医療マーケティングとは? どんなことをすればいい?
病院やクリニックを運営していくにあたっては、しっかりとマーケティングをおこなうことが大切です。しかし実際のところ、マーケティングの大切さを理解している医療機関は少ないかもしれません。「医療機関にとって大切なのは、質のいい医療を提供すること」という考えはもっともですが、医療マーケティングによって患者を集めてこそ、その質のいい医療をよりたくさんの人に提供することができるのです。これまで医療マーケティングについてきちんと考えてこなかった医療機関も、これから開業を考えているという人も、この機会に医療マーケティングについて考えてみましょう。
医療マーケティングとは?
まずは医療マーケティングの定義について説明します。医療マーケティングとは、医療機関の認知度を高めると同時に患者のニーズを探り、医療サービスのクオリティを向上させていくことで、医療関係者と患者との信頼関係を構築していくための戦略を練ることです。
医療マーケティングにおいて大切なことは、「医療関係者と患者の両方の満足度を高めるにはどうすればいいかを考えること」。単純に売り上げ増加を目標に多額の広告費用を投じることは、「医療マーケティング」とは言えません。なぜなら、それでは患者のニーズを考えていることにはならないからです。
では、具体的にはどんなことを考えればいいかというと以下の通りです。
- 1. 【確認】事業計画でゴールと考えていた目標数値と現状の乖離がどのくらいであるかを確かめる
- 2. 【分析】現状の問題点を分析する
- 3. 【実行】施策の優先度を考えて実行に移す
- 4. 【2~3の繰り返し】その後は、分析→実行 を繰り返す
【分析方法1】患者にアンケート調査に協力してもらう
続いては、2の【分析】について、具体的にどんな方法があるのかをみていきます。もっとも簡単にできる方法としては、患者にアンケートを取るという方法があります。これを「患者満足度調査」といいますが、患者満足度調査のアンケート用紙には、以下のような質問を載せるのが一般的です。
- クリニックを何で知ったか
- クリニックを家族や知人にすすめたいか
- 待合室の広さや椅子の数は適切か
- 待合室に置いてある本などの備品には満足しているか
- 診察室の広さは十分か
- 診察室や待合室は清潔か
- トイレは清潔に保たれていたか
- 順番の番号表示は見やすいか
- 駐車場は利用しやすいか
- 院内の掲示物は見やすいか
- 受付の手順がわかりやすいかどうか
- 受付の対応には満足か
- 受付の身だしなみは適切か
- 医師の治療や説明は適切か
- 医師の身だしなみは適切か
- 診察までの待ち時間に対する満足度
- 会計までの待ち時間に対する満足度
- 検査までの待ち時間に対する満足度
- 希望日時の予約を取りやすいか
- 予約方法に満足しているか
- クリニックのホームページを見たことがあるか
- SNSやホームページから発信してほしい内容はあるかどうか
【基本項目】
【設備について】
【受付について】
【スタッフの対応について】
【待ち時間について】
【予約について】
【ホームページに関して】
回答の選択肢は、満足・やや満足・普通・やや不満・不満などの5段階にすると、患者が無理なく答えられるでしょう。予約の方法に関しては、「ホームページからも予約できるようにしてほしい」「LINEで予約できるようにしてほしい」などの具体的な選択肢があると、患者がどんなことを望んでいるかがより詳しくわかります。また、回答用紙の最後に自由記入欄を設けておくと、思いもよらなかった意見を聞ける場合もあるでしょう。
【分析方法2】業者に患者満足度調査を依頼する
時間的にも人手的にも自院で患者満足度調査をおこなうのが難しい場合は、業者に依頼して調査してもらうのも一手です。たとえば、以下のような業者があります。
アンケートの作成、印刷から調査結果の集計、報告書作成まですべて対応。アンケート実施から約1~2か月で報告書を作成してもらえます。また、アンケート項目および報告書の内容はカスタマイズ可能です。
質問項目を2つ以上掛け合わせることで、単純集計ではわかりにくい回答傾向まで見出してくれます。また、アンケート回答結果をもとに、「重点維持項目」「維持項目」「改善項目」「重点改善項目」の4つを割り出してくれます。
「患者と職員の笑顔のために」をモットーにコンサルティングなどもおこなっている企業です。患者満足度調査に関しては、確かなノウハウと多くの実績があります。
【分析方法3】電子カルテの分析ツールやレセコンの分析ツールを使う
分析ツールを備えた電子カルテがあれば、お金をかけずに現状を分析することができます。これから電子カルテを導入するのであれば、その点も加味して電子カルテを選ぶのもおすすめです。
