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クリニック開院に必要な申請書とは?

クリニック開院に必要な申請書とは?

クリニック開業に必要な届け出とは?

クリニックを開院する場合には非常に多くの各種申請書を監督する諸官庁に出さなくてはなりません。また、申請書の提出期限は、「事前」「10日以内」などそれぞれ異なりますので、必要な書類の準備は早く始める必要があります。ここでは、クリニック開院に必要な申請書についてご紹介します。

クリニック開院に関係する監督機関

クリニック開院に関係するのは以下の監督機関です。診療科目やクリニックに備える医療機器などによって提出する書類は異なりますが、多くの申請書を出さなければならないことは確かです。

  • 保健所
  • 地方厚生局
  • 社会保険事務所
  • 労働基準監督署
  • 公共職業安定所
  • 税務署
  • 地方自治体(区市町村)
  • 福祉事務所
  • 医師会

また、必ず出さなくてはならない申請書と任意提出の申請書があります。例えば、同じ保健所に出す申請書でも、「診療所開設届」(個人事業主の場合)は絶対に出さないといけませんが、「診療用エックス線装置備付届」はクリニックにレントゲン装置を置かないのであれば必要ありません※。

※定格出力の管電圧が10キロボルト以上かつその有するエネルギーが1メガ電子ボルト未満の診療用エックス線装置を備えた場合に提出します。

クリニック開院に必要な申請書

個人事業主として開院するのであれば、まず「診療所開設届」を保健所に出す必要があります(医療法人の場合は「診療所開設許可申請書」)。これが受理されれば「医療法」上は医療機関と認められたことになります。

しかし、社会保険診療を行うためには「保険医療機関」と認定されなければなりません。この申請書は、クリニックの場所を管轄する該当厚生局の事務所に「保険医療機関指定申請書」を提出し認可を受ける必要があります。これが受理されて初めて「医療機関コード」が割り振られ、社会保険が適用される診療が行えるのです。

また、クリニックが有床の場合には「診療所使用許可申請書」を保健所に提出しなければなりません。この3つの書類がまずクリニックを開院し、保険診療を開始するための最も重要な届け出・申請書です。

他に、以下の届け出・申請書が必要になるのが一般的です。

保健所に提出するもの

  • 診療用エックス線装置備付届
  • 麻薬管理者・施用者免許申請書
  • 結核などの医療機関指定申請書

福祉事務所に提出するもの

  • 生活保護法指定医療機関指定申請書

労働基準監督局に提出するもの

  • 労災保険指定医療機関指定申請書

医師会に提出するもの

  • 母体保護法指定医師指定申請書

クリニック開院に際して必要となる届け出・申請書

以下が、一般的にクリニック開院について必要となる届け出・申請書です。診療科目やクリニックに備える医療機器、また人を雇用する、家族に給与を支払うなどの諸条件によって異なりますが、開院にはこのような多くの書類をそろえなければならないのです。

保健所への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
保健所診療所開設届(個人事業主)開設後10日以内
診療所開設許可申請書(医療法人)事前
診療所使用許可申請書(有床)事前
診療用エックス線装置備付届備付後10日以内
麻薬管理者免許申請書・麻薬施用者免許申請書事前
結核などの医療機関指定申請書保険医療機関指定後

地方厚生局への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
地方厚生局保険医療機関指定申請書(個人事業主)開設届出後、診療開始予定月の前月締切日
診療料の施設基準等に係る届出書算定を開始しようとする月の締切日


社会保険事務所への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
社会保険事務所健康保険・厚生年金保険新規適用届当該事実のあった日から5日以内
新規適用事業所現況書当該事実のあった日から5日以内
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届当該事実のあった日から5日以内
健康保険被扶養者(異動)届当該事実のあった日から5日以内

労働基準監督署への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
労働基準監督署労働保険 保険関係成立届保険関係成立の日から10日以内
労働保険概算・確定保険料申告書保険関係成立の日から50日以内

都道府県管轄労働局への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
都道府県管轄労働局労災保険指定医療機関指定申請書保険医療機関指定後

公共職業安定所への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
公共職業安定所雇用保険適用事業所設置届事業所設置から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届資格取得の日の翌月10日まで

