診療報酬改定にも自動で対応。『ORCA』の優れている点や有用な機能は?
クリニックに欠かせないのがレセプトコンピュータ(以下、レセコン)です。「診療報酬明細書」を管理・作成するツールで、従来は専門的な知識が必要だった医事会計を、スピーディーかつスムーズに行えるようにします。レセコンはさまざまなメーカーが手掛けていますが、中でも高いシェアを誇るのが『日医標準レセプトソフト」、通称『ORCA』(オルカ)』です。『ORCA』の特徴や特筆すべき有用な機能を、『ORCA』ベンダーである『株式会社三栄シスポ』に取材しました。
『ORCA』は汎用性が高く導入しやすいレセコン
――『ORCA』はどのような特徴を持つレセコンなのでしょうか?
特に評価されているのが汎用性の高さです。レセコンを選ぶ際、先生は自身が使っている電子カルテを基準に決めるケースが多いと思います。例えば、A社の電子カルテを使っている、また使いたいと思っている場合は、A社の電子カルテと連動するレセコンを選ぶといった形で、「電子カルテありき」で選ぶことが多いでしょう。そのため、「この電子カルテにはこのレセコン」といった形で、セットのようになっていました。
しかし、『ORCA』は日本医師会が提供しているため、公開されているAPI※を利用することで、多くの電子カルテで連携可能です。承継や院内のリフレッシュのために電子カルテの変更を検討されるクリニックも多いですが、連携相手が限定されるレセコンを使っている場合は選択肢が限られます。しかし、『ORCA』なら幅広い種類の電子カルテから選べます。
↑『ORCA』の業務画面
↑患者さんの登録画面です。
――高い汎用性が特徴なのですね。
『ORCA』は、機器を連携させるためのモジュールを一般公開しているので、連携相手のツールが対応、またはそのツールを提供するメーカーが対応可能であれば、基本的にどんなツールとも連携できます。電子カルテだけでなく、予約システムなどそのほかの関連ツールにおいても幅広い選択が可能です。「DIY」のような感覚で、院内システムを自分なりにカスタマイズできるのも『ORCA』の特徴だといえます。
※API……「Application Programming Interface」の略称。プログラムとプログラムの橋渡しをするインターフェース
『ORCA』には分離型ならではのメリットもある
――『ORCA』を選ぶ場合は必然的に「分離型」という選択になりますが、デメリットはないのでしょうか?
「レセコン、電子カルテは一体型ですか? 分離型ですか?」という質問は実際に、レセコンを提案する際に多く受ける質問です。というのも、一体型はデータベースなどを一つに集約できる一方で、分離型はマスターなどを別々に用意しないといけないとお考えだからです。しかし、現状では一体型と分離型でほとんど差がありません。
特に、『ORCA』は電子カルテと細かいところまで連携が可能になっているので、分離型に対して不安になることは全くないと考えています。中には、『ORCA』との連携を考えた機能・仕組みを充実させている電子カルテもあります。電子カルテもレセコンも、オンプレ型からクラウド型に変わっていく中で、業界全体のゲームチェンジが行われています。
――『ORCA』と電子カルテ連携の「好例」を教えてください。
例えば、電子カルテ『CLIUS(クリアス)』です。外来であれば予防接種や各種健診など保険診療以外の自費項目、在宅診療であれば使われる特定器材物品登録などの点数マスターを『ORCA』で作れば、自動的に『CLIUS』とも連携し、電子カルテ上でもマスターを入力できる仕組みです。片方に入力・設定するだけで、連携先にも情報が登録されるなど、便利になってます。また、患者登録を『CLIUS』と同様のインターフェースで利用できる機能を追加し、連携を一層強化しています。
『ORCA』はWeb利用できる次世代フェーズに突入
――クラウドであることのメリットはありますか?
『ORCA』は早い段階でクラウド化に対応するなど、常に進化をしています。次世代フェーズとして新たに『WebORCA』と名称を変え、「Google Chromeで動く」といった特徴を有するようになりました。
従来は、レセコン専用のパソコンを用意する必要がありましたが、Google Chromeで動くということは、クリニックに置いてある一般的なWindowsマシンでも、Google Chromeが入っていれば、『ORCA』が使用可能になるということです。
Google Chromeで使用可能であるため、同じようにGoogle Chromeが使えるモバイル機器でも利用できるようになるでしょう。訪問診療の需要が伸びている昨今、モバイルでの利用を求める声も増えています。課題も多く、まだまだ未知数ではあるものの、これから先の展開に期待したいところです。
――オンライン資格確認には対応しているのでしょうか?
