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クリニックのキャッシュフローについて考えるべきこととは?

クリニックのキャッシュフローについて考えるべきこととは?

220610

開業医として独立すると、医師であると同時に経営者でもあります。経営者である以上、クリニックの財務状況についてもしっかり把握しておく必要があります。そこで今回は、クリニックのキャッシュフロー(Cash Flow=お金の流れ)について考えてみましょう。

キャッシュフローが回るとはどういう状況?

キャッシュフローがうまくいっていることを「キャッシュフローが回っている」といいますが、まずは、お金の流れが回るとはどういうことなのかを説明します。

ビジネスにおいて、お金は、「調達」「投資」「回収」「分配」の4つのサイクルを回っています。クリニックにあてはめて説明すると、金融機関からの融資などで得たお金で、医療機器のリースや賃貸物件の支払いをおこないながら医療収益を得て、そのなかからスタッフや自分自身の給料をまかない、同時に返済もおこないながらクリニックを運営していきます。

この流れがうまくいっている状態を「キャッシュフローが回っている」といい、キャッシュフローが回っていれば、事業継続に関する不安が少ないということになります。ただし、キャッシュフローが回っているからといって必ずしも黒字だとは限りません。赤字であってもキャッシュフローは回る場合があります。反対に、黒字であってもキャッシュフローが回らないことがあります。どういうことなのかを説明していきます。

黒字でもキャッシュフローが回らなくなるとは?

医療収益を上げて利益が出ている黒字の状態であっても、手元のキャッシュが少なくなったことからキャッシュが回らなくなれば、事業継続が難しくなります。では、なぜ収益を上げているのに手元にお金がないということが起こりえるのかというと、入金待ち状態の「医業未収金(売掛金)」が発生しているからです。

支払基金・国保連合会からの振込入金である「医業未収金(売掛金)」の額が大きいと、手元にお金がないため、スタッフに給与を支払うことも家賃を支払うこともできません。これが、いわゆる「黒字倒産」です。では、なぜ未収金の状態が続くことがあるのかを続いてみていきます。

黒字倒産が起こる原因とは?

黒字倒産が起こる原因は2つあります。

1つめは、「タイムラグ」の存在です。クリニックにおける主な収入源は保険診療収入ですが、保険診療収入には、診療から入金まで最長で3か月のタイムラグが発生します。もちろん、その3か月までの間にもリース料や賃貸料などさまざまなお金を払う必要があります。しかし、手元にお金がなければ支払うことができず、収支としては黒字なのに倒産するしかなくなってしまうというわけです。

そしてもう1つは「減価償却」です。一定の金額以上の医療機器などを購入した場合、いったん資産として計上したうえで、「減価償却費」として数年間に分割して経費にすることになります。つまり、購入した時点で大金を支払うにも関わらず、そのタイミングでは収支計算上はそのうちの一部しか経費として落とすことができないのです。

そのほか、医薬品および診療材料の未使用在庫に関しては、診療収入を上げるために使われていないことから、原則として資産として計上することになりますが、既に購入していることからお金は出て行ってしまっていることも、黒字倒産に拍車をかける要素となりえます。

黒字倒産を防ぐためにはどうすればいい?

黒字倒産を防ぐためには、前述した2大要因およびそのほかに原因となり得ることを頭に入れたうえで、キャッシュフローが滞らないよう気を付けることが必要です。

具体的には、まず、キャッシュフローを重視した事業計画書を用意することが肝心です。特に、融資の返済やリース料金の支払いに関しては、開業時点から月にどのくらい必要かわかっているので、開業から2年程度はキャッシュフロー優先で経営をおこなっていくのが賢明でしょう。

また、開業から3か月~半年程度経つころには、設備の不具合や人手不足による人材の追加募集など想定外の出費が必要となることが少なくないので、このことも視野に入れておくことが大切です。

キャッシュフローを視覚化するには?

気を付けるべき点がわかっていても、お金の流れは目に見えるものではないため、気付いたときにはすでに流れが滞っていたということもあり得ます。そうならないためにも、常日頃からキャッシュフローの現状を把握しておくことはとても大切。では、どうすればキャッシュフローの現状を把握できるかというと、キャッシュフロー計算法を活用することがおすすめです。そのためには、損益計算書、貸借対照表と連動している「キャッシュフロー計算表」を作成することが一番。

キャッシュフロー計算書は大規模法人にしか作成義務がありませんが、作成することによって、そのときどきで自由に使える資金はどれくらいあるのかなどを簡単に把握することができます。損益計算書および貸借対照表と連動しているため、作成自体は難しくはないので、ぜひ作成を検討してみては?

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