税務署への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
税務署個人事業開廃業等届出書事業を開始した日から1か月以内
源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書適用を受けようとする月の前月末日(納期限の特例については12/20)
青色申告承認申請書事業を開始した日から2か月以内
青色事業専従者給与に関する届出書事業を開始した日から2か月以内
たな卸資産の評価方法の届出書翌年3/15(確定申告期限)まで
減価償却資産の償却方法の届出書翌年3/15(確定申告期限)まで
給与支払事務所等の開設届書開設の事実があった日から1か月以内

区市町村への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
区市町村各種医療機関指定申請書保険医療機関指定後

医師会への提出書類と提出タイミング

提出先提出書類提出タイミング
医師会入会申込書随時

個人事業主の場合は、診療所開設届(個人事業主) 保健所への提出が最重要

開院するために最も重要な届け出の一つです。クリニックが完成した状態で保健所に提出します。クリニックを開設したら10日以内にこの届け出を出さなければなりませんが、注意していただきたいのは、事前に保健所に足を運び相談することが必須な点です。

というのは届け出を提出してそのまま受理されることはないからです。近所に似た名称のクリニックがないかなど審査が行われ、指導が入るのです。名称だけならまだしも、院内のデザインやレイアウトについても指導が入った場合、せっかくでき上がったクリニックの内装工事をやり直すはめになります。

ですので、クリニックができてから提出はしますが、保健所への相談は内装工事が始まる前、設計図の相談を施工業者と行っているときには始めないと安心できません。

この「診療所開設届」は以下の書類と共に提出します。

  1. 管理者の臨床研修等修了登録証の写し、および免許証の写し
  2. 管理者の職歴書
  3. 診療に従事する医師、歯科医師の臨床研修等修了登録証の写しおよび免許証の写し
  4. 業務に従事する医療従事者の免許証の写し

※「診療所開設届」と1~4は正副用に2部必要です。

医療法人の場合は、診療所開設許可申請書(医療法人) 保健所への提出が最重要

医療法人として開院する場合には、「診療所開設許可申請書」を保健所に提出します。個人事業主の「診療所開設届」とは異なり、この申請書はクリニックの開設前に提出しなけれななりません。

  1. 申請手数料(1万9,000円)
  2. 定款又は寄付行為の写し(要「法人による原本証明」)
  3. 法人の登記事項証明書(発行後6カ月以内)
  4. 土地及び建物の登記事項証明書(発行後6カ月以内)
  5. 土地または建物の賃貸借契約書の写し
  6. 敷地の平面図/ビル内の診療所の場合は、利用する階全体の平面図
  7. 敷地周囲の見取図(道路と建物の位置関係が分かるもの)
  8. 建物の平面図(縮尺1/100以上、各部屋の用途を明示)
  9. X線診療室放射線防護図平面図及び立面図、縮尺1/50(歯科は1/50又は1/25)、壁および鉛の厚さの記載
  10. 案内図

※申請書と2~10は正副用で2部必要です。③④の登記事項証明は原本1部、写し1部でよい

許可書の交付が遅れるとクリニックの開院スケジュールが守れなくなることがあります。そのため、保健所への相談を早い段階で始めなければなりません。

クリニックの新規開設の流れとしては、以下のようになります。

  1. 保健所への事前相談
  2. 施設完成(新規法人の場合法人許可が必要)
  3. 許可申請
  4. 審査・実査
  5. 許可書交付
  6. 開設
  7. 開設届
  8. 社会保険
  9. 保険診療

許可申請から許可書交付まで開庁日で15日はかかると見ておきましょう。

入院施設を有する診療所の開業の場合、診療所使用許可申請書(有床)を保健所へ提出

入院施設を有する診療所、歯科診療所、または助産所の施設を使用する場合は、許可申請が必要になります。医師、歯科医師または助産師が開設する施設の場合には、開設届と同時に申請しなければなりません。

診療用エックス線装置備付届 ⇒ 保健所

定格出力の管電圧が10キロボルト以上かつその有するエネルギーが1メガ電子ボルト未満の診療用エックス線装置を備えた場合には、この届け出が必要です。また、装置の設置後10日以内に提出しなければなりません。

