電子カルテのスムーズな運用にはクラークが必要?
医療のデジタル化が進むにつれて、「クラーク」という言葉を耳にすることが増えたと感じている人は多いでしょう。「クラーク」の代わりに、「医療クラーク」「メディカルクラーク」「医療秘書」などの言葉が使われることもありますが、いずれの場合も意味は同じで、医師の事務作業を補助する「医師事務作業補助者」を指します。では、具体的にはクラークはどんな業務を請け負っているのでしょうか? また、今後さらにデジタル化が進むと、クラークは医療機関にとって欠かせない存在になるのでしょうか? 早速説明していきます。
クラークの仕事内容は?
「医師の事務作業補助」とは具体的にどんなことをするかというと、「電子カルテ入力」「診断書作成」「処方箋の作成」「会計情報の作成」「患者の診察予約」「証明書作成」などが主な仕事となります。そのなかでももっとも必要とされているのが、電子カルテの入力作業です。なぜなら、電子カルテの入力をクラークに任せることで、医師は患者の診察に集中できるためです。タイピングが得意でない医師は、キーボードや画面から目が離せないこともあるため、患者からは「全然こちらを見てくれないな」と思われてしまいがちですが、クラークが入力を代行してくれていれば、しっかりと患者と向き合って診療をおこなうことができます。
医療クラークと医療事務の違いは?
会計情報の作成や患者の診察予約などが業務に入っていることから、「医療事務と何が違うのだろう?」と疑問を抱いた人もいるかもしれません。二者の仕事内容には実際に近しい部分もありますが、基本的には、医療事務は受付の窓口業務をおこない、医療クラークは、主にナースステーションや診療室などで医師の事務サポートをおこなうものとされています。
このことに関して、厚生労働省医政局長が記した文書「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」には、以下のように記されています。
「診断書、診療録及び処方せんは、診察した医師が作成する書類であり、作成責任は医師が負うこととされているが、医師が最終的に確認し署名することを条件に、事務職員が医師の補助者として記載を代行することも可能である」
つまり、クラークを導入することは問題ないものの、入力した内容の最終確認は医師がおこなうことが必要だということです。
参照:厚生労働省「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」より一部抜粋
クラーク導入によって期待できる効果
1. 診療のクオリティの向上
クラークを導入することによる効果としてまず挙げられるのは、診察の質の向上です。診察中のタイピングをクラークに任せれば、より患者に集中できますし、診察と並行して書類を作成してもらえば、患者にとっては待ち時間が少なくなることにつながり得ます。
2. 診療の効率化
優秀なクラークは、医師の診療方針やよくある処置などを覚えていくほど、事前準備も万端になってきます。そうなると、診療がさらに効率化されます。
クラークは導入すべき?
クラークを導入したほうがいいかどうかは、クリニックの規模や主な診察内容などによっても異なりますが、日々の業務に追われがちで、かつ予算的に余裕があるのなら導入を検討してもいいかもしれません。
予算的に余裕があるかどうかを見極める際のポイントが、「人件費率」です。人件費率とは、クリニックの収入のうち、人件費が占めている割合です。給与や賞与、各種手当だけでなく、福利厚生費や法定福利費、通勤定期券、社宅費用などをすべて含めて算出します。クリニックにおける人件費率は、収入の15%が適正とされるので、それを下回っているなら新たな人材を採用を検討してもいいかもしれません。反対に上回っているようなら、現状では新たな人材の採用は見送ったほうがいいでしょう。
クラークの給与の相場は?
新たな人材の採用を検討するとなると、気になるのがクラークの給与の相場です。クラークの年収の相場は約277万円、月給換算で23万円程度とされています。日本の平均年収と比較すると低めなので、人件費率を計算してみて「今のスタッフにプラスして採用してみたい」と考えるクリニックも多いかもしれません。低めだからこそ、予算的に余裕があるなら、平均より高い年収に設定して募集をかければ優秀な人材がつかまりやすいかもしれませんね。
参照:求人ボックス 給料ナビ 病棟クラークの仕事の年収・時給・給料
クラークの導入方法は?
クラークの導入方法は2つ考えられます。
1. 既存スタッフをクラークに育成する
ひとつめの方法は、既存スタッフをクラークとしての知識およびスキルを吸収してもらうことです。前述の通り、仕事内容に関しては医療事務と似通った部分もあるので、ゼロからの知識、スキル吸収ほど時間がかかりません。
2. クラークのスキルがある人材を採用する
もうひとつは、クラークとしての仕事を請け負ってくれるスタッフを新たに雇うことです。未経験であっても、ある程度のパソコンスキルがあれば育成が可能です。特に、タイピングスピードや、相手の話を聴きながら内容を簡潔にまとめるスキルなどは、面接時にしっかりチェックしておきたいところです。
クラークをクリニックに配置する際のポイントは?
クラークをクリニックに配置するにあたって、まずは現場の体制を見直す必要があります。新規開業きっかけの導入ではなく途中から配置することになるなら、スタッフ全員に体制が変わることを伝えたうえで合意を得て、全体の流れを変えていく必要があります。
また、クラーク自身に着実に業務に慣れていってもらうためにも、教育にはしっかりと時間をかけたいところです。既存スタッフをクラークに育成する場合は、これまでの業務との違いによるストレスの蓄積がないかなど、メンタル面のケアにも気を配りたいところです。
スタッフ全員で、「クラークも医療チームの一員」という意識を共有しよう
前述の通り、クラークの主な仕事は医師のサポートであるため、看護師や事務と接する時間より医師と行動を共にする時間が長いです。そのこともあって、クリニック内で新しい体制が固まるまでの間は特に、クラークと他のスタッフとのコミュニケーションが不足する場合などもあるかもしれません。そうならないように、全員で「同じチームの仲間」なのだという意識を共有することはとても大切。医師からもその大切さをしっかりと伝えていきたいですね。