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医院経営に役立つコロナ補助金とその申請方法

医院経営に役立つコロナ補助金とその申請方法

現在、一日あたりの新型コロナウイルス新規感染者数が減少傾向にあるものの、依然として高水準にあります。今後も引き続き医療機関への緊急的な助成が無ければ、新型コロナウイルス感染症への適切な対応は不可能となり、地域での医療崩壊が強く危惧されている状況です。政府では2020年2月以降、国内経済の維持に向けた様々な経済対策を実施し、今回のコロナ対応に関する経済対策は2020年度、2回の補正予算により実施されていますが、今月末を目処に計画されていた予算の大半は終了することになります。そこで注目されているのが、新型コロナウイルス感染防止対策を目的とした補助金と無利子・無担保の融資制度でございます。

本編については、発表されている内容の紹介と実務的な運用について解説していきます。

コロナ補助金の紹介

まず、新型コロナウイルス感染防止対策を目的とした補助金について、正式には厚生労働省の「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」という名称となります。補助の対象機関は、新型コロナ感染症の院内等での感染拡大を防ぐための取り組みを行う病院・診療所・薬局・訪問看護ステーション・助産所となります。

なお、対象医療機関は、病院・医科診療所及び歯科診療所は保険医療機関、薬局は保険薬局、訪問看護ステーションは指定訪問看護事業者に限ります。

対象期限は今年4月1日から来年3月31日までにかかる費用が対象とりますが、申請窓口の都道府県(国保連等)により提出期限が設定されているので注意が必要です。

申請受付期間は各都道府県により異なりますが、富山県が10月末日、東京都が11月末日、神奈川県が12月28日等、設定されているので、詳しくは各都道府県問合せ先ホームページに確認した上で早期に申請することをおすすめします。

医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」各都道府県へのリンク

補助金の申込方法は、感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する見込みの費用について概算で申込申請し、それに対して各都道府県が概算払いで支援金を交付します。その支援金により精算した領収書等は都道府県への「実績報告」で必要な証拠書類となります。

概算費用で給付申請する為、実績報告時に削減されることも考慮し、上限額よりも多めに申請することをおすすめします。
なお、IT補助金等、他の補助金と比較すると、その後の手続きも精算した費用に対する領収証を実績報告として提出するだけな為、その他の補助金と比べると非常に手続きが簡単です。

補助上限額

業態上限額
病院(医科・歯科)
200万円+5万円×病床数
有床診療所(医科・歯科)
200万円
無床診療所(医科・歯科)
100万円
薬局・訪問看護ステーション・助産所
70万円

補助対象経費

具体的な補助の対象経費は、感染防止対策に要する費用であり、経費の例として以下のものが挙げられます。※一部の例であり、これに限られるものではありません。

  1. 共通して触れる部分の定期的・頻回な清拭・消毒等の環境整備として、清掃委託等
  2. 患者との非接触化を支援する情報通信機器を用いた予約システム・オンライン診療・自動精算機等※患者との非接触を保つ動線確保を目的とした電子カルテ導入も対象となります
  3. 発熱等の症状を有する新型コロナ感染症疑いの患者とそれ以外の患者が混在しないよう、動線の確保やレイアウト変更するアクリルパネル・ベルトパーテーション・1人掛けチェア(スタッキングチェア)等の備品類
  4. 感染防止のための個人防護具、清掃委託、検査委託、寝具リース、感染性廃棄物処理等

申請書・事業計画書の入手方法、提出方法

申請時に必要な書類は、申請書並びに事業計画書になります。以下の厚生労働省ホームページ、各都道府県ホームページ等において、ダウンロードすることが出来ます。

厚生労働省「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」について

申請書及び事業計画書の提出方法は、原則として、各都道府県の国保連の「オンライン請求システム」(毎月の診療報酬請求に使用しているシステム)により提出します。

オンライン請求システム未導入の医療機関等は、原則として専用の「WEB申請受付システム」からの申請とし、ネット環境に対応していない場合、電子媒体(CD等)により国保連に郵送します。※電子媒体による提出が困難な場合、紙媒体を郵送します。

一部の都道府県では、補助金の申請・交付窓口が国保連以外となる場合があり、詳しくは各都道府県のホームページ等をご覧下さい。

提出にあたっての留意事項

提出にあたっての留意事項(提出先が国保連の場合)は、申請方法に関わらず、診療報酬提出時期と重ならないようにするため、申請受付期間は、毎月15日から月末迄の間となります。電子媒体や紙で提出する場合、原則「郵送」とし、通常の診療報酬請求には同封せず、単独で送付して下さい。その際、封筒の表面に「緊急包括支援交付金申請書 在中」と朱書きしましょう。

電子媒体(CD等)による申請の場合、診療報酬請求と混同しない様、申請書を同じ媒体に格納しないようご注意ください。また、郵送する際、媒体表面に分かり易く申請の概要を油性マジック等で明記しましょう。

