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財務省による「医療費の伸びの構造」とは

財務省による「医療費の伸びの構造」とは

日本国民の平均年齢は年々上昇しており、今や超高齢社会。高齢になるにつれて、病院にかかる機会も増えるため、年齢を重ねるほどに医療費もアップします。高齢化が原因で日本の医療費は莫大な数字になっているといわれますが、実際どのくらいの勢いで上昇しているのでしょうか?

驚異的なペースで伸びている国民医療費

財務省が2019年11月に行った「財政制度等審議会」では社会保障について触れており、その資料で「医療費の伸びの現状」をまとめています。

これによると、2017年度の国民医療費は約43兆円。2007年度の国民医療費は約34兆円だったため、過去10年間で平均2.4%/年のペースで増加しています。

医療費の上昇については、厚生労働省が出している『平成29年度 国民医療費の概況』でより具体的に解説しています。これによると、上の「財政制度等審議会」で対象とした2007年度から2017年度までの国民医療費は以下のとおり。


年度年間国民医療費
2007年度34兆1,360億円
2008年度34兆8,084億円
2009年度36兆67億円
2010年度37兆4,202億円
2011年度38兆5,850億円
2012年度39兆2,117億円
2013年度40兆610億円
2014年度40兆8,071億円
2015年度42兆3,644億円
2016年度42兆1,381億円
2017年度43兆710億円

こうして並べると医療費がどれだけハイペースで上昇しているのかが分かるでしょう。また、2017年度の人口1人当たりの国民医療費は33万9,900円。前年より2.4%の増加です。もはや周知の事実ですが、医療費の伸びは雇用者報酬といった、医療費をカバーする要素の伸びを大きく上回っており、これが保険料の引き上げの原因となっています。

医療機関にとっては収入増につながっている

医療費が莫大な数字になる原因として挙げられるのは高齢化です。しかし、財務省によると、高齢化などの要因による増加は平均2.4%のうち1.1%で、残りの約半分は人口増減や高齢化の影響とは関係のない要素によるもの。例えば、新規医薬品等の保険収載、医師数、医療機関数の増加、診療報酬改定などが挙げられます。医療費の伸びは「人口要因の伸び」だけでなく「医療関連の費用自体が上昇していること」も影響しているのです。

医療費の伸びは医療機関の収入増につながります。医療機関の収入が増えた要因は、医療費の上昇に加え、「診療報酬本体改定率」にもあると財務省は分析しています。 2019年度の資料ではありますが、改定率の伸びは、「賃金・物価の伸び」の加重平均値の増加率(10年平均0.1%)よりも大きくなっています。つまり、人件費や物件費の伸びを収入が大きく上回っているため、医療機関の収入も高水準で伸びているのです。

実際、2017年度時点での過去10年での診療報酬本体改定率は平均プラス0.6%。「賃金・物価の伸び」の加重平均値の増加率を0.5%も上回っています。ちなみに、2020年度はプラス0.55%で前年度(2019年度)を上回る改定率。医療制度の見直しやサポート体制の強化などまだまだ医療に関する課題は多く残されていますが、医療機関にとっては「収入面」での追い風が続いている状況だといえます。

とはいえ、現在は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で苦境に立たされている医療機関も多く、また医療機関、特に一般診療所が多すぎることで、患者の奪い合いが発生している状況。全てのクリニックが順風満帆とはいえません。クリニック経営を成功させるためにも、ニーズをしっかりと把握し、これまで以上にうまく立ち回りたいところです。

引用元

財務省「財政制度等審議会資料」

厚生労働省『平成29年度 国民医療費の概況』