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これからの患者満足度を実現する診療支援システムとは

これからの患者満足度を実現する診療支援システムとは

これからの患者満足度を実現する診療支援システムとは

新型コロナウイルス感染拡大以降、患者の受診行動・意識は大きく変化しました。日本医師会が実施した調査※1によると、診療所における外来診療の総点数は、3月の前年同月比で10.2%減、4月の前年同月比で17.0%減と大幅な減収となっています。不要不急の外出を控えることは受診控えにもつながり、医療機関にとって厳しい時代を迎えたと言わざるを得ません。

2020年6月に弊社が行った一般消費者向けのアンケート調査※2では、新型コロナウイルス感染症の流行期に医療機関を受診することに抵抗はあるかと聞いたところ、72%の人が「抵抗がある」と回答しました。特に、女性や子どもがいる人はその傾向が強く、8割の人が「抵抗がある」と回答しています。感染リスクを回避するために、受診を控えたいという意向は根強く、患者をどうやって呼び戻すかということに頭を悩ませている医療機関経営者はとても多いのではないでしょうか。

with/afterコロナといわれるこの時代、患者は何を求めているのかというところを改めて見つめ直す必要があるように感じます。そこに患者を呼び戻すためのヒントが隠れているかもしれません。

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with/afterコロナ時代の患者満足度とは

2015年3月に弊社が行った一般消費者向けのアンケート調査※3では、医療機関を選ぶ際に最も重視するのは「家や職場からの近さ(80%)」、次いで「自分が受診する診療科目の専門性の高さ(41%)」でした。さらに、医療機関を変えたいと思う理由で多かったのは、「待ち時間の長さ(34%)」、「医師の対応・態度(27%)」という結果になりました。

この調査結果からわかることは、従来(コロナ以前)の患者満足度とは、①通院しやすく、待ち時間が短いこと(=受診の容易性)。そして、②専門性の高い医師が丁寧に対応してくれること(=医師の満足度)の2点であったといえます。

ここで、2020年6月の調査に話を戻しますが、コロナ流行期に医療機関に求める対応として、「院内でどのような感染対策を行っているのかが事前にわかる」「院内での滞在時間が短い」「待合室の混雑状況がわかる」という順で回答割合が高くなりました。

コロナ以降、③感染対策をしっかり行っていることが、患者満足度の新たな観点として加わったことになります。

さらに、オンライン診療・電話診療に対しても、患者側は好意的に捉えています。弊社調査では「利用したことがある」人は5%に留まったものの、70%の人は「必要があれば利用したい」と回答しています。(2020年6月弊社調査より)

外来に来てもらうことだけだった診療スタイルが、コロナによって多様化してきています。感染対策としてオンライン診療や電話診療を求める患者、院内の感染対策を知りたいと考える患者、ほかの患者と居合わせないように予約できる医療機関を希望する患者といったように、患者が医療を受ける行動=患者アクセスは複雑に変容しているといえるでしょう。

患者満足度の新たな観点である③感染対策をしっかり行うということは、この患者アクセスの多様化にいかに応えるかということにかかっているといえるのではないでしょうか。

つまり、これからの患者満足度とは、以下の3点に集約されると考えられます。

  1. 通院しやすく待ち時間が短いこと=受診の容易性
  2. 専門性の高い医師が丁寧に対応してくれること=医師の満足度
  3. 感染対策をしっかり行っていること=患者アクセスの多様化への対応

新しい患者満足度を実現する診療支援システムとは

前段で述べた①②③の患者満足度をどう実現していくか、また、新しい③の観点をどのように取り入れていくかということについて、活用できる診療支援システムをいくつかご紹介したいと思います。

WEB問診

2018年頃からクラウド型WEB問診システムの市場が拡大しています。患者自身のスマホを利用して、来院前に自宅や職場から問診を入力してもらい、医療機関側は事前に詳細な症状を確認してから診察を行うことができるというシステムです。

待ち時間の短縮につながる

まず、待合室で問診票を記入してもらう必要がなく、電子カルテと連携することで患者の問診結果を電子カルテに取り込む(コピー&ペースト)ことができるため、診察までの時間を短縮することができます。また、紙の問診票と違って、主訴に応じてWEB問診システムが質問を深堀りしてくれるので、看護師による予備問診の時間も短縮することができます。

電子カルテ入力や問診の手間が削減される分、患者説明に時間をとることができる

医師は診察開始前に詳細な症状を確認できるため、診察室での問診や電子カルテ入力の手間を省略化することができます。実は、多くの患者が医師に不満に感じる点は共通しており、医師がパソコンばかりを見て、説明する際にも自分の方を向かないということです。電子カルテの入力時間を短縮できる分、患者を見て説明することができるようになります。

事前トリアージによる感染対策、及び、オンライン診療や電話診療の問診に利用可

患者の来院前に詳細な症状が把握できるため、発熱等の感染リスクがある場合には、事前に電話連絡をして来院時間を指定したり、来院せずに保健所への相談を促したりという対応が可能です。ほかの患者やスタッフの感染対策につながります。あわせて、オンライン診療や電話診療で来院しない患者に対しても、WEB問診なら自宅で入力してもらえます。

補足

WEB問診を導入せずにオンライン診療等をすると、紙の問診票を記入してもらうことができないため、口頭で問診をする必要があり、通常の診療より時間がかかってしまうといわれています。