麻薬管理者免許申請書・麻薬施用者免許申請書 ⇒ 保健所

「麻薬施用者」とは、「都道府県知事の免許を受けて、疾病の治療の目的で、業務上麻薬を施用し、もしくは施用のために交付し、または麻薬を記載した処方せんを交付する者」と定義されます。「麻薬施用者」と認定されるために申請書を出します。麻薬診療施設に麻薬施用者が1人しかいない場合、麻薬管理者を置く必要はありませんが、麻薬施用者が麻薬管理者の業務を行わなければなりません。

「麻薬管理者」とは、「都道府県知事の免許を受けて、麻薬診療施設で施用され、または施用のため交付される麻薬を業務上管理する者」と定義されます。「麻薬管理者」と認定されるために申請書を出します。2人以上の麻薬施用者が従事する麻薬診療施設(従たる業務所として従事する場合も含む)である場合、麻薬管理者を置かなければなりません。この場合、麻薬施用者が麻薬管理者を兼ねてもかまいません。

結核などの医療機関指定申請書 ⇒ 保健所

「結核医療機関」(感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律・旧結核予防法)や「被爆者一般疾病医療機関」(被爆者援護法)など各種医療機関の指定を受けるためには、各指定医療機関申請書を保健所に提出しなければなりません。

保険医療機関指定申請書 ⇒ 厚生局

クリニック開院に当たって最重要の申請書の一つで、保険診療を行うために必須のものです。この申請が受理されないことには「保険医療機関」になれず、自由診療しか行えません。「診療所開設届」が受理されて「医療法」上は医療機関になったとしても保険診療が行えなければ開院したとはいえません。

クリニックの所在地を管轄する厚生局の事務所に「保険医療機関指定申請書」を提出しますが、注意していただきたいのは「締め切り」です。各地域の厚生局で微妙に異なりますが、保険医療機関としての指定は原則「毎月1日」1回となっています。

そのため、締め切りに間に合わないと保険医療機関になるのが1カ月後ろになってしまうのです。指定日の前月に、

  1. 申請
  2. 書類審査
  3. 地方社会保険医療協議会への諮問・答申

が行われ、その結果、翌月の1日に「保険医療機関指定」となります。1回しかないのは③の協議会が月一度しか行われないためです。1日以降の日付けであれば、申請時に希望の日付けを記入することで、その日を「指定日」とすることは可能です。ただし、あくまでも「1日以降の日付け」であって前倒しできるわけではありません。

つまり、クリニック開院に当たって最重要のこの申請書は月1回しかチャンスがないのです。申請が通らなければ開院スケジュールが狂い、クリニックの経営に大きな打撃となります。申請書の記入漏れ、添付書類に不備がないかを十分にチェックして申請に臨んでください。

申請書の提出に当たっては以下の①~⑦の添付書類が必要です。

「保険医療機関指定申請書」提出時の添付書類

  1. 病院にあっては使用許可証、診療所にあっては、使用許可証または許可書もしくは届書、国の開設する病院または診療所にあっては承認書または通知書、薬局にあっては許可証のそれぞれの写し
  2. 病院または診療所にあっては保険医(管理者を除く)、薬局にあっては保険薬剤師(管理薬剤師を除く)の氏名および保険医または保険薬剤師の登録の記号および番号並びに担当診療科名を記載した書類
  3. 上述2に掲げる者以外の医師、歯科医師および薬剤師のそれぞれの数を記載した書類
  4. 病院又は病床を有する診療所にあっては、看護師、准看護師および看護補助者のそれぞれの数を記載した書類
  5. その他指定の適格性等を確認するために必要な書類

(1)病院、診療所、薬局

ア.診療時間

注1)保険医療機関(保険薬局)の指定後に予定している診療日及び診療時間(開局日および開局時間)について、通常週(年末年始、祭日がない週)の状況が分かるように記載すること。

注2)本事項は、申請時は任意記載事項です。(記載がない場合は、指定後に厚生局事務所等から連絡して確認します)

(2)薬局

ア.法人登記簿謄本の写(法人の場合のみ)

