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血液1滴で41項目のアレルギーがわかる「ドロップスクリーン検査」なら子どもにも負担が少ないと親にも好評

血液1滴で41項目のアレルギーがわかる「ドロップスクリーン検査」なら子どもにも負担が少ないと親にも好評

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花粉症や食物アレルギー、アトピー性皮膚炎など、アレルギー疾患に悩む患者は多い。自分が何のアレルゲンによってアレルギー反応が引き起こされているかを知っておけば、可能な限り対策を取ることができますが、特に小さな子どもの場合は、それを調べるための検査を怖がってしまいがち。しかし、最新のアレルギー検査機器「ドロップスクリーン」を使った検査なら、従来の検査のように腕から注射針を使って採血する必要がなく、指先に小さな針を刺すだけで検査できるうえ、血液の採取量はたったの20μL(血液1滴)でOK。子どもへの負担を最小限に抑えることができます。しかも、これまでは検査結果が出るまでに1週間近く要していたところ、「ドロップスクリーン」を使えば、約30分後に結果がわかります。加えて、検査対象として41種類ものアレルゲンをカバーしているのも大きな特徴。従来の常識を覆す検査ということで、導入を希望する病院・クリニックも急増中の「ドロップスクリーン」の魅力に迫ります。

開発期間は6年。理化学研究所との共同研究によって、シングルアレルゲンのみでなく、41項目を一度に調べられるスクリーニング検査が可能となった

「ドロップスクリーン」は機械と試薬の総称であり、機器は「移動式免疫発光測定装置 ドロップスクリーン A-1(以下ドロップスクリーンA-1)」、試薬は「ドロップスクリーン 特異的IgE抗体測定キットST-1(以下ドロップスクリーンST-1)」という名称。日本ケミファ株式会社(以下、日本ケミファ)が、臨床検査薬事業で開発を進めてきました。開発期間はトータルで6年。同社にはもともと、特異的IgEアレルゲン(シングルアレルゲン)を測定する技術を持っていましたが、これをベースとしたスクリーニングキットの開発を理化学研究所から打診され、同研究所の持つ特許と日本ケミファのアレルギー測定技術を使った共同研究により、2019年体外診断用医薬品として、1滴の血液でアレルゲン41項目の特異的IgE抗体を測定するキット「ドロップスクリーン ST-1」の製造販売認証を取得しました。現在では、「ドロップスクリーン」が登場したことによって、より多くの病院およびクリニックで、患者が簡単にアレルギー検査を受けられるようになったのです。

指先から採取した20μLの血液があれば30分後には結果が出ることから、医療関係者の注目度も高まっている

「ドロップスクリーン A-1」は、指先から採取した20μLの血液をもとに、院内でアレルギースクリーニング検査ができる装置として、近年、注目を集めています。受診当日は、簡単な問診と診察を終えたら、いざ採血。測定から30分後には結果が出るので、患者は当日中に医師から診断をもらうこともできます。

コンパクトなサイズ感や使いやすさも魅力。タッチパネル式だから直感的な操作も可能

では、実際にどんな装置なのかを詳しくみていきましょう。

ドロップスクリーン

「ドロップスクリーンA-1」の本体は、縦385mm、横262mm、奥行き380mm。A3用紙(297mm×420mm)程度のスペースがあれば、設置できる装置です。左上にはタッチパネル、その下に電源と、内部データ読み出しのためのUSBコネクタを配置。右下のカバーを開ければ、試薬架設部にアレルゲンカセットおよび試薬カートリッジを挿入することができます。

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使い方はいたって簡単。検体ピペットを使って、検体となる20μLの血液を採取した後、試薬カートリッジに挿入して検体を添加したら、タッチパネルから患者情報を入力。その後、試薬架設部にアレルゲンカセットおよび試薬カートリッジをセットします。ここまできたらあとはタッチパネルで測定開始ボタンを押すだけ。30分で測定が終了します。

測定後は、41項目のアレルゲンに対する陰性、擬陽性、陽性までを7段階で表した専用報告書がプリントアウトされる

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測定終了後には、ドロップスクリーンで検査できる41項目のアレルゲンに対する反応を、陰性から擬陽性、陽性までを7段階で表した専用報告書がプリントアウトされます。その専用報告書を見ながら、患者に説明できるのはもちろん、患者様用説明資材として、ダニや動物の皮屑、花粉といった「吸入系・その他」19項目、卵や牛乳、甲殻類をはじめとする「食物系」22項目の特徴を説明したものも用意されているので、より簡単に、わかりやすく患者に説明することができます。

プラスチック製の基板を固相とした化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を用いて、各アレルゲンにどのくらい強く反応するかを判定

それにしてもなぜ、たった1滴の血液を「ドロップスクリーン ST-1」にセットするだけで、自動で測定することが可能なのでしょうか?

