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9月末までの申請で、国の予算で自院に患者用Wi-Fiを導入できる!

9月末までの申請で、国の予算で自院に患者用Wi-Fiを導入できる!

コロナで人と会えない孤独を救うインターネットは、入院患者にとって絶対必要なもの

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2021年1月、フリーアナウンサーの笠井信輔さんが、ブログを通して「病院にもWi-Fiを!」と訴えたことが大きな話題となりました。当時の笠井さんは、悪性リンパ腫を患い、2019年12月に入院して治療を開始したばかり。そんななか、新型コロナの影響によって、友人にお見舞いに来てもらえないどころか家族さえ面会謝絶となったことで、オンラインで人とつながることを切実に求めていたのです。しかし、病室のWi-Fi普及率はまだまだ低いのが現実。笠井さん同様、孤独感にさいなまれる入院患者が大勢いたことは想像に難くありません。実際、笠井さんが声を上げたことによって、みるみる賛同の輪が増幅。病院にフリーWi-Fiを導入することの大切さについて考える人が増えた結果、なんとわずか数か月後の4月14日、厚生労働省から、新型コロナウイルス感染拡大防止のための補助金の項目に「病室の患者用Wi-Fi開設費用」が含まれたことが発表されたのです。異例のスピードで国が動いたのは、それだけ切実なニーズがあったことの証拠。そこで今回は、笠井さんの体験談を伺いつつ、開設費用申請方法をご紹介していきます。

コロナ禍の病院では、患者が外の人とつながる手段はインターネットのみだった

入院中は、メールやSNSで人とのつながりを実感。時には動画視聴で笑って免疫を上げることもあった

▲入院中は、メールやSNSで人とのつながりを実感。時には動画視聴で笑って免疫を上げることもあった

――まずは、当時のインターネット利用状況について教えてください。

わたしが入院したのは2019年12月19日。その約10日後に、武漢市で新しいウイルスによる感染症が広まっているというニュースが流れてきました。それでも最初の1か月くらいは日本にいるわたしたちには影響がなく、友人や知人がたくさんお見舞いに訪れてくれたので、抗がん剤治療の苦しさが和らいでいました。

しかし、年が明けて2月には自粛要請が出されて見舞客はいなくなり、さらにその後、一回目の緊急事態宣言が出てからは家族にも会えなくなりました。そうなると、外の人とつながる手段はインターネットのみ。しかし、わたしが入院していた病院はフリーWi-Fiが完備されていなかったので、スマホを使うときには自分のデータ通信を利用していました。

フリーWi-Fiがなければ、「人とつながりたい」という当たり前の欲求さえ叶えられない

――そうすると、インターネット接続料はかなり高額になったのではないですか?

前月までと比べて1万円近くのアップでした。

それでも、「人とつながりたい」「孤独感を解消したい」という想いが強かったし、他の入院患者さんも同じだと思っていました。しかし、その後「#病院WiFi協議会」活動するようになり、入院経験者にアンケートを取ったところ、入院中はスマホの利用を我慢したという人が非常に多かった。なぜかというと、入院費用も高額で家族に金銭的負担をかけているのに、スマホのギガを追加したいだなんてとても言えなかった、と。

そうした方々は、わたしたちが協議会として活動をはじめたことで、「病院に対して、無料Wi-Fiを使えるようにしてほしいと想いを伝えていいんだ!」ということにはっとさせられたと仰っていました。そのくらい、みんな我慢していたんですよ。

病室でWi-Fiが使えないなんておかしい!と感じていた人は実はたくさんいた

――入院経験者でないと気づきにくいことだからこそ、当事者が声を上げたことが、みんながその問題を考えるきっかけになったのですね。

入院経験のない方に、「病室ってフリーWi-Fiに接続できないの?」と驚かれたこともあります。ロビーなら使える病院もあります。入院をしないと病室では使えないということにまで目が向かないですよね。退院後にこの経験を、日本骨髄バンクの設立者である大谷貴子さんに話したところ、「そうなのよ! わたしも病室でフリーWi-Fiが使えないのは不便だと思っていたの」と同意してくださって。しかも、「こないだも国連の秋山さん(国連アジア太平洋経済社会委員会 社会問題担当官 秋山愛子さん)とその話をしたばっかりなのよ」とも。