イ.土地建物登記簿謄本又は賃貸借契約書の写し

ウ.周辺図

注1)近隣の医療機関の位置が分かるように記載すること。

エ.平面図

注1)敷地内にある全ての建物が分かるように記載すること。(薬局の置かれる建物は分かるようにしておくこと)

注2)敷地内の建物に医療機関が存在する場合(予定を含む)は、その旨を記載すること。

注3)薬局の出入口が公道又はこれに準ずる道路と面しているか確認できるよう記載すること。

オ.同一建物内のテナント名が分かる書類(雑居ビル等に薬局を開設する場合のみ)

6.保険薬局の新規指定及び指定更新に係る確認書類(薬局の場合のみ)

7. 在宅医療のみを実施する医療機関の指定に係る確認様式(在宅医療のみを実施する保険医療機関の場合のみ)

「添付書類」の引用元:『関東甲信越厚生局』「【添付書類等】保険医療機関・保険薬局指定申請書関係」

診療料の施設基準等に係る届出書 ⇒ 厚生局

診療行為の中には、保険医療機関が一定の人員や設備を満たす必要があり、その旨を地方厚生局に届け出て初めて点数を算定できるものがあります。この満たすべき人員や設備のことを「施設基準」といいます。

点数表とは別に厚生労働大臣告示が定められ、また細かい取り扱いが通知で示されています。施設基準の届出が必要なものは、点数表に「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして保険医療機

健康保険・厚生年金保険新規適用届 ⇒ 社会保険事務所

従業員を雇用して事業所が健康保険、厚生年金保険に適用されることになった場合、5日以内に事業主は「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出しなければなりません。健康保険、厚生年金の社会保険料は、労働者と使用者で保険料を折半します。

新規適用事業所現況書 ⇒ 社会保険事務所

新規適用事業所現況書は、開設する事業所が健康保険・厚生年金保険に加入する義務を負う「強制適用事業所」である場合には、上記の新規適用届と同時に社会保険事務所に提出しなければなりません。提出期限は開設後5日以内です。

強制適用事業所というのは、事業主・従業員とは無関係に健康保険・厚生年金保険への加入が法律で義務付けられる事業所のことです。具体的には、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所、または常時従業員を使用する国、地方公共団体または法人の事業所です。

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 ⇒ 社会保険事務所

従業員を採用し、新たに健康保険および厚生年金保険に加入すべき者が生じた場合には、5日以内に事業主は「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。

健康保険被扶養者(異動)届 ⇒ 社会保険事務所

クリニックで従業員を雇用すると必要になる場合があります。健康保険・厚生年金保険の被保険者になったクリニック従業員が自分の家族を「被扶養者」にするとき、あるいは被扶養者に異動があったときに「健康保険被扶養者(異動)届」を社会保険事務所に提出します。提出期限は事実発生から5日以内です。

労働保険 保険関係成立届 ⇒ 労働基準監督署

「労働保険」は、従業員を雇っていれば加入しなければいけない保険です。「労働保険」には「労災保険」と「雇用保険」があります。労働保険の適用事業となったときは、まず「労働保険 保険関係成立届」を労働基準監督書に提出します。保険関係が成立した日から10日以内に提出しなければなりません。

労災保険の金額は「全従業員の賃金総額 × 労災保険率 = 労災保険料」で計算します。危険な業種ほど「労災保険率」が高くなり、保険料も上がります。医療事業の場合は「3/1000」です。

労働保険概算・確定保険料申告書 ⇒ 労働基準監督署

労働保険の保険料は毎年前払いが基本です。毎年行う労働保険料の申告と納付のことを「労働保険の年度更新」といいます。前払いなので、申告では「概算」になります。前年度の賃金支払の実績を集計して申告します。これが「労働保険概算保険料申告書」です。納付の際には、実績データを基に「確定」した保険料を記入します。これが「労働保険確定保険料申告書」になります。

概算保険料については、保険年度の初日または保険関係が成立した日から50日以内。確定保険料については、保険年度の初日またはその保険関係が消滅した日から50日以内に提出します。

