患者が魅力に思う待ち時間対策・ほしいサービスとその対策
患者さんにとって苦痛なのはクリニックでの「待ち時間」です。診療がいつになるのかイライラされるとリピーターを減らすことにもなりかねません。患者さんの望む「待ち時間対策」、また実施すべき「待ち時間対策」とはどのようなものでしょうか。
患者さんはどのくらいの時間待っているのか?
『厚生労働省』の「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」によれば、患者さんの「待ち時間」については以下のようになっています。
※『厚生労働省』のデータを基に作成
参照・引用元:『厚生労働省』「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」
当然かもしれませんが、小病院では患者さんの待ち時間は短く済んでおり、「15分未満」が33.5%。
「30分未満」でデータをまとめてみると以下のようになります。
- 大病院:46.5%
- 中病院:47.3%
- 小病院:57.2%
小病院の57%、6割近くが待ち時間は30分未満です。逆にいえば、30分以上になると患者さんも「普通より長いなぁ」と感じることになるでしょう。そうなると医師の診療がどんなに良くても「あそこに行くと待ち時間が長いからなぁ」といったマイナスのイメージを持たれるかもしれません。
いずれにせよ、患者さんの待ち時間対策を行うことがクリニックにとってプラスの効果をもたらすことは確かです。
実施すべき待ち時間対策・望まれる待ち時間対策とは?
この待ち時間対策について、参考にすべきデータがあります。『大阪医療福祉専門学校』の調査で、病院でどのような待ち時間対策を行っているかを調べています。
大阪市内の200床以上の病院を対象に「診療待ち時間対策の現状」というテーマでアンケートを行い、以下の興味深い結果を得ました(同校の学生の卒業研究です)。
病院側が行っている配慮、今後行いたい配慮(複数回答形式)
病院側が行っている配慮 | アンケート結果 |
待合番号モニター | 14 |
新聞・雑誌・漫画 | 12 |
カフェテリア | 10 |
モニターに健康情報等のミニ情報 | 9 |
子供が遊べる絵本・おもちゃ | 8 |
携帯等への通知 | 5 |
図書スペース | 5 |
ゆったりできるスペース | 4 |
座りやすい椅子 | 4 |
ヒーリング音楽 | 2 |
WiFiエリア | 2 |
※アンケートは34病院に依頼しそのうち25病院から回答
200床以上の病院ですから上記の『厚生労働省』の調査の区分では「中病院」「大病院」になりますが、56%は「待合番号モニター」を導入しています。それだけ患者さんにとっての待ち時間を重要と考えているわけです。
また、さらに興味深いのは「患者が病院の待ち時間対策のサービスとして魅力を感じるもの」というアンケート(複数回答可)の結果です。これこそ患者さんの望む待ち時間対策と考えられますが、トップ5は以下のようになっています。
- 第1位:何分待ちかが分かるサービス
- 第2位:メールでの順番通知サービス
- 第3位:携帯の使用可能スペース
- 第4位:豊富な新聞・雑誌
- 第5位:カフェスペース
この調査によれば、第1位となった「何分待ちかが分かるサービス」は「77.4%」の支持を集めています。また第2位の「メールでの順番通知サービス」もほぼ4割の得票でした。
やはり患者さんは「あとどのくらいかかるのか」を知りたがっており、「順番が来たら知らせてくれればいいのに」と考えているわけです。
参照・引用元:『大阪医療福祉専門学校』「200床以上の病院における診療待ち時間対策の現状と展望」
小規模なクリニックでの待ち時間対策
比較的面積の小さなクリニックで可能な待ち時間対策としては、
- 待合番号モニター
- 新聞・雑誌・漫画を置く
- モニターを設置しての情報表示
- 座りやすい椅子
などが実行できます。
最近では液晶パネルも薄く、軽量化がされていますので設置場所は見やすい壁面など工夫できますし、情報表示については基本パソコンがあれば可能です。
また、上記のとおり多くの患者さんが望んでいる「携帯電話への通知」は「診療予約システム」の導入でも可能になります。近年、多くのベンダーから「診療予約システム」がリリースされていますが、その中にはこの機能を持つものがあります。
例えば『診療予約2020』は、患者さんがスマホ、PCから予約を行い、自分の順番やおよその診察開始時間を知ることができます。また、患者さんがクリニックの外にいてもスマホに「もうすぐ診察ですよ」とお知らせメールを飛ばすことが可能です。
診療予約システムも実に多種多様ですが、自分のクリニックに合ったものを選んでください。導入に際しては資料請求などを行って、自分のクリニックでやりたいことが実現できるのか、導入・設定は面倒くさくはないのか、などに十分注意してください。
患者さんの「待ち時間」を軽減することはクリニックの魅力を高めることにつながります。大規模な病院でもないし、スペースもないからやらない、ではなく、ぜひできることを考えてみてください。患者さんの心理的・時間的負担を軽減することができれば、クリニックの評価も上がりますから。