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勤務医は激務って本当?その理由とは?

勤務医は激務って本当?その理由とは?

勤務医は激務って本当?その理由とは?

医者の仕事はハードだというイメージを抱いている人は多いでしょう。病院の営業時間をwebサイトなどで確認すると、夜間や土日は営業していないところも多いですが、入院患者がいる病院となると24時間態勢で見守ることも必要です。ということは、やはり本当に勤務医は激務ということになるのでしょうか? 早速みていきます。

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1週間当たりの医師の平均勤務時間は53.2時間

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が公表した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」の結果によると、勤務医の1週間当たりの労働時間の平均は53.2時間。60時間以上働いている人の割合は、全体の40.0%という結果が出ています。

勤務医の1週間当たりの平均労働時間

労働時間割合
20時間未満8.20%
20~40時間未満5.70%
40~50時間未満21.80%
50~60時間未満24.40%
60~70時間未満20.00%
70~80時間未満10.00%
80時間以上10.00%

なかでも多忙を極めるのは若い医師。「医師の勤務実態及び働き方の 意向等に関する調査」によると、20代の勤務医の勤務時間は、1週間当たり55時間程度にも及ぶという結果が出ています。

性別・年代別勤務医の勤務時間

年代勤務医(常勤)勤務医(非常勤)
診療+診療外当直・オンコール診療・診療外当直・オンコール
男性・20代57.3(時間)18.855.814.2
男性・30代56.418.754.216.5
男性・40代55.217.145.58.6
男性・50代51.813.837.68.9
男性・60代45.5830.35
女性・20代53.51354.512.7
女性・30代45.210.736.74.9
女性・40代41.4925.31
女性・50代44.27.825.51.8
女性・60代39.33.425.91.3

参考:「医師の勤務実態及び働き方の 意向等に関する調査」P.13 , P.14

また、こうした勤務状況を改善するために考えられうる方策としては、以下のような回答が上がっています。

勤務医の勤務環境改善のための方策

医師数の増加(非常勤・研修医を含む)55.40%
当直明けの休み・休憩時間の確保53.40%
他職種(看護師、薬剤師等)との役割分担の促進50.80%
診療以外の業務の負担軽減45.90%

環境改善の障害事由としては、以下のような回答がありました。

勤務医の勤務環境改善の障害事由

地域・診療科による医師数の偏在53.80%
医療行為以外の業務量の多さ51.10%
絶対的な医師不足46.50%
時間外診療、救急診療の増加38.90%
医療需要の増大・過多(高齢患者の増加などを含む)36.20%

参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」―p.52一部抜粋

ちなみに、週当たりの平均労働時間53.2時間から年間の労働時間を計算すると、53.2×4(週間)×12(か月)=2,553.6時間となりますが、これは、「過労死ライン」といわれる年間960時間を遥かに超えています。「自殺や死を毎週または毎日のように考える」とする医師が3.6%にものぼるという調査結果もありますが、過労死ラインをこれだけ超えているのですから当然かもしれません。

こうした状況を考慮して、2024年4月から適用される医師の働き方改革では、「勤務医の時間外労働時間規制」は、原則として年間960時間/月100時間とされています。

参考:医師の特殊性を踏まえた働き方検討委員会 答申 25枚目一部抜粋

参考:第22回 医師の働き方改革に関する検討会 P.2参考

また、勤務医の1週間あたりの勤務時間の区分別割合を、「1週間あたりの勤務時間のうち“指示のない時間を削減した場合”」と比較すると以下のような割合になります。

参考:第22回 医師の働き方改革に関する検討会 P.37 

勤務医が忙しいと言われる理由とは?

まずは、勤務医が激務だと言われるようになった理由と考えられる要素を考えていきましょう。

1.急患対応などで勤務時間が変動しがち

基本的に定時で帰宅となる公務員や、残業になる場合も事前にスケジュールを把握しやすい会社員などとは異なり、勤務医の仕事のスケジュールは不安定。なぜなら、緊急事態に対応することが必要だからです。急患が運ばれてくればすぐに診察に当たることが必要ですし、入院患者の病状が急に悪化することだって考えられます。そうした場合、処置や緊急手術にどのくらいの時間がかかるかも読めませんし、連日同じようなことが起こることだってあり得ます。

2.昼夜問わず病院から連絡がくる

急変時はもちろん、ちょっとした指示でも主治医が出すという「主治医制」をとっている病院の場合は特に、主治医となると大変です。昼夜問わず、何かあれば病院から電話がかかってくるため、気が休まることがありません。

3.当直などで徹夜することも多い

急患対応で睡眠時間が削られることがあるほか、当直で徹夜続きとなることもあります。通常の日勤を終えたあとに夜勤に出て、さらにその翌日も日勤となる36時間勤務の場合などは特に過酷。十分に身体を休めることができないでしょう。また、基本的に休みは不定期。週休2日の働き方なら身体にある程度リズムができますが、働く時間が決まっていないと身体にリズムができにくく、眠りたいときにうまく入眠できないなど、身体に疲れが溜まってしまう場合もあるでしょう。

4.研修医として働いている期間などは割に合わない

急患対応で残業が増えたり、当直などで徹夜続きになったりすることが多くても、その分、収入が高いならモチベーションも上がるというもの。しかし、特に研修医期間などであれば、一人前の医師とはみなされないため給料の額も低く、不満を感じることもあるかもしれません。そうするとストレスを感じやすくなることから、「これだけ働いているのにどうして……?」という想いが募ってしまうことも。

激務でも仕事にやりがいを感じる理由とは?

続いては、実際にかなり激務であっても、勤務医が自身の仕事を続けたいと考える理由についてみていきます。

1.人の命を助けたり、生命誕生の瞬間に関わったりすることができる

救急で運ばれてきた患者に執刀したり、病状が急変した患者に処置を施したりすることによって、患者の一命を取り留めることができたら、ほっと胸をなでおろすことができるもの。また、産婦人科医であれば、生命誕生の瞬間に立ち会う感動を味わうたび、「医者になってよかった」と思う人も多いことでしょう。

2.社会的信頼や名声を得られる

地域に暮らす住民から尊敬されたり、収入が高いことで金融関係者から信頼してもらえたりといったメリットも当然あります。医師によっては、肩書や実績を武器に、メディアからコメンテーターとしてのオファーが寄せられたり、書籍の執筆を任されたりといった経験がある人もいるかもしれません。

3.人の役に立てる、患者に感謝される

病気や怪我が完治、緩解したことで患者やその家族に喜んでもらえたり、感謝の言葉を述べられたりする瞬間は、医師にとってもっともやりがいを感じさせてくれるもの。激務によって肉体的にも精神的にも辛い毎日を送っていたとしても、「がんばってきてよかった」「明日からももっとがんばろう」と思わせてくれる出来事であるに違いありません。

もちろん、自分の身体や自分の幸せも大切に!

激務であっても、自分の責務をまっとうしたいという医者はとても多いことでしょう。しかし、無理をして自分自身が身体を壊したり、医療ミスを犯したりしてしまっては元も子もありません。より長くにわたって、よりたくさんの人に笑顔をもたらすことができるよう、しっかり自己管理しながら、心も身体も健康に仕事を続けられるといいですね。


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