労災保険指定医療機関指定申請書 ⇒ 都道府県管轄労働局

「労災保険指定医療機関」※になるために提出します。

※「労災保険指定医療機関」とは、労災保険法の規定による療養の給付を行うものとして、「労災保険法」施行規則第11条第1項の規定により、都道府県労働局長が指定する病院または診療所のことです。

雇用保険適用事業所設置届・雇用保険被保険者資格取得届 ⇒ 公共職業安定所(ハローワーク)

クリニックで従業員を1人でも雇用した場合には雇用保険に加入し、保険料を納付しなければなりません。正社員を雇用した場合は加入必須。アルバイト、パート、派遣社員の場合には、「週の所定労働時間が20時間以上で、継続して31日以上雇用される見込みのある者」なら雇用保険に加入する義務があります。また、この従業員には下記の「青色事業専従者」も含みます。

雇用保険は労働者の失業など雇用喪失に備えるもので、実際に失業した際には「失業等給付(いわゆる失業保険)」が受けられます。雇用保険の保険料は労働者と事業主で互いに出し合って支払います。労働者は賃金の「3/1000」、事業主は「6/1000」を支出します。

上記の条件に当てはまる従業員を雇用し、雇用保険の適用事業となった場合は、「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を所轄の公共職業安定所に提出します。

「雇用保険適用事業所設置届」の提出期限は従業員を雇用した日の翌日から10日以内。「雇用保険被保険者資格取得届」はその人を雇用した月の翌月10日までに提出しなければなりません。

個人事業開廃業等届出書(個人事業主) ⇒ 税務署

新たに事業を開始したときに提出する書類です。これは個人事業主として開業しましたと税務署に通知する役割をする大事なものです。この届け出を行っていないと「青色申告」ができません。

青色申告には、

  1. 特別控除が最高「最高65万円」※
  2. 赤字の繰り越しと黒字の繰り戻しができる

※令和2年度から55万円に引き下げられましたが、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うと、引き続き65万円の青色申告特別控除が受けられます。

参照:『国税庁』「令和2年分の所得税確定申告から65万円の青色申告特別控除の適用案件が変わります」

などのメリットがあります。また、配偶者、親族に支払う給与を経費にしたい場合には、以下でご紹介する「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出します。「個人事業開廃業等届出書」は、開業後1カ月以内にクリニックがある地域を所管する税務署に提出しければなりません。

源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書 ⇒ 税務署

従業員に支払う給与などで所得税をクリニックが源泉徴収した場合には、徴収した日の翌月の10日までに収めなければなりません。しかし、人出が足りないなどでこれが行えない場合には「年2回の納付で勘弁してください」と、特例を承認してもらうためにこの申請書兼届け出を出さなければなりません。

この特例が認められるのは、給与の支給い対象が常時10人未満である事業者です。これが承認されると、源泉徴収の所得税および復興特別税は、

  1. 7月10日……1~6月支払いの所得の源泉徴収ぶん
  2. 翌年1月20日……7~12月支払いの所得の源泉徴収ぶん

の2回の納付でまとめて行えます。毎月行って12回も作業するより楽ですね。クリニックを開院すると忙しくて手が回らないでしょうから、この申請書兼届け出は出しておくのが無難です。原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。そのため、人を雇うことが決まったら給与の支払いが始まる前の月には提出しておきましょう。

青色申告承認申請書 ⇒ 税務署

「青色申告」を行えるように提出する申請書です。白色申告から切り替える場合は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに提出しなければなりません。新たに起業する場合は、事業開始日から2カ月以内に提出します。

青色事業専従者給与に関する届出書 ⇒ 税務署

夫、妻や親族に給与を支払い、これを経費に取り込みたい場合には「青色事業専従者給与に関する届出書」を出しておかなければなりません。ただし、個人事業主の場合には基礎控除48万円※がなくなります。また、給与を支払ってもらった配偶者や親族は自身で所得税、住民税を支払わなければなりません。

「概算経費」を使って税金を安くしようという場合には、これを行っているとかえって全体としてはお金が出ていく方が多かったというケースがあります。ですので、配偶者に給与を支払いたい場合には、どちらが得になるのかをあらかじめ試算し、確認することをおすすめします。

