医療マーケティングの基本

医療マーケティングの基本

最近、医療マーケティングや医業マーケティングという言葉をお聞きになっている方も多いと思います。特に患者さんが増えないため経営に苦労している新規開業クリニック、競合医院ができて患者数が減っているクリニック、そしてこれから開業を準備している医師の方は、集患・増患の手段として医療マーケティングにご興味をお持ちの方も多いかと思います。そしてその多くの方が、ご自分で集患・増患の方法として自分のクリニックの経営に活かすために、その手法、ツール、そして実践法などについてご自分で情報収集をしていると思います。

しかし、これまで経験しなかった内容や専門分野外の内容が多く、苦労されている方が多いのではないでしょうか。そこで本記事では医療マーケティングに関する基本的な内容を解説しますので、本記事を読んでマーケティングの知識を得て、クリニック経営にぜひ活かして頂きたいです。

マーケティングとは?

まず、マーケティングとは何かの話をします。
マーケティングとは一言で言えば「売れる仕組み作り」であり、その機能としては、市場調査から製品・サービス計画、そして販売までを含んでいます。そして、非常に重要なプロセスの1つが、マーケティングの言葉通りに、マーケット、つまり市場をよく理解することです。それを一般的に「市場分析」と言いますが、その最初のステップとしては、顧客の動向調査が挙げられます。
詳しく言いますと、顧客(医療では患者)の心理や動向を調査・分析します。その上で、サービス提供側が顧客側に提案し、その提案に共感した顧客が医療サービスを購入するという事が医業経営において必要な流れになります。
マーケティングは、ときに予測を裏切ることもありますが、再現性が大切で、科学と似たところがあります。

医療マーケティングの基本は患者さんと信頼関係作り

私はこれまで多くの医療マーケティングに携わってきました。
そこで、マーケティングは何のために行うのかと常に問うことがあります。ただ売上を上げたい場合は、多くの広告費用を支払って、自院をPRし、患者さんを集めたらいいです。

しかし、「それは患者さんのためにも、医師のためにもならない。」
そう考えました。

なぜなら、これまで、ビジネス寄りに走った結果、患者さんの満足度が低くなり、結果的にいくら広告費を上げても評判は悪くなるばかりという医院を多く見てきたからです。
マーケティングする以上、医師と患者、どちらも幸せにならないと意味がありません。大切なのは、医院側の提供したいサービスに共感した患者さんが診察を依頼することが最初のステップ。

そして、両者が信頼関係を結び、中長期的に利益につながる関係性になることが重要だと考えています。

患者さん集めでまず行うこと

集患対策として絶対に必要なのは、開業地(または自医の場所)に競合医院がどのようなマーケティングをしているか把握しておく必要があります。
自分の専門分野の医院は、候補エリアにどれくらいあるのかということとは別に、集患対策での調査では、下記の内容を調査する必要があります。

  • 競合医院の訴求方法
  • 競合医院の広告手法(看板、インターネット広告、その他)
  • 繁盛している競合医院がどのような診療で患者さんを獲得しているか?

競合医院は患者さんにどのような点を訴求しているのか?

私が医療マーケティングに携わり初めたころは、まだクリニックの訴求とは「地域に貢献する医療機関です」という意味合いの訴求が多かったです。つまり、クリニックの本来の使命を訴求して、患者さん集めをしていました。しかし、現在では、マーケティング手法も進化し、様々なコンセプトが考えられています。医療ですので、表現出来ることに限りがありますが、出来たら患者さんが共感し、「この先生に診てもらいたい」と思えるような訴求をして頂きたいです。

競合医院はどのような広告を使用して、集患対策を行っているのか?

地域によって、広告の打ち方も様々です。例えば、駅チカであれば、資金力によっては駅看板から集患対策を行うことも考えられますし、インターネットを活用しての対策も最近では多い傾向にあります。口コミや紹介で成り立っている医院もありますので、出来る限り、事前調査をしてどのような集患対策がベストか検討してみましょう。
そして、地域によって、どのような診療で患者さんを集めているのか?も確認しておきたい点です。
大切なのは、自身が行っていきたい診療方針とは別に、その土地のターゲット層によってニーズも違ってくるということ。高齢者の多い地域、富裕層が多い地域、サラリーマンが多い地域など、ターゲット層の属性の違いによってニーズも違ってきます。

事前調査の結果をホームページに落とし込む

今まで、集患対策の事前調査について記載しました。それが終わったら、次にやることとして、事前調査の結果、決定した診療コンセプトを自院のホームページに反映させましょう。ホームページは自院の核となる存在です。集患対策するには、ホームページは絶対に欠かせないツールとなります。

私の経験ではありますが、「坂東さん、うちの地域は高齢者が多いので恐らく、ホームページは見ません。ほぼ紹介でくると思いますよ。」そう言いたい先生もいらっしゃいました。