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「ドロップスクリーン ST-1」に採用されている反応原理は、プラスチック製の基板に光固定化法を用いたアレルゲンを固相とした化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)です。この測定法では、まず、基板に固定化されたアレルゲンに、検体中のアレルゲン特異的IgEを反応させて、ALP標識抗体を反応させます。その後、発光基質を反応させ、化学発光させることによって、基板に結合している複合体のALP活性をはかります。この際、基板に結合しているALP量はアレルゲン特異的IgEの量に応じて変化するので、発光したシグナルから検量線をもとに特異的IgE抗体濃度を求めるという仕組みです。

ドロップスクリーンの実現化に欠かせなかった「何でも固定化法」が開発されたのは2003年。その後、改良を重ねて実用化至った

この測定法を実現化するにあたって欠かせなかった技術が、生体由来の物質をはじめ有機化合物であればなんでも基板に固定化できる「何でも固定化法」です。これは、光に反応する物質(ポリマー)を作製して有機化合物と混ぜ、それを基板に載せて光を当てると、「ラジカル架橋反応」という反応を起こして、有機化合物が基板に固定されるという方法。理化学研究所によって2003年に開発されて以降、改良が進められてきました。その結果、この技法を用いてさまざまなアレルゲンをタンパクチップとして基板に固定化して、かつそれらのアレルゲンに対してのIgE結合量を自動的に測定できるシステムとして、「ドロップスクリーン」が実用化されるに至ったのです。

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濃度0.7IU/mL以上を「陽性」と判定。さらに陽性は濃度によって5段階に分類されるので、自分がどれくらいアレルゲンに反応するかがわかりやすい

測定結果は、クラス0からクラス7までの7段階に分類。濃度0.35IU/mL未満は「陰性」の判定で「クラス0」。濃度0.35IU/mL以上0.7IU/mL未満は「擬陽性」で「クラス1」。クラス2以上は「陽性」で、0.7IU/mL以上3.5IU/mL未満=「クラス2」、3.5IU/mL以上17.5IU/mL未満=「クラス3」、17.5IU/mL以上50IU/mL未満=「クラス4」、50IU/mL以上100IU/mL未満=「クラス5」、100IU/mL以上=「クラス6」という結果になります。

一度の来院で済むことは、患者にとって大きなメリット。当日からアレルギー対策できることもうれしいポイント

診断結果は後日の受け取りとしている病院が多い中、ドロップスクリーンを使えばたった30分で結果がわかるとあって、一度の来院で済むことを大きなメリットと考える患者も多い模様。二度の来院となると、なかなか次の予定を調整しにくいという人にとってうれしいのはもちろん、30分後に診断、治療方針の決定ができるというメリットがある。より早期に患者がアレルゲンへの対応ができることも大きい。

「30分で検査結果が出る」「指先からの採取だけでわかる」ことが、患者によってSNSで拡散?

最近では、InstagramやtwitterなどのSNSで、血液1滴で当日結果がわかった、など発信している患者も増えているとのこと。また、そのことが集患・増患につながったと、クリニックからのうれしい報告もあるといいます。

指先からの採血なら、普段採血をおこなう機会が少ない看護師でもすぐに慣れ採取できる

導入している病院は、小児科や皮膚科、眼科まで多岐にわたりますが、診療する側からみても、腕からの静脈採血を行わなくて済むことは大きなメリットとなっているそう。医師が採血を担当していて、検査のたびに診察の流れがストップすることもあるし、花粉症の時期にアレルギー患者が増える眼科などは、普段は採血をおこなう機会が少ないため、指先からの採血なら看護師の負担も軽減できるのです。

もちろん、導入前には簡単なトレーニングは必要ですが、指先からの採血をマスターするには20分~30分で十分。機器の画面操作もわかりやすくできているため、細かな取扱説明書を読み込む必要はありません。給排水装置が不要で設置スペースも小さいため、導入を機に、院内のレイアウトを大きく変えなくて済むのもうれしいポイントでしょう。先に述べた通り、「ドロップスクリー A-1」の本体サイズは、縦385mm、横262mm、奥行き380mm。クリニックによっては、そのくらいのコンパクトなサイズなら診察室に起きたいと考えるところもあるでしょうし、採血室などを有している病院の場合は、そうした空間に設置すると使い勝手もいいかもしれません。

今後は、「ドロップスクリーン」の海外での展開も視野に入れている

日本ケミファによると、ドロップスクリーンを導入したいという声は日に日に増えているとのこと。それにともない、試薬の生産量を引き上げる必要があったほど。また、「わずか20μLの血液で、当日中、30分で41項目の検査結果が出る」というキットは海外でもまだ見聞きされていないため、今後は海外でも展開していく目論見があるといいます。

アレルギーに悩む患者が増えている現代だからこそ、その対策を取るための検査のニーズが今後ますます高まることは間違いありません。少ない負担での検査を提供することで、一人でも多くの患者さんに笑顔になってもらえるよう、自分の病院ではどんな施策をとることができるのか、一度考えてみてもいいかもしれませんね。

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