西国分寺駅ホームに、対面診療とオンライン診療の両方を受けられるクリニックが2022年4月オープン
2022年4月、JR西国分寺駅 中央線上りホーム上に『あおいクリニック-駅ホーム西国分寺駅-』をオープンすることを発表したJR東日本。駅のホームに開業した理由とは? 西国分寺駅を選んだ理由とは? 同社担当者に話を伺いました。
スマート健康ステーション
駅のホーム上にクリニックをオープンする理由は?
まず気になるのが、「なぜ駅のホーム上にクリニックをオープンするのか」ということです。きっかけは、同社がかねてより取り組んでいた、「交通の拠点」としての役割を担っている駅に「暮らしのプラットフォーム」という新たな役割を持たせる『Beyond Stations構想』の一環として、人間にとって重要なサービスのひとつであるヘルスケア分野の取り組みを強化したことにあります。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、わたしたちの生活スタイルや働き方が大きく変わっていくなか、感染不安から受診を控える人も出てきて、オンライン診療のニーズが増したことで、新たな医療の在り方を模索しはじめた同社。「対面診療とオンライン診療の掛け合わせ」「複数の診療科の連携」「より高度な医療が必要な場合を鑑みての病診連携」などを実現するための『スマート健康ステーション』の一端を担うものとして、クリニックオープンに先駆けて、2021年2月に、西国分寺駅 中央線下りホーム上に『セルフケア薬局』をオープンしていましたが、クリニックがオープンすることで、さらに一歩進んだ医療サービスを提供できるようになります。
ちなみに、『セルフケア薬局』とは、育児や仕事などに忙しくなかなか受診できない人を対象とした、処方箋がなくても病院の薬を購入できる薬局で、西国分寺駅ホーム以外にも全国に店舗を拡大中。「症状のヒアリングから薬の相談まで約10分」「10錠200円~と価格帯が手ごろ」「薬剤師が相談に乗ってくれる」と安心して利用できる条件がそろっています。
2021年2月スタートの西国分寺駅 セルフケア薬局
西国分寺駅 駅ホーム上クリニックの俯瞰図
新しい試みの場に西国分寺駅を選んだ3つの理由は「セルフケア薬局」「利用者多い」「基幹病院」
初の試みの場として西国分寺駅を選んだ理由は大きく3つあります。ひとつは、前述の通り、『セルフケア薬局』が既に存在していたこと。残り2つは「乗り継ぎ利用者が多いこと」と「基幹病院へのアクセスが良好なこと」です。
詳しくみていきましょう。
乗り継ぎ時の利用や緊急時の30分以内の基幹病院への搬送も想定
クリニックの特徴を患者目線で見ると、大きく分けて2つ挙げられます。
まず、駅のホームという立地上、出勤前後などに気軽に利用できます。診療時間は、平日は8:00~12:00、13:00~21:00、土日・祝日は9:00~13:00、14:00~18:00と、働く人の利用を考えて設定されています。また、中央線と武蔵野線が交差している西国分寺駅は、乗り換えで利用する人も多いうえ、診察の結果、緊急処置が必要なことがわかった場合など、電車を利用して30分以内に、高度な医療を提供している基幹病院に到着できます。
クリニック内にオンライン診療ブースを設置。対面診療もオンライン診療も利用できる
もうひとつは、クリニック内に対面で受診できる内科の診療室および検査室の他に、オンライン診療ブースが設けられていること。オンライン診療ブースでは、皮膚科、耳鼻科、婦人科関連の疾患などを診てもらうことができますが、ブース内に皮膚観察用カメラなども設置されているため、非対面でありながら精度の高い診療をおこなってもらえます。
ホーム上にクリニックを開業するにあたっての課題は?
上図の通り、対面の診察室、検査室、オンライン診療ブースと、院内には複数の部屋とブースが並んでいますが、駅のホーム上ということでスペースに制限があることは大きな課題でした。そのため、限られたスペースをうまく活用できるようレイアウトを工夫。また、電車の走行音が診察の邪魔にならないよう、診察室の壁を厚くしたり、必要に応じてサウンドマスキングによる対応といった配慮も重ねています。
内科の診療を担当するのは駅ナカ開業実績のある医療法人
対面診療を担当するのは、クリニックの名称にも採用されている『あおいクリニック』。同クリニックを運営する『医療法人社団創青会』が、平成22年に代々木上原に『あおい内科』を開院して以降、働く人たちに対してどのように医療を届けるかの課題に向き合い続け、東急大井町線上野毛町駅に『あおい皮膚科-駅ナカ上野毛-』を開業している実績もあったことから、今回、JR東日本グループとタッグを組むことになりました。
オンライン診療には、西国分寺駅周辺のクリニックも参加予定
オンライン診療には、西国分寺駅周辺の既存クリニックの医師も参加予定。これによって地域医療との連携を図れるだけでなく、現在、育児休暇中の医師も診療に参加できることから、医師の活躍の場創出にもつながっています。オンライン診療に関しては、令和4年度の診療報酬改定によって、医師が待機する場所が医療機関内に制限されなくなったため、さまざまな働き方が想定されます。
育児中の医師もオンライン診療で参加予定
『スマート健康ステーション』の拡大で都心と地方の医療格差の課題に取り組む
JR東日本の今後の構想は、同社の交通ネットワークを組み合わせ、都心および日本各地にも『あおいクリニック-駅ホーム西国分寺駅-』に続く駅ナカクリニックを展開すること。また、その際には各地の医療法人との連携も視野に入れながら、都心と地方の医療格差の課題に取り組んでいくとのことです。これから開業したいと考えているドクターや、既に開業済のドクターは、今後タッグを組める可能性があります。新たな展開にも注目しつつ、ぜひチェックし続けてみてくださいね。
今後は都心と日本各地にホーム上クリニックを展開予定
写真提供:医療法人社団創青会
写真提供:JR東日本