もちろん、オンライン請求、オンライン資格確認も対応が済んでいます。電子カルテ、レセコンメーカーの中にはオンライン対応に関してはまだこれからというケースもありますが、『ORCA』は今後さらに進むとされるオンライン返戻、オンライン資格確認にもスムーズに対応できます。
充実した集計・検索機能で診療やクリニック経営をサポート
――その他、特筆すべき特徴があれば教えてください。
クリニックに喜ばれている機能としては、「充実した集計機能」が挙げられます。基本台帳から保険診療の平均点を出したり、処方せんの発行数など、診療行為ごとに数量を割り出すなど、院長先生が気になる情報が確認できます。
また、個人別の集計機能である、照会から行った診療行為のデータからさまざまな検索ができます。例えば、40歳以上かつ内視鏡検査をしている方などの「AND検索」や病名入力の漏れを確認するための「NOT検索」ができるなど、検索機能が充実しています。クリニックを経営する上で、さまざまな情報が必要となりますが、『ORCA』で診療方針を見直す指針となる数字をまとめるなどの使い方ができます。
↑『ORCA』の照会(検索)画面
↑検索結果はこのように表示されます
――『ORCA』ならではの使い勝手の良さなのですね。
『ORCA』はあくまで計算機なので、見やすさなどインタフェース面では他に劣る部分があるかもしれません。インタフェースにはこだわりが強い先生も多いので、そこはデメリットかもしれませんね。とはいえ、既存のレセコンとは違い、「従業員割引の比率を仕込むフィールド」が用意されているなど、他にない機能も有しています。
医療報酬の改定にも自動アップデートで対応
――2021年12月には、2022年度の診療報酬改定の内容が発表されました。こうした診療報酬改定におけるアップデートはどのようにして行われますか?
『ORCA』はクラウド型なので、診療報酬の改定があった場合は、厚生労働省からの正式な通達が行われた後に、オンラインで最新のデータにアップデートされます。また、新薬についての情報も毎月更新されるので最新の状態で利用可能です。そのため、極端な話、医療事務の方がそこまで専門の知識がなくても安心して使えるのも『ORCA』のメリットです。
ただし、地方公費については、その地域によって異なるため、全てを自動で行うことができません。我々ベンダーでどのように改定されたのか、更新方法などを取りまとめてご案内いたしますので、それに従って更新を行っていただきます。
――新型コロナに関する検査・診療への対応はどのようになっていますか?
新型コロナの検査・診療については、負担者番号を登録するだけで、該当する公費の種類が出てくる形で、必要な公費情報登録をすれば、あとの流れは他の保険診療と操作は変わらず会計できます。何か特別な点数改定があっても、クラウドですので自動で更新され、診療の際に特別なことをする必要はありません。もし何か変更があった場合も、ご案内をお送りしますので、安心してお使いいただけます。
また、新型コロナ対応として、抗体検査やPCR検査といった、「自由診療」のマスターを自由に作れるのも『ORCA』の特徴です。例えばインフルエンザの予防接種、保険点数の対象ではない診断書なども、クリニック側で自由に項目や分類を設定できます。自由診療項目の多い皮膚科などのクリニックでは重宝されています。
『ORCA』導入の際にはベンダーのサポートを重視すべき
――『ORCA』を導入する際の注意点があれば教えてください。
『ORCA』はインフラの設備、導入のしやすさ、コストパフォーマンスにおいて分かりやすい立て付けになっており、クリニックから高く評価されています。しかし、先述のように『ORCA』はインターフェース面で難しい点があるため、どれだけサポートが受けられるかが重要になります。例えば、弊社の場合は電話、メールのほか、いつでも確認できるFAQサイトを設けています。もし『ORCA』を導入したい場合は、ベンダーがどのようなサポートを行っているのかに注目するとよいでしょう。
――ありがとうございました。
『ORCA』は、使い勝手の良さとどんなツールでも連携できる汎用性の高さが魅力とのこと。また、次世代の『WebORCA』は「Google Chromeで動く」とのことで、さらに使い勝手は向上するでしょう。レセコンの導入を検討している医師は、ぜひ『ORCA』も候補に入れてみてください。