こうなるともう、本格的に活動するしか手はありません。

さっそく仲間を募り、「CILふちゅう」代表で筋ジスプロジェクトメンバーの岡本直樹さんや、慶応義塾大学特任教授の川森雅仁さん、NPO法人「キャンサーネットジャパン」常務理事の古賀真美さんなどさまざまなバックグラウンドを持つ8人で「#病院WiFi協議会」として活動をスタートするにいたりました。それが、2021年1月のことです。

SDGsのスローガンは「誰一人として取り残さない」なのに、コロナ禍で入院患者は取り残されていた

「オンラインお見舞い同窓会」では気の置けない仲間たちにたくさん笑わせてもらったという

▲「オンラインお見舞い同窓会」では気の置けない仲間たちにたくさん笑わせてもらったという

――わずか2か月の間にたくさんの人がこの問題を知るところとなりました。

こんなに広まった要因のひとつとして、孤独・孤立問題の担当相に坂本哲志大臣が任命されたことが挙げられると思います。コロナ禍となったことで「孤独」「孤立化」が浮き彫りになり、この問題を解消しなければということで大臣が決まったことは大きなニュースになりました。

そもそもコロナと関係なく、オンラインでもっと外とつながりたいと願っていた入院患者はたくさんいたのです。それに加えて、コロナで病院に家族や友人がお見舞いに行けなくなっていたので、「入院患者の孤立化」を訴えるのは今だと思いました。就任後には、さっそく坂本大臣のもとに陳情に行きましたが、このとき活躍してくれたメンバーが、「医師の働き方を考える会」共同代表の中原のり子さんです。

中原さんは、医師だった旦那さんが過労死されたことから、過労死防止基本法を制定するために永田町を駆けずり回った経験があるので、すごく頼もしかったです。陳情を進めていくなかでも多くの人に話したのですが、昨今、SDGsは世の中に浸透してきて、いろんな企業がこの問題に取り組んでいますよね? このSDGsのスローガンは、「誰一人として取り残さない」。なのにコロナによって病室の患者さんたちは取り残されているんです。そのことに、厚生労働省や、Wi-Fiを管理している総務省が気づいていなかった。

もちろん、コロナ禍の大変な中、ほかにも解消しなければいけない問題は山積みだったと思います。それもあって、病室の患者さんの孤立に気づいているのは、患者本人とそのご家族、そして看護師さんばかりだったんです。

ひとりがんばる小児がん患者を笑顔にすることも、コロナ禍でお見送りすることも、Wi-Fiがあればできること

――「#病院WiFi協議会」にも、看護師さんからの声が届いていますか?

看護師さんからもご意見をいただいています。特に、小児病棟に入院しているお子さんたちをみてこられた方からのご意見は大変貴重なものでした。小児がんをはじめとするお子さんたちは、コロナ前には、お父さまお母さまが24時間体制で付きっ切りで見守っているケースが多かったそうですが、感染症対策のために面会時間が激減。

しかも、がん患者のお子さんは特に感染には気を付けないといけないから、院内学級も閉鎖されてますます孤立することになっていくことを、看護師さんたちは目の当たりにしていたのです。そして、そうした状況になったときに何が救いかというとインターネットなんです。

一回目の緊急事態宣言のころを思い出してほしいんですけど、テレビをつけても1日中コロナ関連のことをやっていましたよね?しかも、子どもが楽しめるような番組はゴールデンタイムにならないと始まらない。お笑いは深夜。じゃあ子どもたちはどうやって楽しめばいいの?と思いますよね?

その答えが、オンラインゲームやYouTubeの動画鑑賞なんです。男の子は電話でベラベラ喋ったりすることはないけど、オンラインゲームでなら「行け行けー!」と友だち同士盛り上がることもできる。でも接続料が高ければ、そんなふうに気軽に楽しむことさえできないんです。そしてもうひとつ注目してほしいのは、看取りの現場です。もう長くないとわかっているのに、面会できないだなんてあってはならない。Wi-Fiを使って映像でつながることで、声かけもしてあげたいですよね。

経済的に個室を選べない患者に、「ギガ増量は自己負担」では冷たすぎる

――とても大切なことなのに、実現に向けてすぐにでも状況が変わっていかなかったのはなぜなのでしょうか?