おすすめ電子カルテ①:CLIUS
診療金額の平均や合計、患者数や診療回数を月次・年次で閲覧できるほか、曜日、時間帯、患者の年齢層ごとに診療件数や診療時間のグラフを表示することも可能。さらに、診療時刻や会計処理の時間などを「業務分析」で把握することや、患者の傷病名ランキングを表示できる「傷病名分析」、患者の再診率や新規患者の割合を確認できる「リピート率分析」などの機能も。また、地図上のプロットを確認して、患者の移住地域を把握することもできます。
おすすめの電子カルテ②:CLINICSカルテ
医業収入、診療単価、初再診数などの基本分析、特徴分析の内容をサマリーする「ダッシュボード」では、「日次」「月次」での状況を可視化。年齢、性別、新規/既存の3区分で期間ごとの来院患者を分析できる「集患」、患者の住所郵便番号から来院患者の傾向を可視化できる「診療圏マップ」も搭載。
おすすめのレセコン分析ツール:CLINIC BOARD
クリニックの経営指標を可視化する経営分析サービス「CLINIC BOARD(クリニックボード)」を利用して、毎月、診療報酬請求作業で作成されている「電子レセプトファイル(RECEPTC.UKE)」を活用すれば、医業収益や患者来院状況などから、自動で経営状況が分析されます。
【分析方法4】HPの解析をGoogle analyticsを活用する
Google analyticsの「ユーザー サマリー」画面を開くと、一定期間内にサイトに訪れたユーザーの訪問状況を把握することができます。サイトへの訪問を示す「セッション」、サイトを訪れた人数を示す「ユーザー」、サイト内で見られたページの数「ページビュー数(PV数)」、一つのページからサイト内の他のページへ遷移することなく離脱した「チョッキ数」、サイトに初めて訪れたセッションの割合を示す「新規セッション率」などをチェックすることで、どんな人がどんな情報を求めているかを把握できます。
自院のホームページだけでなく、SNSに関しても分析をおこなって記事を改良していくうち、ユーザーにとってよりニーズの高い情報を提供できるようになるでしょう。
分析方法について一から勉強したい場合は?
経営分析ツールやGoogle analyticsをうまく使いこなす自信がないなら、セミナーに出席したり参考になるYouTubeを見たりすることで、マーケティングの基礎から学ぶのがおすすめです。
1. CLIUS主催のセミナー
CLIUSでは、マーケティングをテーマとするセミナー以外にもさまざまなセミナーやイベントを開催しています。過去に開催されたイベントのなかには記事化、動画で提供されているものもあるので、サムネイルをチェックして気になるものがあればぜひ参照してみてください。
参照:CLIUS クリニック開業マガジン セミナーの記事一覧
2. YouTube(Wevery!チャンネル 河村伸哉)
医療機関のお役立ち情報を伝えるYouTubeチャンネル「Wevery!チャンネル 河村伸哉」は、医療マーケティングと関連が深い、「マイビジネスへの医院情報登録方法」「Googleに評価されるホームページの運用方法」などさまざまな情報を配信しています。
3. 開業医/開業準備医師オンラインサロン「Doctor's chart」
twitterの人気アカウント「よいこはこいよ@開業医サブノート」および「MM@開業医による医院開業話・医師のキャリア」のふたりが運営するオンラインサロンは、すでに開業している医師からもこれから開業予定の医師からも支持されています。開業医が集うネット上のコミュニティとして日本最大を目指しているオンラインサロンで、情報交換も活発におこなわれています。
参照:開業医/開業準備医師オンラインサロン「Doctor's chart」
また、サロンを運営しているふたりのtwitterアカウントも参考になります。
課題を見つけるために、まずは、自分が取り組みやすい方法を見つけよう!
以上の通り、医療マーケティングおよび自院の課題分析に役立つツールやサイトはたくさんありますが、たくさんあるがゆえに、「あれもこれも」と考えたり、「マーケティングのことを理解するのは大変だ。自分にはとてもできそうにない」と思ってしまったりする人も多いかもしれません。しかし、すべての情報をくまなくチェックする必要はありませんし、どんな分野における学びについても言えることですが、自分に合った方法を見つけるのが一番効果的。気になるものから試してみて、「これだ!」と思う方法が見つかれば、課題を分析することそのものを楽しめるはず。いろいろ試すことそのものが面倒なら、最初からプロに頼むという手もあるので、無理なく取り組める方法について考えてみてくださいね。