの落とし穴

クリニックを開院するには巨額の資金が必要になります。内装工事、医療機器、テナントの保証金・賃料などで多額の出費となります。医療機器については購入する以外に、リース契約を結ぶという方法があります。メリットもあるリースですが、実は意外な落とし穴にハマることもあります。

医療機器をリースにすることのメリット

リース契約を結んで医療機器を導入することには以下のようなメリットがあります。

医療機器リースのメリット

  • 手元の開業資金を別の投資に回せる
  • リース料金が全額経費処理として扱える
  • 不具合が発生しても保険に加入するため追加費用が発生しない
  • 固定資産税がかからない

開業時における最大のメリットは、購入するよりも出て行く現金を少なくできることです。

意外にハマるリースの落とし穴

医療機器をリースで導入すると決めた際に注意しなければいけないのは、月々のリース代の出費が大きすぎないか?という点です。

医療機器は高価ですから、月々のリース代も高額になりがちです。例えば総額2,400万円分の医療機器を導入し、これを5年リースすると元本分だけで年間「480万円」の支払いになります。月額「40万円」です。元本の上にリース会社の利益分が乗りますから、月々の支払いはこれより大きくなります。

リースの場合は、銀行の融資よりも短期間で返済しなければならないため、どうしても毎月の支払いは多くなり、購入するよりも総額支払いは大きくなります。

例えば「リース料率:1.80%」という医療機器のリース会社があったとします。ここで注意していただきたいのは、この「リース料率」というのは、銀行で用いる「利子率」ではないことです。

リース料率は、リースされる機器の金額に掛けて月々の支払い金額を計算するための数字です。

例えば、上記の総額「2,400万円」の医療機器の場合、5年間「リース料率:1.80%」なら、

2,400万円 × 1.80% = 43万2,000円

が月々のリース料になります。

43万2,000円 × 12カ月 × 5年間 = 2,592万円

が支払い総額です。総額2,400万年の医療機器ですが「192万円」(8%)余計に支払うことになるのです。ですから、医療機器をリースで導入することにはこのようなデメリットを覚悟する必要があります。

また、開院して月々リース料で「43万2,000円」の出費に耐えられるかどうかが問題です(あくまでも例ですが)。リースは最初のキャッシュアウトを抑えてくれますが、全てをリースでまかなうと月々の出費が大きくなってしまうのです。

もし、事業計画どおりに患者さんが集まらず売上が思うように入ってこなかった場合、リース料のランニングコストに耐えかねるということがあり得ます。

要は、バランスを重視することです。

2,400万円分の医療機器を導入するのであれば、月々の支払いを抑えるために、例えば1,400万円分は銀行から融資を受けて購入しよう、ということなどを行うのです。

1,000万円であれば、「リース料率:1.80%」での月々のリース料は、

1,000万円 × 1.80% = 18万円

です。もちろんこれに銀行融資の1,400万円の返済が乗りますが、銀行融資の場合は10年で返済など長期に返済期間を取り、利子率も低く抑えることが可能ですから、全額リースにするより月々の支払い金額を少なくすることが可能です。

初期投資を抑えることができるからといって「医療機器を全てリースで」という選択をすると、月々の出費が増大するという落とし穴にハマり、もし売上が予定どおりに上がらない場合には危機に陥る可能性がある――というわけです。

繰り返しになりますが、大事なのはバランスです。最新の機能を備えたものが短いスパンで出るような医療機器はリースの方が向いています。新しい機種でリース契約を更新することもできます。逆に機器の耐用年数が長く、長く使い続けるという機器はリースには向いていないといえるでしょう。

総じて皆さんがハマるのは「売上が事業計画どおりにいかず、お金が入ってこなかった」場合で、その結果「資金不足」(キャッシュショート)に陥るのです。

企業経営者講習などを受けたことのある方はご存じかもしれませんが、「PL(損益計算書)だけ見えていても駄目。CF(キャッシュフロー)を見ろ!」とよくいわれます。中小企業・零細企業の場合、これは鉄則です。

しかし、初めてクリニックを開業した場合には、このような視点がすぐに身に付くはずはありません。これから開業する医師の皆さんには「手元にお金がいくらあるのか」を常に意識し、クリニックの経営が軌道に乗るまでは、できるだけ出て行く現金が少なくなるように注意することです。医療機器をリースにするかどうかも(全部リース・一部リースの判断も含めて)、キャッシュフローを基に考えるようにしましょう。

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