しかし、私の経験では、インターネットサーフィンをしない高齢者は、代わりにご家族の方が検索して、通院する医院を決める傾向にあります。それに、今の60代以降でも、ネットサーフィンされる方が多いのです。また地方だから、駅から遠いからと言って、意外に侮れないということを認識した方が良いです。

知人の紹介から通院されるケースですが、紹介する際にもパンフレット的なものが必要ですし、ご本人もチェックしたいでしょう。そのために、ホームページは絶対に必要なのです。

ホームページを見ない人が多い地域のケースを考えてみます。

紙媒体メイン(パンフレット、チラシ)のみを作成するのも一つの案としてございますが、紙媒体は一度印刷すると、文字でミスがあっても修正ができませんし、再度印刷するはコストがかかります。

開業時に資金を確保したい方にとっては、あまり効率の良い媒体ではないですね。(最小限の紙媒体は必要ですが・・・)よって、まずは、あなたの診療コンセプトを明確にし、患者さんが共感するものをホームページに落とし込んでいくという作業を行っていきましょう。

患者さんには3つのタイプがある

医療マーケティング携わって10年以上経ちますが、ホームページのコンセプト作成の支援、サイトアクセスの分析、広告運用の支援を毎日行っております。かれこれ、10年以上、毎日行っているのですから、人生の3分の1は、医療マーケティングの追求と、数値を追っていることになります。日々、数値とにらめっこと言いますか、数値を追ってきますと、ある法則のようなものがわかるようになり、面白い結果も出てくるのです。

今回はその一つである、あなたの医院に問い合わせる患者さんには3つのタイプがあるということをお伝えします。

患者さんが問い合わせするきっかけ(経路)としては、ホームページ経由がこれまでの経験上、一番多い可能性が高いです。

ホームページには、患者さんが共感するようなコンセプトを訴求し、集患に繋げることは前章でお伝えしました。ホームページに掲載する内容もちょっとしたコツが必要です。

では、ホームページにはどのようなことに気をつけて作成すればよいのでしょうか?それは、患者さんのタイプを知ることが一番です。事前に患者さんには3つのタイプがあることを把握し、それに基づいてホームページの制作を行っていくことがクリニック経営を成功させる一つの要因となることは間違いありません。次に紹介する患者さんのタイプは、今まで私が数多くの医院ホームページの解析を行い、感じた患者さんのタイプになります。大きくわけて、3つに分かれます。

  • 直感型
  • 比較検討型
  • 熟考型

直感型

ホームページのファーストビュー(PC、スマートフォンで最初に見えるホームページ画面)のデザイン、文言を見ただけで、問い合わせるタイプ。

比較検討型

ホームページ全体をさらっと見て、自分に合っているかを確認。その後、他院のホームページと比較して、問い合わせするタイプ

熟考型

ホームページ全体を見て、他院比較、口コミのチェック。その後、熟考してから問い合わせするタイプ。

重要なのはすべてのタイプの患者さんに対応できるホームページ作り

集患対策としての重要なポイントは、3つの内、いずれかのターゲット層に絞るということよりも、3つすべての患者さんのタイプに対応できるようなホームページにしなければ繁盛するクリニックにはならないということです。

では、1つ目の直感型からご説明します。

検索エンジンや、SNSなどからあなたの医院のホームページにたどり着き、直感的に第一印象で問い合わせを決めるタイプです。全体的なレイアウト(色、写真、雰囲気、キャッチコピー)を見て、判断する傾向があり、ファーストビューを見ただけで問い合わせしてきます。

2つ目の比較検討型についてです。

あなたの医院ホームページの内容をざっと確認した後、競合他院のホームページも見て検討します。そして、どこで診療を受けるかを決めます。一番タイプとしては多い印象です。

3つ目の熟考型についてです。

2の比較検討型に加えて、口コミ情報であなたの医院情報を確認して、さらに熟考するタイプです。時間をかけて調査しているだけに、3つのタイプのうち、あなたの医院の情報を一番詳しく知っています。

以上の3つのタイプの患者さんのつもりで自院のホームページ制作方針を決めてから制作に着手すること、そしてすでにホームページをお持ちの医院は、自院のホームページが3つのタイプの患者さんのニーズを満たしているか、点検し、修正をしていくことが大事です。

今まで数多くのホームページ制作と医療機関の集患・増患支援から得られた経験知に基づいて、医療マーケティング基本とホームページ制作のノウハウを説明しました。しかし一番重要な基本ができていないと、せっかく集めた患者さんが離れていってしまうことを忘れないで頂きたいです。

その一番重要な基本は何か。それは、院長自身とスタッフのホスピタリティマインドです。つまり、医療機関の集患はマーケティングの手法と属人的なサービスの総和であり、両者がバランスよくかみ合う時に最適な成果を生み出すことを忘れず、患者さん一人ひとり対応にも誠意を尽くして頂きたいです。

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