※令和2年(2020年)度の所得税から、これまでの「38万円」から「48万円」に改正されました。住民税の基礎控除額も43万円に10万円上がっています(合計所得金額が2,400万円以下の場合)。

<<ここに概算経費の記事へのリンクを入れてください>>

棚卸(たなおろし)資産の評価方法の届出書 ⇒ 税務署

クリニックの場合、薬品やガーゼなどの診療材料、医療消耗備品などが「棚卸資産」になります。簡単にいえば消耗品の「在庫」です。確定申告を行うためには、この資産を評価していくら分あるかを計算しなくてはいけません。

棚卸資産の評価には「原価法」「低価法」「時価法」の3つがありますが、どの評価法を用いて行うのかを選定して税務署に届け出ておきます。そのための書類です。届け出を行わなかった場合には「最終仕入原価法」で資産評価を行うことになります。棚卸資産の評価方法の届出書」は、「事業開始日の属する事業年度」の確定申告書の提出期限までに出します。

減価償却資産の償却方法の届出書 ⇒ 税務署

減価償却資産の償却方法を選定して届け出る手続です。医療機器やパソコンなどの資産は減価償却の対象です。取得金額を少しずつ経費に取り込むわけです。この減価償却の方法には「定額法」と「定率法」があります。定額法はその名のとおり、毎年決まった金額ずつ、定率法では毎年決まった割合ずつ償却します。定額法を用いて減価償却を行い、確定申告するのであれば、税務署にこの届け出を、「事業開始日の属する事業年度」の確定申告書の提出期限までに出します。

給与支払事務所等の開設届書 ⇒ 税務署

従業員を雇用して給与を支払うためには、事前に税務署に「給与支払事務所等の開設届書」を提出しておかなければなりません。この従業員には上記の「青色事業専従者」も含みます。ただし、個人事業主の場合には「個人事業開廃業等届出書」に従業員について記載する欄がありますので、そこに書けばこれを改めて提出する必要はありません。求められた場合には提出しなければなりません。開設の事実があった日から1か月以内に出します。

消費税の課税事業者選択届出書 ⇒ 税務署

「消費税の課税事業者」を選択するために提出する届け出です。開業から2年は消費税の納付義務がありません。というのは、消費税は2年の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたら消費税課税業者になります。しかし、開業すぐは消費税非課税事業者です。

なぜわざわざ消費税の課税事業者になっておくのでしょうか? それはクリニック開業1年目は大量に医療機器を購入するなど出費も多いので、支払う消費税も巨額になるからです。ですので、消費税を受け取るよりも支払う方が多いはずです。消費税は制度上、受け取った方が多い者が「受け取り - 支払い」の差額分を納付することになっています。支払い額の方が多い場合には還付されます。そこで、開業1年目は支払い額の方が多いことを見越して、初年度から「消費税の課税事業者」になっておくのです。すると、2年目には1年目の還付が受けられるというわけです。ただし、いったん消費税の課税事業者になると2年間(調整対象固定資産が含まれる場合は3年間)は免税事業者に戻れません。消費税の支払い額がいくらになるのかなど、熟考の上、選択してください。

「消費税の課税事業者選択届出書」は適用を受けようとする課税期間の初日の前日までが提出期限です。

各種医療機関指定申請書 ⇒ 区市町村

「生活保護指定医療機関申請」「更生医療指定医療機関申請」など、その地域での指定医療機関になるための申請書があります。

医師会の入会申込書 ⇒ 医師会

医師会には「日本医師会」「都道府県医師会」「郡市区等医師会」の3種があって、それぞれ別の組織です。入るのであれば「郡市区等医師会」から始めなければなりません。定款で「日本医師会員」は「都道府県医師会」でなければならず、「都道府県医師会員」は「郡市区等医師会員」でなければならないからです。そのため、その地域の「郡市区等医師会」には入会するための窓口があります。

いかがだったでしょうか。クリニック開院に関する書類の多さにいささかうんざりされたのではないでしょうか。まずはクリニック開院までのスケジュールを引き、その上に最重要の申請書・届け出をプロットし、その後で税務署、保険関係などを置き、書類をそろえる段取りを整えましょう。順番にひとつずつ確実に提出していってください。

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