IT導入補助金とは?3つのタイプとその申請方法
「電子カルテ」「レセコン」などのITツールをクリニックに導入したいけどお金がかかるなぁ……と悩んでいる医師・クリニック院長は「IT導入補助金」の利用を考えてみましょう。最大75%の補助を受けることができるので、クリニックの負担は25%で済むかもしれません。
「IT導入補助金」の概要
「IT導入補助金」は正式名称を「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」といいます。この「補助金」は、
ITツールを導入することで「業務効率が上がる」「売上がアップする」のなら、そのツールの導入にかかる費用の一部を出してあげます
というものです。
ただし、申請を行い、審査にパスして初めて補助金を受け取ることができます。
また、導入できるITツールは、そのソフトあるいはサービスの提供元が「IT導入補助金」で使えるように登録したものでなければなりません。つまり、どんなに使いたいITツールがあったとしても、制度の補助対象になっていなければ申請できないのです。
そのため、お目当てのITツールが登録されているかどうかは確認しておく必要があります。
参照・引用元:「IT導入補助金2020」公式サイト
「IT導入補助金」の対象
補助金対象には「医療法人、社会福祉法人、学校法人」(資本金の規定なし/常勤従業員300人以下)を含みます。また、従業員5人以下の「商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)」も対象です。そのため、小規模な医療クリニックこそ申請すべきです。
「IT導入補助金」の種類
「IT導入補助金」には以下の3つがあります。これまでは「A類型」「B類型」の2種類だったのですが、コロナ禍の不況に対応するため、「C類型」という特別枠が設けられました。
- A類型・B類型との併用はできません。
- 1:「プロセス」とは、業務工程や業務種別のことです。
- 2:ツール要件(目的)について、詳しくはこちらをご確認ください。
- 3:賃上げ目標について、詳しくはこちらをご確認ください。
- 上記は大まかな相違点の抜粋のため、交付申請にあたっては以下のリンク先をご確認ください。
参照:IT導入補助金2020
「電子カルテ」「レセコン」といった医療関係のITツールで補助金を申請するのであれば、「A類型」「B類型」「C類型-2」がターゲットになります。「C類型-1」は「サプライチェーンの毀損」に対応するためのものですので基本関係ないはずですから。
まずAとBの区分についてです。「A類型」「B類型」で何が違うのかといいますと、導入したいITツールが「どんな機能」を持っているかです。
以下がプロセス数の判断基準です。
大分類I ソフトウエア
(業務プロセス・業務環境)
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 調達・供給・在庫・物流
- 業種固有プロセス
- 会計・財務・資産・経営
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練・テレワーク基盤
この6つのうち、最低1つ以上に対応している必要がありますが、4つに対応しているならB類で申請できる、という具合です。とはいえ、これはITツールのベンダーがどのような機能を持つソフトとして登録しているかによるのです。
一番簡単なのは、そのITツールのベンダーに連絡を取り、「IT導入補助金で導入したいのですが……」と相談することです。ベンダーも売上になるので、何型になるのか、また申請の方法などを細かく説明してくれるはず。
次に、コロナによって設けられた「C類型-2」ですが、「乙:非対面型ビジネスモデルへの転換」「丙:テレワーク環境の整備」のどちらか一つ以上を導入という条件ですので、例えば「オンライン診療」機能のある診療予約システムの導入などで申請できます。
ただし、前記のとおりソフトベンダーがそのITツールを補助金制度の対象となるよう登録されていなければ申請できません。注意してください。
「IT導入補助金」申請の締め切り
A類型・B類型の申請締め切り(10次):2020年12月18日(金)17:00まで
C類型の申請締め切り(9次):2020年12月18日(金)17:00まで
このように申請締め切りが迫っています。「サービス等生産性向上IT導入支援事業 コールセンター」に伺ったところ、一応「IT導入補助金」事業は継続される予定だが詳細は決まっていない――とのことでした(2020年11月18日現在)。
「IT導入補助金」の申請準備
実際の申請ですが、申請の前にまず以下の準備をしておきます。
- 「gBIZ]のIDの取得
- SMSが使える携帯電話・スマホ
「gBIZ」というのは、行政サービスへのログインを簡便にするための、いわば窓口です。このプライムIDを取得していないと申請するためのページ(申請マイページ:後述)にログインできません。
「サービス等生産性向上IT導入支援事業 コールセンター」に伺ったところ、IDの取得申請から発行まで2週間ほどかかるそうです(2020年11月18日現在)。ですので、ITツールのベンダーに相談すると同時にID取得申請をしないと締め切りに間に合いません。
また「SMS」が使える携帯電話・スマホが必要なのは、申請の過程で個人認証を行うのに必要なためです。
また、申請には以下の書類が必要です。
- 法人の場合:「法人税の納税証明書」と「履歴事項全部証明書」
- 個人事業主の場合:「所得税確定申告書B」と「所得税の納税証明書」と「運転免許証」または「運転経歴証明証」または「住民票」
「IT導入補助金」の申請
実際の申請は以下のように進めます。
まず条件を確認してください。
- 医療法人の場合:常勤の従業員が300人以下
- 個人事業主の場合:5人以下
- 申請する年度ですでにIT導入補助金を採択されていないか(すでに採択されている場合は申請不可)
- 交付申請の直近月において、申請者が営む事業場内で最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること(最低賃金条件を満たしていない場合は申請不可)
- IT導入の補助事業を行うことによって労働生産性が伸びる。その伸び率について、1年後に3%以上、3年後に9%以上となるか? これらと同等以上の数値目標を作成する(この伸び率が達成不可能な場合は申請不可)
条件を満たし、準備ができたらいよいよ申請です。
- まず「IT導入支援事業者」を選定します。「IT導入支援事業者」というのは、補助金事業に登録されたITツールのベンダー、あるいはサービスベンダーなどです。
- 「IT導入支援事業者」との話がまとまったら、「IT導入支援事業者」から「申請マイページ」への招待が送られてきます。このページにアクセスして、必要事項を入力。必要な書類も添付します。
- 「IT導入支援事業者」が入力された情報・添付資料を確認し、「IT導入支援事業者」が必要な情報(導入予定のITツールの機能・金額など)を入力します。
- 全ての情報が入力され、書類も整ったら最終確認後、申請に対する宣誓事項にチェックを入れます。SMSによる認証を行い、申請を提出します。
このように、結構面倒くさい作業が必要なのですが、申請作業を代行しますという業者もあるので、もし条件が合うのであれば「法人税の納税証明書」など、必要な書類をそろえて代行業者に申請手続きを丸投げすることも可能です。もちろんその分の費用はかかりますが。
申請が通ったら……
申請が通り「OK」となったら、「採択」の通知が来ます。採択されたら、「事業実施期間内」に申請したITツールをきちんと導入したことを証明するために、契約書や支払いを示す書類を提出しなければなりません。
残念ながら「不採択」となっても、再度申請は可能です。ただし、同期間内に採択されるのは1回だけです。
まとめ
「IT導入補助金」は、ITツールを導入したいクリニックならぜひ利用したい制度です。お目当てのITツールがあるなら、まず「IT導入補助金2020」のサイトにアクセスして、事業者として登録されているかを確認してみましょう。ただ、締め切りが迫っていますのでお急ぎください。