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開業医が産業医になるにはどうすればいい?

開業医が産業医になるにはどうすればいい?

220608

開業医として独立した暁には、産業医としても活躍したいと考えている人は多いかもしれません。そこで今回は、産業医になるためにはどんな手順を踏むことが必要であるのかを解説していきます。

産業医とは?

まずは産業医が担う役割を説明します。産業医とは、事業場で働く労働者が、健康で快適な作業環境のもと業務に従事することができるよう、専門的立場から指導や助言をおこなう医師のことです。

産業医になるには?

産業医になるための条件は、安衛則(労働安全衛生規則)第13条第2項によって「労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める一定の要件を備えた者でなければならない」とされています。また、「一定の用件」は以下の通りに定められています。

(安衛則第14条第2項)

  • 1.厚生労働省が定める産業医研修を修了している者。日本医師会認定の産業医学基礎研修、産業医科大学の産産業医学基本講座などがこれに該当します。
  • 2.労働衛生コンサルタント試験(試験区分保健衛生)に合格した者のうち、試験区分が「保健衛生」である者
  • 3.大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授または常勤講師の職にある者、またはあった者
  • 4.産業医の養成などをおこなうことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学またはその他の大学で、厚生労働大臣の指定通り、当該課程を修めて卒業した者であって、その大学がおこなう実習を履修した者
  • 5.その他、厚生労働大臣が定める者
  • このなかでももっとも一般的なパターンは、1つめに挙げた「日本医師会または産業医科大学の研修を修了して、資格を取得する」という方法です。

    日本医師会認定の産業医学研修の場合、50単位以上修了するか、もしくはそれと同等以上の研修を修了することが必須です。修了後には日本医師会認定産業医の称号と認定書が付与されますが、有効期間は5年間。その後は、産業医学生涯研修を受けて資格を更新することになります。

    一方の産業医科大学では、毎年4月から約2か月間にわたって産業医学基本講座を開催。同校出身でなくとも受講が可能です。または、夏期に開催される6日間の集中講座「産業医学基礎研修会集中講座」を受講することでも、認定証を付与してもらえます。

    資格を取得したらすぐに産業医として働ける?

    産業医の資格を取得したら必ずしもすぐに産業医としての働けるとは限りませんが、産業医の選任が必要な事業所が全国に約16万件あることから、産業医のニーズは高いといえるでしょう。具体的には、「労働者数50人以上3,000人以下の規模の事業所」では1名以上の選任が必要で、「労働者数3,001人以上の規模の事業所」では2名以上の選任が必要です。また、常時1,000人以上の労働者を使用する事業所および下記のいずれかに該当する業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業所では、その事業所に専属の産業医を選任することが必要です。

  • 1.多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 2.多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • 3.ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
  • 4.土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 5.異常気圧下における業務
  • 6.さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
  • 7.重量物の取扱い等重激な業務
  • 8.ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • 9.坑内における業務
  • 10.深夜業を含む業務
  • 11.水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  • 12.鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  • 13.病原体によって汚染のおそれが著しい業務
  • 14.その他厚生労働大臣が定める業務
  • 参照:産業医について~その役割を知ってもらうために~

    産業医の働き方は2タイプ

    産業医の働き方は2通りあります。1つは「専属産業医」。その企業の専属医師として、従業員の健康管理に従事する医師のことです。基本的に、たとえば9時~17時など毎日決められた時間に出勤することになります。

    また、契約している企業を週に1回程度訪れ、職場巡視や従業員の面接をおこなう「嘱託産業医」もいます。嘱託産業医の多くは、本業の傍ら契約企業の巡回もおこなっており、なかには複数の企業と契約している医師もいます。

    産業医数の推移は?

    産業医のニーズは高いとはいえ、産業医の総数自体増え続けていることもあり、特に東京23区のオフィスワーク系企業の専属産業医などは人気が高く、なかなかその地位に就くことは難しいとされています。日本医師会が公表しているデータによると、2018年11月時点における日医認定産業医の総数は9万9,799人。1990年代より、毎年平均2,335人程度が資格を取得しています。そのため、より理想に近い職場で働きたいなら、資格を取得するだけでなく、企業に対して自分を積極的に売り込むなどの工夫が必要でしょう。

    参照:日本医師会「世代別・男女別認定産業医の割合」

    自分の専門性を活かした売り込み方を考えるのもアリ!

    また、何科の医師でも産業医として働くことは可能ですが、従業員のメンタルケアも重要視されている昨今は、精神科医のニーズが高まっています。ただし、今後は、たとえば化粧品を扱う企業なら皮膚科医、目の健康を守る製品を開発している企業なら眼科医など、企業ごとに重宝される専門家が特化していく可能性も高いと考えられます。そのため、たとえば自分を売り込みに行くにしても、自分の専門性を活かして従業員をサポートできることをアピールするといいかもしれません。

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