ホームページ

今やホームページをもつことが当たり前の時代となっていますが、コロナ以降、その価値が改めて見直されてきています。掲載する情報次第ではホームページも患者満足度に貢献できる診療支援システムだといえます。

待ち時間を開示することで不満を削減する

コロナ以降、多くの医療機関では、「受付の電話が鳴り止まない」という問題を抱えています。電話で「今日は診療しているのか」「待合室は混んでいるか」という問い合わせがあり、受付スタッフの手が回らないほどだといいます。診療をしていることや、混雑しやすい時間帯等をあらかじめホームページに掲載しておくことで、患者の不満は軽減されます。

患者の期待値を上げないことも重要

自分の症状はきっと診てもらえるだろうと思って来院したのに、医師の専門外で診てもらえなかったという場合、期待した分、不満は大きくなります。診療内容や医師の専門を明記しておくことで、できること/できないことの線引きをすることも重要です。特に医師の診療や治療に対する考え方を記載しておくとよいでしょう。

感染対策の取り組みについてPRする

前述の一般消費者アンケートにもあったとおり、「どのような感染対策を行っているのか」を事前に知りたいと思う患者は多くいます。待合室の椅子の配置の工夫や予約できる人数の調整、発熱外来は別に設けていること等、どんな些細なことでも発信しておくことで患者の安心感につながり、来院の動機づけになります。

患者アクセスツール

まだ聞き慣れない言葉ですが、「患者アクセスツール」という製品カテゴリが生まれつつあります。患者アクセスツールとは、ビデオ通話システム、電話、メール、SNS、LINE等の多様化する患者とのコミュニケーション手段を一元管理するシステムです。

コロナ以降、オンライン診療を導入する医療機関は非常に多いものの、そのシステムを利用することの難しさを痛感している先生方もまた多くいらっしゃいます。多様化する患者アクセスに対応していくことは必要なことではありますが、スタッフの手間が増えてしまうと、1人1人の患者対応に割ける時間は減ってしまうため、結局のところは患者満足度にはつながりません。

患者アクセスツールは、将来的には、GoogleMeetやZoomといったビデオ通話システム、WEB電話(ブラウザから発信できる電話システム)、メール、SNS、LINE等、私たちが普段よく使うツールをまとめて管理できるようになるといわれています。患者が日常生活で使い慣れているツールを医療現場でも活用することで、患者側への説明の手間が省けます。また、WEB問診や決済等とも連携することで、多様化する診療スタイルに手間なく対応できるようになると期待されています。

患者は通院のしやすさを考慮する必要がなく選択肢が広がる

これまでは通院のしやすさを考慮して、自宅や職場の近くで医療機関を探すことが一般的でしたが、通院せずオンライン診療で代用できるのであれば、患者の選択肢は広がります。これは裏を返せば、医療機関にとってはこれまでの診療圏を超えた集患も可能であり、増収も見込めるということです。

自由診療の医療相談や三者間通話にも対応できる

人口減少により、πとなる患者数は減少傾向にあります。そのため、1人の患者のロイヤリティを高めて、患者単価を上げることも今後は考えていく必要があります。禁煙外来や健康診断後のフォローアップ、自由診療前の医療相談等にも利用可能です。また、GoogleMeet等の汎用ツールであれば、複数拠点をつないだ通話もできるため、遠方からでも家族の付添が可能になります。

オンラインや電話診療に活用することで感染対策になる

感染リスクが高い人にはオンラインや電話診療として活用できます。これは患者側の話だけではなく、医療従事者も同様で、これまでは難しかった医療従事者の在宅勤務の手助けにもなります。たとえば看護師による予備問診や治療の説明等、これまでは院内でしかできなかった業務も、患者アクセスツール上のコミュニケーション手段を活用することで自宅からでも対応可能になります。

with/afterコロナ時代の患者満足度を改めて定義し、その実現のために活用できる診療支援システムについてご紹介しました。各システムは各社から販売されていますので、比較検討した上で、導入を決定されることをおすすめします。選定のポイントとしては、今回ご紹介したWEB問診、ホームページ、患者アクセスツールは、日々の診療に深く関わるものばかりです。導入時の費用のみで決めるのではなく、長く利用されることを想定して、月々のランニングコストやサポート体制についてしっかり確認していただければと思います。

最後に、冒頭で述べたとおり、今後の医療機関経営は決して楽観視できない状況だといえます。コロナが収束した後も、受診しないことに慣れきった患者行動を変化させることは至難の業ではないでしょうか。外来を開いて待つだけではなく、これからは医療機関側から積極的に患者に対してコミュニケーションをとる時代になっていくと考えられます。患者の下に出るべきということではなく、まずは「当院は診療していますよ」とか、「今日は比較的空いていますよ」といったような小さな発信から始めていただくことでも十分に効果はあると思います。どのような状況下でも、医療を必要とする人が、適切なタイミングで、正しい医療を受けられることが、日本の医療の素晴らしさです。これからもその素晴らしい医療体制が持続できる社会でありたいと切に願います。

出典

※1 「新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査(3〜4月分)」日本医師会 2020年6月日本定例記者会見にて発表
※2 「外来受診の意識変容に関する調査―新型コロナウイルスで受診行動はどう変わったか」 株式会社メディアコンテンツファクトリーによるインターネット調査、一般消費者対象(成人男女1200名)、2020年6月実施

※3 「医療機関受診に関する意識調査報告」 株式会社メディアコンテンツファクトリーによるインターネット調査、一般消費者対象(成人男女1200名)、2015年3月実施

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