ひとつには、お医者さんたちは、命を救うこと、病気を治すことを第一に考えているから気付きが遅れていることが考えられます。国会議員の先生方も、入院することはあっても、Wi-Fi環境の整った特別室に入るから、大部屋で過ごしている人たちが困っていることには気づきにくい。だけどそれっておかしな話ですよね。「お金がない人は、自分でギガを増量しましょう」って言ってるわけですから。

また、かつてはWi-Fiの電波が医療機器に影響を与えると信じられていたことも、病院でフリーWi-Fiが浸透していない理由のひとつですが、これに関しては、研究の結果、ほぼ影響がないことが証明されています。それでも、電波環境協議会の調査によると、病院スタッフがインターネットに接続するためにWi-FIを導入している病院は8割を超えているのに対して、患者がそのWi-Fiに接続できる病院は3割未満。しかも、そもそもこの調査は毎年のように継続的におこなわれているものなのに、入院患者のWi-Fi環境については、「そちらの病院では患者にWi-Fiを開放していますか?」という1問だけなんです。

これからは、Wi-Fiが使えるかどうかも病院選びの一つの大きな基準になる

――そんななか、いち早くフリーWi-Fiを導入している病院は、それだけでも患者からの評価が上がりそうですね。

Wi-Fiの大切さにいち早く気づいている開業医のみなさんは、自院サイトでも「うちはWi-Fiを完備しています」と謳っていますが、その重要性に患者側もまだ十分には気づいていないのが現状です。

これまでは、病院を選ぶときの条件に、Wi-Fiを完備しているかどうかをピックアップしている人自体少なかったはず。だけど、コロナ禍を経験したことでだんだんとみんな気づき始めているし、特に再入院の患者さんなんかは、Wi-Fi基準で病院を選ぶようになってきたと聞いています。そうはいっても、無料で導入できるわけじゃないから、病院側に無理にお願いするわけにはいけません。コロナ対策でお金がかかっていることもみんなわかっています。

だからわたしたち「#病室WiFi協議会」では、各病院やクリニックではなく、厚生労働省に対して、「国の政策としてWi-Fi導入支援に予算を充ててほしい」とお願いしてきたのですが、その結果、去る4月14日に、新型コロナウイルス感染拡大防止のための補助金の項目に、「病室の患者用Wi-Fi開設費用」が含まれることとなったのです。永田町でのロビー活動に力を入れてきた甲斐があったなと思いました。また、坂本哲志大臣だけでなく、厚生労働省の三原じゅん子副大臣がとても積極的に動いてくれたことにも感謝しています。

補助金申請は9月末まで! 「#病室WiFi協議会」トップページからも申請書DLが可能

――新型コロナウイルス感染拡大防止のための補助金ということは、早めに申請した方がよさそうですね。

申請期間は9月末までなので、まだ患者用Wi-Fiを導入していない病院には、ぜひ期間中に申請してほしいです。電子カルテを使うためなどで業務用のWi-Fiを導入しているという病院は約8割に上るそうですが、特にその8割の病院に関してはITのリテラシーも低くないはずなので、補助金で導入できる貴重なチャンスを逃してほしくないです。

もちろん、近い将来は、こうした設備投資の考え方がニュースタンダードになるはずなので、残り2割の病院も少しずつでも、患者用Wi-Fi導入を検討していってほしいです。国が予算化したということは、入院患者にとってWi-Fiは、孤立化を防ぐために必要だということ。とはいえ、患者の命を救うことで逼迫した状況にある病院にとっては、Wi-Fi導入は二の次で当たり前。補助金も他に必要なものから充てていって当然です。

ですが、補助金はコロナが蔓延しているエリアにもそうでないエリアにも一律で出るので、今のうちに患者用Wi-FI導入を実現化できそうな病院は、ぜひ動き始めてほしいです。「#病室WiFi協議会」のトップページにも、申請書のダウンロード先へのリンクを張っているのでぜひご覧になってください。

――ひとつでも多くの病院が補助金を患者用Wi-Fi導入に役立ててくれたらいいですね。

心からそう願っています。しかし、わたしたち「#病室WiFi協議会」の最終目標は、国に、Wi-Fi開設のための固定予算をとってもらうことです。コロナ対策費ではなく平場に置いて、いつでも申請できて全額フォローしてもらえるようにすることが目標です。

障がいを持っている方もそうでない入院患者も、誰一人取り残されない未来のために

――病院でのICTは今後もどんどん変わっていくことが予想されます。

最近、タブレット端末を利用した手話通訳がはじまったことをニュースで見聞きした人も多いかと思いますが、Wi-Fi設置も法律化できるといいなと思います。障がいを持った方もそうでない入院患者も等しく、SDGsの概念通り、誰一人取り残されていない世界を目指していきたい。インターネットの環境を改善していくことで、一人ひとりが助け合える未来が訪れたらいいなと願っています。

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