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診療圏調査の見方と注意すべきポイント

診療圏調査の見方と注意すべきポイント

診療圏調査の見方と注意すべきポイント

診療圏調査をご存じでしょうか。クリニック開業に欠かせないものとなった診療圏調査ですが、その詳細についてご存じでない方も多いのではないかと思います。

そこで本コラムでは診療圏調査の見方や診療圏調査における注意すべきポイントをご紹介します。

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診療圏調査とは

診療圏調査とは、一言でいうと開業予定地が有望であるかどうかの立地調査です。
自院への患者の来院が予測されるエリア(これを診療圏といいます。)の人口と受療率を元に診療圏内の総患者数を算出。これを診療圏内に存在する競合(他のクリニックや病院)で按分することにより自院への来院患者数を予測します。このように、診療圏調査の考え方は難しいものではないため、開業を予定する医師自身で診療圏調査を行うことも可能です。しかし算出元のデータの収集には手間と時間がかかるため、多忙な医師にとって簡単なことではありません。

一般的な診療圏調査の手順

そのため、医師の要望に対応するため、診療圏調査専用のシステムを導入し、開業支援を行う事業者もあります。開業を計画する医師は、そのような事業者に診療圏調査の依頼をするのが良いと思います。

診療圏調査のポイント

統計データ「夜間人口と昼間人口」

診療圏調査では国勢調査の人口を使用し患者数の算出を行うことが一般的ですが、通常、この場合の国勢調査とは夜間人口を指しています。夜間人口は居住地における人口を調査した統計であるため、住宅地に開業する場合の診療圏調査に用いるには最適といえます。しかし、就業者は日中、勤務先へ移動しているため、駅前やオフィス街など、居住人口の少ない開業予定地について夜間人口を用いた診療圏調査を実施しても、思うような予測来院患者数にならないことがあります。

このような事態を回避するためには「昼間人口」を用いた診療圏調査を行う必要があります。

「昼間人口」は夜間人口を元に、就業者等の移動を加味した統計データです。そのため、就業者は勤務先のエリアに算入されており、前述の駅前・オフィス街などの調査に最適な統計といえます。開業予定のクリニックの立地や、どのような患者層をターゲットとするのかに応じて診療圏調査に用いる人口統計データに気を配る必要があります。

統計データによる来院患者数予測の違い

統計データによる来院患者数予測の違い(東京駅付近の診療圏調査例)

競合強度

診療圏調査では診療圏内の患者数を競合クリニックで按分することで、自院への来院患者数を算出しています。一般的な診療圏調査では患者数は均等に按分されている場合が多いのですが、現実では競合の集患力は一定ではありません。評判の良い医師がいる、最新の医療機器を備えているなど、集患力の強い競合クリニックがあることや、逆に跡継ぎのいない閉院予定のクリニックなど集患力の弱い競合もあるため、診療圏調査を実施するためには競合の集患力を考慮する必要があります。そこで、競合毎に「強度」を設定し「強度」に応じた比率で患者数を按分することで、集患力を診療圏調査に反映させることが可能になります。競合の集患力を設定するには、現地に赴き自身の目と足で確かめることが一番ですが、競合の「駐車場の有無」「専門医資格」「外来患者数」「診療時間」など、競合医院の集患に関連する情報も参考になるでしょう。

また、競合情報が何年も前のものであった場合、診療圏内に思わぬ競合が居た、などの事態にならないよう診療圏調査の際には競合情報の鮮度についても確認する事が重要です。

競合強度設定の例

競合度設定の例

競合情報の例

競合情報の事例

来院患者数と診療圏内人口

希望する開業地で診療圏調査を実施した結果、良好な来院患者数が見込めない場合であっても、条件によっては開業の可能性が残っていることがあります。例えば、診療圏内の人口や総患者数が多い場合や、競合の来院患者数が多い場合などは医師の手腕次第で競合からの患者流入が見込めます。何故なら、競合において来院患者数が多いということは、待ち時間が長く患者さんが不満を持っている可能性があるからです。医師こだわりの物件など、来院患者数が思わしくない場合であっても、診療圏全体をより詳しく調査してみることで、開業の可能性を見いだせるかもしれません。

来院患者数が同一で競合数・人口が異なるエリアの例

来院患者数が同一で競合数・人口が異なるエリアの例

人口世帯特性

開業後安定した集患を実現するためには、患者ターゲット層の選定や自院のコンセプトの検討が重要です。そこで活用できるのが人口・世帯特性表です。診療圏によっては同程度の人口総数であっても年代や世帯の構成が異なることがあります。

例えば、子供や若年層が多いエリアであれば、明るい内装にすることや駐車場を設置することなどの対策が考えられます。また、医師の経歴にもよりますが、開業予定の科目に合わせて小児科を標榜することなども来院患者増加につながる可能性があります。一方、高齢者の多いエリアであれば、バリアフリーで高齢者に優しい内装にすることや送迎を実施するなどの、エリアの人口特性に応じたサービスによる、来院患者数の増加が見込めます。

診療圏調査の結果、同程度の予測来院患者数の物件があった場合、自院のコンセプトに合う開業地を選択すること、また開業後の集患対策を検討する際にも診療圏内の人口・世帯特性表が役に立つでしょう。

人口・世帯特性の例

人口・世帯特性の例

おわりに

これまでご説明してきたように診療圏調査は統計データを用いた計算の結果ではありますが、開業地探しの手助けとなることがお分かりいただけたと思います。また診療圏調査は来院患者数を算出するだけのものではありません。診療圏調査で判明した人口属性から医院のコンセプトやサービスを検討する際にも参考指標として大きな意味を持ちます。

これらのポイントに注意しながら、納得のできる開業地を見つけるために診療圏調査をご活用ください。

出典元:株式会社 ワイ・ビー・シー(http://www.ybco.co.jp/

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