電子カルテのメーカーを比較したい! どんな種類がある?
電子カルテの導入を検討しているクリニックにとって気になることのひとつが、多くの医師に選ばれている、人気の電子カルテでしょう。そこで今回は、電子カルテのなかでもとりわけ人気が高いものをピックアップしてご紹介。それぞれの特徴を見比べることで、導入の際の参考にしてみては?
電子カルテは大きく2種類に分けられる
特徴を見比べる前にまず知っておきたいのは、電子カルテは「オンプレミス型」と「クラウド型」の大きく2種類に分けられるということです。オンプレミス型の電子カルテは、自院内に設置したサーバーコンピューターで、データの保存および管理をおこないます。自院内のコンピュータ間をローカルネットワークで接続して使用するため、基本的に院内のみで完結したシステムといえるでしょう。一方のクラウド型は、クラウド事業者が所有するサーバーにデータを保管して管理します。
前者は院内に専用機器があるため外部に情報漏洩しにくいですが、初期費用が高くつくうえ、メンテナンスや更新作業により多くの時間を割く必要があります。後者は初期費用を抑えられるうえ、メンテナンスや更新作業が不要ですが、セキュリティは自院で管理する必要があります。
レセコン一体型とレセコン分離型(連動型)がある
また、電子カルテとレセコンが一体となった「レセコン一体型」か、カルテサーバーとレセコンサーバーを連携して操作する「レセコン分離型(連動型)」であるかという違いもあります。
サーバーへの接続方法との組み合わせだと2×2の4パターンにわけることができるので、4パターンそれぞれの強みを比較検討したうえで、まずは4パターンのうちどのパターンがいいかを考えるのもいいですね。
≪クリニック向け電子カルテ4分類の比較≫価格 | 使いやすさ | 機能 | 連携 | サポート | 開発スピード | |
オンプレミス型×レセコン一体型 | △ 初期費用300万円~500万円、月額費用3~5万円。数年ごとに更新や買い替えも必要。解約時の費用も要確認 | △ 経過年数によって動作が重くなることも。クリニック外で使用するにはシステム構築などが必要 | 〇 カルテ機能は豊富。一部カスタマイズも可能。画面はやや複雑 | 〇 クリニックに合う連携システムを構築できる。レセコンに関わる連携はメーカーによる | ◎ 現地対応してくれる場合が多い。カルテに限らずプリンタやPCの対応まで可能なケースも | △ OSのアップデートも含めたシステムの更新は5年に1回程度 |
オンプレミス型×レセコン分離型 | △ 初期費用300万円~500万円、月額費用3~5万円。数年ごとに更新や買い替えも必要。解約時の費用も要確認 | △ 経過年数によって動作が重くなることも。クリニック外で使用するにはシステム構築などが必要 | 〇 カルテは一部機能をカスタマイズ可能。カルテ側にもレセコン機能を呼び出せる。画面はやや複雑 | ◎ カルテはクリニックに合わせてカスタマイズ可能。カルテ・レセコンともに連携先が豊富 | 〇 現地対応してくれる場合が多い。カルテに限らずプリンタやPCの対応まで可能なケースも | △ OSのアップデートも含めたシステムの更新は5年に1回程度 |
クラウド型×レセコン一体型 | ◎ 初期費用は0円~、月額費用は2~5万円。カルテの買い替えや更新は不要 | 〇 経過年数に左右されない動作をキープ。場所を問わず使用できる | 〇 クリニックに必要なカルテ機能を備えつつ、シンプルな画面設計 | △ 連携数や種類はメーカーによりばらつきがあるため、選定時は確認が必要 | △ 現地対応は稀だが、ITツールを活用して、瞬時にトラブル対応することが可能 | ◎ メーカーによるが、毎月~3か月ごとにアップデートを実施 |
