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 24年間ホリスティック医学を実践する『赤坂溜池クリニック』降矢英成医師だからわかる、現代人が医療に求めているものとは?

 24年間ホリスティック医学を実践する『赤坂溜池クリニック』降矢英成医師だからわかる、現代人が医療に求めているものとは?

「真の健康」は心や魂の健康なくして成り立たず! 24年間ホリスティック医学を実践する『赤坂溜池クリニック』降矢英成医師だからわかる、現代人が医療に求めているものとは?

「健康寿命」ときくと、病気や不調のない健康な「肉体」をイメージしがちですが、“真の健康”は心の健康無くして成り立つものではありません。もちろん、内科や外科での診療において、患者の身体の状態に注目するのは当たり前。症状改善のために投薬や治療をおこなうだけでなく、たとえばメタボリック症候群が疑われる患者に対しては、未病予防のために生活指導をおこなうこともあるでしょう。しかし、実のところ患者の一番の心配事は、肉体に関することではないことも多いはず。「健康上、何の問題もありませんよ」と診断された患者が、どうにも気持ちが晴れずに苦しい思いをしていることだってあるのではないでしょうか。では、それに対して医師にできることは何なのか。その答えを考えるにあたってぜひ参考にしてほしいのが、東京・港区の『赤坂溜池クリニック」です。院長の降矢英成(ふるやえいせい)先生は、日々、どんなふうに患者と向き合っているのか。お話を伺いました。

平均寿命が延びたことで、心や魂のケアがますます重要になった

――『赤坂溜池クリニック』では、身体や臓器のみならず、患者の心の状態や環境にまで目を向けた「ホリスティック医学」を実践されていますが、開院から約24年の間に、ホリスティック医学のニーズに変化はありましたか?

「平均寿命が延びたことで、医療分野でもスピリットの視点を持つことの重要性が高まっていると思います。赤坂溜池クリニックでは開院当時から、ボディ、マインドだけでなくスピリットも含めて患者さんと向き合っていますが、『人生100年時代』と言われるようになった今、老後やその先に対して大きな不安を抱いている方が増えている印象です。

“その先”というのは、100年経って死んだ後の未来のこと。

一般的に、40代50代くらいになると、親兄弟や親族といった身近な人が死を迎えることも増えてくるものですが、それがきっかけで強い不安を覚えるようになる方も多くいらっしゃいます。不安を覚える方の多くは、死んだらそこで終わりのように感じて、大切な人に残された時間が短いと知るや心が乱されてしまう。だけど、ホリスティック医学の観点からすると、この世界での役目を終えた人間は“旅立っている”のであって、遺された側はきちんとお見送りしてあげることが大切なんです。かつて『おくりびと』という映画がありましたが、まさにあの世界観です」

病気は、生き方や働き方、環境を見直すための大切なきっかけ

――仏教などにも通じるものがありそうです。

執着しないという意味ではそうかもしれません。

実際、仏教心理学をはじめとする専門の方々とも交流させていただいていて意見交換することも多いですが、みなさんの話を聴いていてもやはり、死に対して恐怖を感じている方は多いように思います。死にゆく本人も痛かったり苦しかったりすることがあるだろうし、なんとかしてあげたいと思って当然ですけど、『旅立ち』『お見送り』ということを覚えておくと、少しは恐怖感が薄れるかもしれません。だけどそもそも、我々は全員必ず死ぬんです。死ぬとか老いるとかいうことはひとつの生理現象なのだから、嫌がる必要なんてありません。

老いに対して大きな恐怖感を抱いている人もとても多いけど、それはとんでもないことです。

ネイティブアメリカンの『酋長』『長老』という言葉にも、尊敬の意味が込められていることからもわかる通りです。なのに今は、老いに伴って備わっていく知恵だとかが軽視されてしまう苦しい時代になっちゃった。『生老病死』は人間が免れがたい根源的な四つの苦しみだとされますが、一方で、貴重な気付きのきっかけともなりうるんです。病気にかかったとき、それを災難のように捉えるのではなく、環境や働き方を見直すタイミングだったと考えることもできる。それも、ホリスティック医学の好きな点です。もちろん、わたしの考え方を患者さんに押し付けることはよくないですが、ひとつの考え方として伝えると、意外と受け入れてもらえることも多いですよ

「アンチエイジング」ではなく「ヘルシーエイジング」を意識して、ヘルシーに年を重ねてほしい

――特に日本人は、老いることに対してネガティブなイメージを持っている傾向が強いように思われます。

自己評価、自己尊厳が低いどころか、自分の価値に気づいていない人が多いです。あるいは、患者さんを診ていても思うのが、完璧主義の度が過ぎるというパターンもあります。等身大の自分を認めてあげることができたら、年齢を重ねたことによる見た目の変化なんてたいした問題じゃないと思えるものなのに。

『老いてしまった自分には価値がない』と感じてしまうひとつの要因としては、美容医療業界やマスコミが流行や最先端を取り上げすぎることも挙げられると思いますよ。それと、『アンチエイジング』という言葉自体よくないし間違っている。

アンドルー・ワイル(アメリカの健康医学研究者)が提唱した『ヘルシーエイジング』のように、いかにヘルシーに、優雅に年齢を重ねていくかが大事なんです。『アンチエイジング』という間違った方向性を意識して、若者みたいにテキパキしようとする必要なんてないし、まして成長ホルモン剤なんかを打って見た目の若返りを図るのは命にもかかわること。わたしは、『ヘルシーエイジング』とリンクするハーブなどをすすめることはありますが、それも、健康の“サポート”といった感覚で取り入れることを提案しています

混合診療をおこないたいなら、細かなことまで保健所に相談するのがおすすめ

――ハーブは薬などと一緒に処方されているのですか?

