導入が決まったリフィル処方箋はまだまだ課題が山積み?
2021年12月22日、2022年度診療報酬本体の改訂率をプラス0.43パーセントとすることが発表されました。このうち、医科の改訂率は+0.26パーセントで調剤は+0.08パーセント。また、リフィル処方箋の導入・活用促進のために0.10%の医療費効率化費用も盛り込まれることが発表されており、実際に2022年4月からリフィル処方箋が導入されます。では、これによってどんな効果が見込めるのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
リフィル処方箋とは?
リフィル処方箋の「リフィル」とは「補充」のこと。では、「リフィル処方箋」とはなにかというと、1枚の処方箋を繰り返し使って薬を補充できる処方箋です。たとえば、90日分の薬を調剤するとしたら、30日分の処方箋に「利用可能回数:3回」と記載して発行すればいいというわけです。
リフィル処方箋の認知度は?
導入前のシステムということもあり、リフィル処方箋の認知度は医療従事者の間でもとても低いのが現状です。日本最大級の医療従事者専用サイト『m3.com』が2021年12月22日~27日におこなった調査の結果、リフィル処方箋について「仕組みまで詳しく知っている」と回答した医師はたったの7.2%。「言葉自体知らない」と答えた医師は43.4%にも上りました。また、「聞いたことはある」は24.3%、「なんとなく知っている」は25.2%とそれぞれ20%以上で、ほとんどの医師がよくはわかっていないことが判明しています。
そのため、「リフィル処方箋導入についてどう思いますか?」の質問には59.5%の医師が「わからない」と回答。20.4%の医師は「反対」と答えています。
リフィル処方箋導入のメリットは?
患者側のメリット
なぜ3回発行していたものを1回に減らそうとするのかというと、そのぶん患者の通院回数を減らすことができるためです。薬を処方してもらうためだけの通院は患者にとって大きな負担軽減ですし、そのぶん医療費もかかりますが、これを改善することができます。
また、リフィル処方箋導入前は、処方箋をもらうためだけの通院の負担を減らしてあげようと病院側もまとめて薬を処方しがちでしたが、このことが原因で「残薬」に悩まされる患者も少なくありませんでした。リフィル処方箋が浸透すれば、この残薬問題も解消が期待できます。
医療機関側のメリット
リフィル処方箋が導入されることは、病院側の作業負担軽減にもつながります。
リフィル処方箋導入のデメリットは?
医療機関側のデメリット
リフィル処方箋導入のデメリットとしてまず挙げられるのは、医療機関の収入低下です。患者にとってはメリットとなりうることですが、医療機関側にとっては、マイナスになった分を何で補てんするのかは大きな課題となるでしょう。
さらに、従来の処方箋は医師と薬剤師によってダブルチェックがおこなわれていましたが、リフィル処方箋をチェックするのは薬剤師のみになるため、これまで以上に医療事故にも気を付ける必要があります。
患者側のデメリット
診療の間隔が空くことから、些細な変化を見落としづらくなる可能性が高まります。患者自身はいつもと何ら変わらないと思っていても、医者には病気の兆候が見受けられる場合もあるものなので注意が必要です。
国も対応策を考えるべきデメリット(課題)
また、医薬品の転売に悪用されることも考えられるので、リスクを回避するための対策を練っていくことが求められるでしょう。リフィル処方箋導入に対する医療従事者の意見は?
メリット、デメリットを踏まえたうえで、続いてはリフィル処方箋導入に対する医療従事者の見解をみていきましょう。前述の『m3.com』の調査に回答した医師らに自由意見を募った結果、上がってきたのはほとんどがネガティブな声です。
「薬局が儲かって医療機関は閉塞すると思う」「内科の開業医は大幅な収入減収になるため、従業員の人数や給与を減らさなければならなくなることが必至」「病院にとっては大幅な収入減となるのでどんな仕組みで折り合いをつけるのか気がかり」(以上、開業医)「経営も大変になるだろうが患者の身体状態も気になる」「診察を受けていない期間になにかあっても医師の責任にしないでほしい」(以上、勤務医)などが主な意見です。
反対に賛成のコメントを残しているのは薬剤師。「処方元の病院と密に連携できるし、医師にとっては診療の時間削減になると思う」「本来違法であるはずの薬だけ受診が既に横行しているから問題ないと思う」などの声が上がっています。
リフィル処方箋に関しての今後の課題は?
リフィル処方箋を定着させるためには、医療従事者から上がっている一つひとつの声に対応していくことが大切だと考えられます。医療機関側の経営を圧迫するほどの収入源になったり、患者が健康状態を維持できなくなったりしては本末転倒。これらの問題に国がどう対処していくかを見守りながらも、クリニックごとに対策を考えていくことも必要になりそうですね。