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日本初の原発性腋窩多汗症用外用剤「エクロックゲル」。込められた思いと今後の展望をメーカーに聞く

日本初の原発性腋窩多汗症用外用剤「エクロックゲル」。込められた思いと今後の展望をメーカーに聞く

日本初の原発性腋窩多汗症用外用剤「エクロックゲル」。込められた思いと今後の展望をメーカーに聞く

2020年11月26日に、原発性腋窩多汗症治療剤「エクロックゲル5%」が発売されました。同剤は、日本では初となる原発性腋窩多汗症用の外用剤。1日1回両脇に塗るだけという簡便さが特徴で、これまでに同じような薬がなかったことから大きな注目を集めています。今回は、「エクロックゲル5%」の製造販売を行っている『科研製薬株式会社』に、「エクロックゲル5%」が持つ意義や込められた思いを伺いました。

日本初の原発性腋窩多汗症用外用剤「エクロックゲル」。込められた思いと今後の展望をメーカーに聞く

2020年11月26日に、原発性腋窩多汗症治療剤「エクロックゲル5%」が発売されました。同剤は、日本では初となる原発性腋窩多汗症用の外用剤。1日1回両脇に塗るだけという簡便さが特徴で、これまでに同じような薬がなかったことから大きな注目を集めています。今回は、「エクロックゲル5%」の製造販売を行っている『科研製薬株式会社』に、「エクロックゲル5%」が持つ意義や込められた思いを伺いました。

原因が分からない脇の多汗に有効

――「エクロックゲル5%」について教えてください。

本薬について説明するに当たり、まずは対象疾患である「原発性腋窩多汗症」についてお話ししたいと思います。原発性腋窩多汗症は、腋窩に大量の発汗を生じる疾患です。衣服の選択が制限される、頻繁な衣服の交換やシャワーが必要になるなど、患者さんの日常生活に支障を来します。

他にも、多汗を恥ずかしいと感じ、精神的な苦痛を受ける患者さんも多く、対人関係に支障を来すことや労働生産性が低下することも示唆されています。厚生労働省の「難治性疾患克服研究 特発性局所多汗症研究班」が平成21年度(2009年)に実施した疫学調査では、日本における本疾患の有病率は5.75%であることが明らかになっています。

――なぜ脇の汗が多くなるのでしょうか?

多汗症の種類は、原因が分かるものと分からないものがあります。他の病気や障害が原因の場合は「続発性多汗症」、原因がないにもかかわらず脇に大量の発汗を生じる疾患を「原発性多汗症」と呼び、このうち脇に多汗が生じるものを「原発性腋窩多汗症」と呼んでいます。

――「エクロックゲル5%」は原発性腋窩多汗症にどのように作用するのでしょうか?

多汗症の原因は「汗」ですが、汗を分泌するエクリン汗腺は、交感神経により調節されています。アセチルコリンという物質が、エクリン汗腺のムスカリン受容体サブタイプ3(以下、M3)を刺激することにより発汗を誘発すると考えられています。

「エクロックゲル5%」は、ソフピロニウム臭化物という成分を含んでいます。この成分が、M3を介したコリン作動性反応を阻害することで、発汗を抑制することが期待できます。科研製薬では、原発性腋窩多汗症患者を対象とした7つの国内臨床試験を実施し、2020年9月に「原発性腋窩多汗症」を適応症として製造販売承認を取得。2020年11月に発売に至りました。塗布具(アプリケーター)により薬液に触れずに塗布できることや、1日1回、両腋窩への塗布で効果が期待できるなど、手軽さも本薬の特徴です。

患者だけでなく医療機関側も治療法の選択肢が増える

――日本初となる、保険適応の原発性腋窩多汗症外用剤「エクロックゲル5%」ですが、本薬が持つ「意義」はなんでしょうか?

原発性腋窩多汗症の患者さんは、「周囲の目が気になって集中力が低下してしまう」「汗染みが目立つ素材や色の衣服を着られない」などの悩みを抱えているといわれています。しかしながら、原発性腋窩多汗症の治療選択肢は十分にあるとはいえない状況でした。本疾患に対する治療の第1選択の塩化アルミニウム外用療法は、保険適用がなく、院内製剤が処方されており、新しい外用薬が望まれていました。今回、本薬が日本初の保険適用の原発性腋窩多汗症用外用剤として承認されたことで、薬剤の調製の必要もなくなり、保険も適用されます。原発性腋窩多汗症治療の「選択肢が広がること」で、困っている患者さんのさらなる助けになればと考えています。

――本薬の登場によって、原発性腋窩多汗症の治療はどのように変わるでしょうか?

「治療のハードルが下がる」のではないかと思います。繰り返しになりますが、第1選択の塩化アルミニウム外用療法は、保険適用がなく、各病院が院内製剤として処方していました。つまり、処方する際には別途薬剤の調整が必要になります。そのため医療機関によっては処方自体を行っていない場合もあり、治療を受けられる施設が限られているのが現状です。しかし、「エクロックゲル5%」は保険適応であり、今まで塩化アルミニウムを処方できなかった医療機関においても、腋窩多汗症の治療を行うことができるようになるのではと考えます。

――患者側だけでなく医療機関側も選択肢が広がるのですね。

そうです。もう一つは、多汗症の認知が進むと考えます。弊社では、「エクロックゲル5%」を発売している他に、「ワキ汗治療ナビ」というサイトを立ち上げるなど、原発性腋窩多汗症の疾患啓発活動も実施しております。この疾患啓発活動を通して、「もしかして私は多汗症かも?」と思った患者さんが医療機関を受診し、診療を受けることで疾患自体の認知も進むと考えます。

ワキ汗治療ナビ

今後は脇以外の多汗にも対応したい

――「今後の展望」を聞かせてください。

まずは患者さんに原発性腋窩多汗症の治療法があることを知っていただきたいです。原発性腋窩多汗症に悩んでいる人は、QOLが著しく障害されているものの、実際に病院を受診している人の割合はわずか6.3%という報告もあります。

――悩んでいる人は多いものの、病院に行っていない人が多いということですね。

そのような状況です。ですので、脇の多汗で困っている患者さんに「治療法があること」を知っていただき、その悩み解消のための選択肢として「エクロックゲル5%」が貢献できるのではないかと考えています。

「エクロックゲル5%」は現在まだ腋窩のみでの適応ですが、掌蹠(しょうせき)からの多汗でも悩んでいる多汗症患者さんも多くいます。そうした幅広い多汗の悩みを解決するためにも適応拡大も視野に入れています。多くの困っている患者さんを笑顔にするために、「エクロックゲル5%」を通して貢献したいと思います。

――ありがとうございました。

日本人の約6%が有している「原発性腋窩多汗症」ですが、まだまだ認知度が低いことが課題だそうです。「脇汗が多いな……」と悩んでいながらも、治療できることを知らない人も多いかもしれません。多汗の悩みを解決するには、科研製薬のような医薬品メーカーによる啓蒙活動だけでなく、クリニックでも症状の説明や治療法があることを広めるなど、認知活動を行うことが求められるでしょう。

取材協力:『科研製薬株式会社』

ワキ汗治療ナビ

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