申請の概要として、以下の項目を明記

  • タイトルに「医療・感染拡大防止等支援事業」と記載
  • 「医療機関等コード」と「医療機関等名」を記載

補助金受領までの流れ

  1. 厚生労働省HP・各都道府県リンク先へアクセスし、提出期限確認。
  2. 感染拡大防止の対象となるか確認し、取扱業者から物品の見積書を作成依頼
  3. 申請書・事業計画書作成(申請は1回のみ。所定の様式により作成)
  4. 各都道府県の申請窓口へ提出。
    ※国民健康保険団体連合会(以下「国保連」)に原則としてオンラインで提出
  5. 都道府県が申請内容を確認後、補助金が交付
    ※国保連から補助金が振込。
  6. 取扱業者に物品を発注・精算・納品
  7. 事後に実績報告実施

厚生労働省「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」パンフレット

持続化給付金の紹介

現在も引き続き新型コロナウイルス感染を危惧して、小児・高齢者世帯を中心に受診抑制される傾向があり、前年比較すると医業収入が減少している医療機関が大多数を占めていますが、特に前年同月比50%以上減少している場合、「持続化給付金」の対象となります。

本件給付金は事業全般に使用出来る給付金であり、申請期限は2021年1月15日までとなっているいため、対象医療機関は早めに申請することをお勧めします。なお、給付金額は法人が200万円、個人事業者が100万円の上限があります。

持続化給付金ホームページ

無利子・無担保融資の紹介

次に、新型コロナウイルス対策として無利子・無担保融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)」があります。医療機関は典型的な労働集約型産業であり、経費に占める固定費の割合が大きく、それに対する支援策も講じられている。医療機関向けの融資では、独立行政法人福祉医療機構が行う「医療貸付事業」があり、当初5年間は無利子で、無床診療所の融資枠は無担保で最大4,000万円となっています。

独立行政法人福祉医療機構:医療貸付事業」概要

この他、政府が債務保証することで融資を受けやすくする「セーフティネット保証」でも特例措置が講じられています。中小企業庁を通して全国の信用保証協会が取扱していますが、セーフティネット保証4号では売上高が前年同月比20%以上減少した事業者に対して、一般枠とは別枠で最大2.8億円の借入債務を100%、同5号(売上高前年同月比5%以上減少)では債務の80%を保証します。
無担保保証:8,000万円以内、無担保無保証人保証:2,000万円以内

上記に加え、「危機関連保証」として、売上高が前年同月比15%以上減少した事業者に対して、セーフティネット保証とは別枠で最大2.8億円を保証します。しかし、上記制度を利用するには事前審査があるため、各都道府県の取扱金融機関や信用保証協会に確認する必要があります。

セーフティネット保証または危機関連保証を利用した場合、各都道府県の融資制度の基準を満たせば、保証料・利子の減免を受けることが出来ます。売上高が前年同月比5%以上減少の場合(セーフティネット5号)、保証料を半額に、15%以上減少(セーフティネット4号)の場合、保証料・利子ともにゼロとなります。

中小企業庁セーフティネット保証制度

新型コロナウイルス感染症特別貸付利用ガイド(開設動画)

無利子・無担保融資制度一覧


融資条件メニュー概要融資窓口
前年同月比、売上高5%以上、または収入5%以上減少医業貸付事業

・借り入れ当初5年間、1億円迄、無利子
・4000万円迄、無担保

福祉医療機構
前年同月比、売上高20%以上減少セーフティネット4号・借入債務100%を信用保証協会が保証
・最大2.8億円借入
・利子・保証料ともにゼロ
金融機関
各信用保証協会
前年同月比、売上高15%以上減少機器関連保証・借入債務100%を信用保証協会が保証
・最大2.8億円借入(一般とは別枠)
・利子・保証料ともにゼロ
金融機関
各信用保証協会
前年同月比売上高5%以上減少セーフティネット5号・借入債務80%を信用保証協会が保証
・保証料1/2負担
金融機関
各信用保証協会

その他、銀行系リース会社でも専門の投資ファンドを設立することにより、病院経営をバックアップしています。このように行政や民間の支援もあり、医療機関の倒産件数は2020年上半期では12件となっており、相次ぐ倒産には至っておらず、新型コロナウイルス関連の倒産も確認されていません。(帝国データバンク調査によると)このような状況について、「医療機関は公共性が高いことから金融機関や行政の支援体制が整備されており、従前から倒産に至るケースは少ない」との見方を示す一方、下半期の倒産については「一般企業の倒産増加率よりも緩やかな傾向であるが、増加する可能性は高い」と言われています。実際に、下半期に入った7/27、ついに医療機関として全国初となる新型コロナウイルス関連倒産が確認されました。1965年開業された岡山県の診療所で、外来患者数の減少により4月以降の医業収入が約20%ダウンしたことにより、経営に行き詰ったためです。

今後、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンや治療薬が開発される迄、受診抑制傾向は継続するものと思われ、感染症対策の実施と並行して当面の間、余裕を持った資金計画を立てることが医業経営にとって非常に重要になってきます。ここで、紹介した補助金や持続化給付金、無利子・無担保融資は医業経営の安定化を考える上で参考にして頂き、必要に応じて早目に対応することが重要です。上記以外に、税や社会保険料の支払猶予・支払期限延長等、措置を受けられるケースがあるので、各所から発信される情報を早期入手し、この未曾有の危機を乗り切るために、本件一助として頂けたら幸いです。