うちは現代医学以外の療法も取り扱っているので、ワンフロアで保険診療をおこない、もうひとつのフロアで自由診療をおこなっています。自由診療のほうでは、整体や鍼、アロマテラピーなどの施術も提供していますが、保険診療のほうはクリニック、自由診療をおこなっているほうは有限会社と分けているので、医師法には違反していません。医師法に違反することなく混合診療をおこなうためには、うちみたいに小さめのビルで2フロアにするか、もしくは同じフロア内で2つのエリアに区切るとかのやりかたもあると思いますが、いずれにしても保健所に伝えて指導を受けると間違いないです。

保健所に相談する際には、自分がやりたいこと、やろうとしていることを隠さないことが大切です。

たとえば、『薬と一緒に、少しならサプリも処方していいですか?』とか、確認しないとわかりづらいこともあるけど、真面目に聴けば丁寧に指導してくれるから、これから自分の理想のスタイルで開業したいと考えている人はどんな小さなことでも聴いてみるといいと思います。たとえば、シュタイナー医学の実現のために自費医療のみをおこなっているクリニックなどもありますが、保険診療と自費診療の両方をやりたいとなるとそれなりに準備は必要です。

自分の理想の医療を実現するためには何が必要なのかを考え、大学以外でも積極的に学んだ

――実務的なことだけでなく、勉学の面でも両方を習得するのは大変ですよね。

現代医学のスタンダードは抑えながらも、現代医学だけにこだわらないというのが自分の理念だったので、両方を学ぶ必要がありました。ただし、両方を“究める”ことはできません。大病院でトップになりたい人とははなから目指すところが違います。

わたしは、大学で現代医学の基礎を身に着けてから、ホリスティック医学や代替医療を学びながら、「NPO法人 日本ホリスティック医学協会」を設立して、活動しながら研鑽を深めていきました。実地で学んだことがすごく役立ったと今でも思います。

トラウマへの身体的アプローチは、サラエボの内戦を体験して苦しんだ人も救ってきた注目の療法

――今でも常に新しいチャレンジを重ねられているかと思いますが、最近力を入れている施術について教えてください。

トラウマへの身体的アプローチに用いられる『エネルギー心理学』は、うちのクリニックでも取り入れ始めています。

これは、たとえば津波などのショッキングな出来事を経験した際、身体の神経系にぐわっと溜まったエネルギーがそのまま放出されずに固着していると捉え、一時的にそのときの感覚をよみがえらせると同時に、溜まっているエネルギーを抜くという療法です。

抜き方はシンプルで、トラウマの感覚を思い出した瞬間に、エネルギーが固着している筋肉をタッピングするというものです。野生動物はライオンに襲われそうになると死んだフリをしてライオンの目を誤魔化すそうですが、その結果食べられずに済んだ動物は、ライオンが立ち去った後に、身体を震わせることで筋肉に溜まったショックを抜くんだそうです。

その点、動物のほうがよくわかっていますよね。こうした『感情開放のテクニック』は、サラエボの内戦によるトラウマが消えなかった人にも実践され、結果を出していることでもよく知られています。

初回の診察時に「CMI健康調査」をおこなうことで一人ひとりの心と身体の状態を確認

――何が自分にとってのトラウマなのかに気づいていない患者さんもいるのではないでしょうか?

『自律神経測定』の結果はプリントアウトして患者にも提供

▲「自律神経測定」の結果はプリントアウトして患者にも提供

確かに、自ら記憶から消している人もいますね。そういった場合は、2週間に1回くらいのペースで2か月、3か月かけて会話を重ねていくうちに記憶がよみがえってくることもあります。その過程においては、ご本人と相談しながら薬を処方することもあるし、インナーチャイルドを癒すための療法を取り入れることもあります。

また、基本的には最初に「CMI健康調査」を受けていただいて心と身体の状態を確認した上で、場合によっては「自律神経測定」によって自律神経の状態も把握させてもらうことで、よりよい療法を患者と一緒に決めていきます。

医師としてのモットーは「健康になって卒業する人を増やすこと」

――とても丁寧で、患者さん一人ひとりに寄り添った診療であることがよくわかりました。先生のことを信頼して長年通われていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

新規の患者さんにいらしていただくために、webサイトが検索に引っ掛かりやすいような最低限の対策はとっていますが、患者さんを抱え込むことは非常によくないことだと思っています。

セラピーサロンでも、リピーターを増やすための研修なんてやるけど、わたしはそういう考えには賛同できません。患者さんは、「治ったら卒業」! いかに多く前田敦子や大島優子を輩出するかが大切です。患者さんのことは引き留めないし、一人ひとりの人生も引き留めない。自分の理想とする医療を通して、みなさんのヘルシーエイジングを応援できたらいいなと思っています。

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