クラウド型×レセコン分類型 | ◎ 初期費用は0円~、月額費用は2~5万円。カルテの買い替えや更新は不要 | 〇 経過年数に左右されない動作をキープ。場所を問わず使用できる | 〇 クリニックに必要なカルテ機能を備えつつ、シンプルな画面設計。カルテ側にもレセコンの一部機能を呼び出せる | 〇 カルテの連携麺はメーカーによるため要確認。レセコンの連携が豊富であればメリットを享受できる | △ 現地対応は稀だが、ITツールを活用して、瞬時にトラブル対応することが可能 | ◎ メーカーによるが、毎月~3か月ごとにアップデートを実施 |
オンプレミス型×レセコン一体型
株式会社ユヤマ「BrainBoxVIII 」
シンプルで使いやすい操作画面に設計されていますが、操作する人のスキルに合わせてカスタムできる「カスタマイズフリーモード」を活用すれば、より多くの機能を使いこなすことができます。また、レントゲン画像やバイタルサインなどのデータを取り込んで、診察の精度をアップさせることもできます。
PHC株式会社「Medicom-HRf」
レセプロチェック作業を効率化できる「点検アシスト」機能搭載なので、電子カルテを導入して業務効率化を狙いたいと考えているクリニックにはうってつけ。また、地域医療連携ネットワークに対応していて、約170社の他者機器と連携可能です。
アイネット・システムズ株式会社「AI・CLINIS」
無床クリニック向けに作られたレセコン一体型電子カルテです。マスタ登録などの事前入力なしに、所見や病名などをパターン化できます。また、スタンプを押すような感覚で簡単に入力ができるのが特徴です。
オンプレミス型×レセコン分離型
株式会社ビー・エム・エル「QUALIS」
画面のレイアウトは、ユーザーごとに3パターン登録が可能。複数人で使っても、設定を変更することなく、自分が使いやすい環境で作業できるのが魅力です。また、使いやすさや機能性も追求。リモートとオンラインによるサポートも万全です。
株式会社ビー・エム・エル「QUALIS」 ⇒http://qualis.bml.co.jp/クラウド型×レセコン一体型
株式会社Donuts「CLIUS」
直感的な操作で入力可能。Windows、Mac両方のパソコンで利用できるほか、iPadでも利用可能です。また、日医標準レセプトソフト「ORCA」との連携によって、受付から会計までの業務を効率化させられます。SS-MIX2に対応しているため、地域医療連携にも役立ちます。サポート窓口の利用が無料なことや、月額12,000円~/5IDと低めのコストに設定されていることもうれしいポイントです。
株式会社メドレー「CLINICSカルテ」
同じく株式会社メドレーで作られている「CLINICS予約」や「CLINICSオンライン診療」と連携させることで、"患者とつながることができる"のが一番の特徴。患者側でアプリを導入しておけば、検査結果のデータ送信やキャッシュレス会計も可能となります。
株式会社ユヤマ「BrainBoxCloud」
医事会計一体型のクラウド電子カルテです。診察パネルでは、他院の処方や患者の状態などを一目で把握できるので、診察がスムーズ。電子カルテに蓄積されたデータをAI INSIGHT機能で分析することによって、診察の待ち時間や再来院率などを予測することもできます。
クラウド型×レセコン分離型
セコム医療システム株式会社「セコムOWEL」
過剰な機能を省いたシンプルな画面設計が特徴のクラウド型電子カルテです。ヘルプガイドや動画マニュアルも用意されているので、使い方に関して困ることは少ないでしょう。Windows、MacOS、iPad、Androidタブレットとさまざまな端末に対応。検査依頼や検査結果の連携授受はオフラインでも操作できます。
自院の診療科にぴったりの電子カルテを選びたいなら
「多くのクリニックから選ばれているかどうか」も選ぶ際のひとつの基準となりますが、「自院の診療科に合っているかどうか」をチェックすることも大切です。特に、精神科、眼科、産科・婦人科は、診療科特有の項目などに最初から対応している電子カルテを選ぶことが重要。これらの診療科に該当するクリニックの場合は、まずは「(診療科名) 専用電子カルテ」などで調べて、候補を絞ってみてくださいね。