クリニックには防犯カメラが必須? 費用はどのくらい?
クリニックを開業したら、防犯カメラは必ず設置したほうがいいのでしょうか? また、設置した場合、どのくらいの費用が必要となるのかも気になるところです。そこで今回は、クリニックの防犯カメラについて気になる点をまとめていきます。
クリニックに防犯カメラは必須? 設置したほうがいい理由は?
1. 外部からの侵入を防ぐ、侵入の記録を取る
クリニックには、防犯カメラを必ずしもつけないといけないということはありませんが、導入しているクリニックはとても多いです。なぜなら、クリニックは患者の個人情報を扱っており、守秘義務があるからです。たとえ、自分たちのミスによって漏洩させてしまったのではなく、侵入者に盗まれたとしても、流出の責任を問われることとなります。そのため、セキュリティに力を入れることが大切なのです。
また、2021年末には大阪・北新地の精神科クリニックに火が放たれる事件がありましたが、報道されるような大きな事件にはならなくても、患者のクレームや暴挙に悩まされているクリニックは全国に多数存在します。なかには、クリニックの人間の目の届かないところで器物損壊の犯罪行為に及ぶ患者もいるかもしれませんが、被害を受けても証拠がなければ相手を訴えることができません。万が一の場合に備えて、しっかりと映像を記録しておけば安心です。
ちなみに、実際のところクリニックへの侵入者は年間でどのくらいの数いるのかというと、政府の統計は以下の通りです。認知件数は減少傾向にあるものの検挙率はどの年も90%に届いていないので、各医療機関でもしっかりと防犯対策を取ることが必要です。
【医療機関への侵入犯(病院荒らし)の発生状況】
認知件数 | 検挙件数 | 検挙率 | |
2006年 | 2,205件 | 1,522件 | 69.0% |
2007年 | 1,934件 | 1,307件 | 67.6% |
2008年 | 1,530件 | 1,102件 | 72.0% |
2009年 | 1,423件 | 772件 | 54.3% |
2010年 | 1,631件 | 675件 | 41.4% |
2011年 | 1,740件 | 846件 | 48.6% |
2012年 | 1,342件 | 871件 | 64.9% |
2013年 | 1,101件 | 700件 | 63.6% |
2014年 | 977件 | 787件 | 80.6% |
2015年 | 898件 | 416件 | 46.3% |
2016年 | 719件 | 444件 | 61.8% |
2. 内部の人間による犯罪を防ぐ
防犯カメラを設置したほうがいいもうひとつの理由は、内部の人間による犯罪もないとはいえないからです。クリニックで働くスタッフはもちろん、出入りしている業者のスタッフなどによる犯行の可能性も100%は否定できません。
クリニックに防犯カメラを導入するとしたら、どこに設置すべき?
防犯カメラを設置したほうがいい場所は複数あります。
受付
受付には、患者の個人情報が入ったパソコンや会計用の現金があります。そのため、休診日や夜間の侵入者からはもっとも狙われやすい場所のひとつです。また、現金が収納されていることから、スタッフによる不正が起こる可能性も無きにしも非ずです。スタッフに疑いの目を向けるなんてできない……と考える人もいるかもしれませんが、そうした行動を抑止する意味でも、カメラを設置しておくことは大変有効なのです。
玄関および職員通用口
時間ごとの来訪者の情報を記録するためにも、入り口となる2か所には防犯カメラを設置したいところです。窃盗目的の泥棒であればそれ以外の侵入経路も考えられますが、受付のパターン同様、身内や業者、患者やその家族の出入りについてもきちんと記録しておくに越したことはありません。
同様に、更衣室の入り口にも設置して出入りを記録しておけば、更衣室内の盗撮や盗難を防ぐことにつながるでしょう。
薬品庫
転売目的で薬が窃盗されたというニュースを見聞きしたことがある人は多いでしょう。薬品のなかには、致死性の高いものや睡眠薬などもあるので、場合によっては大きな事件につながってしまう可能性もあります。万が一の事件を防ぐためにもきちんと管理することが大切です。
病棟
有床のクリニックであれば、患者になにかあったときに速やかに対処するためにも、特に夜間などは防犯カメラを作動させておけると安心です。ただし、患者のプライバシーに配慮することも考えると、設置する位置には工夫する必要があります。患者が入院している部屋に設置するとプライバシーの侵害になるため、廊下への設置が一般的ですが、それでも個人情報に触れることはあるため、閲覧者を制限するなどして管理を徹底することが大切です。
防犯カメラは購入とレンタルどちらが賢い選択?
防犯カメラは、購入ではなくレンタルを選択しているクリニックが多いです。故障や消耗品交換も保証されているメーカーで契約すると安心です。
ちなみに、購入の場合、カメラ本体の費用と設置台のほか、撮影した映像を記録するレコーダーなどの周辺機器を用意することも必要になります。そのため、初期費用が高くなります。一方、レンタルの初期費用は、契約料と一か月分の月額レンタル料金のみ。ただし月額利用料が継続的にかかることになります。
そのほか、リースという選択肢もありますが、リース期間が5年~7年の長期で設定されている場合が多いので、どの選択肢をとるべきか、見積を出したうえで検討するのがいいでしょう。
防犯カメラの映像は簡単に確認できる?
防犯カメラに写っている映像は、自宅や外出先からでもモニタリング可能です。たとえばALSOKの「ALSOK画像クラウドサービス」なら、レコーダーではなくクラウドにデータが保管されることになりますが、保管された映像はPCやスマホ、タブレットから簡単に確認できます。レコーダーの設置や設定が不要になると、初期費用や運用費を抑制できるのも大きなメリットです。
防犯カメラ以外のサービス利用も検討の価値あり
夜間の安全対策、院内の盗難やイタズラ・暴力防止対策を強化したいなら、防犯カメラと併せて、生体認証機器や金庫をはじめとするさまざまなソリューションを導入するのもおすすめです。
参照:SECOM 病院・クリニック(医療機器)向けソリューション
自作も選択肢のひとつ
精度が高い防犯カメラは、レンタルやリースにしてもそれなりにコストがかかりますが、自作であればコストを抑えることが可能です。自作の場合、webカメラを防犯カメラとして活用する方法が一般的ですが、起動させるために常にパソコンを接続しておく必要があります。また、パソコンに映像を映すためのソフトも必要です。マイクによる録音も可能な「iSpy」、指定したwebカメラが動きを検知したときに自動で録画、静止画のキャプチャをおこなってくれる「Security Eye」、最大で4台のwebカメラを監視カメラとして利用できる「Watcher」などのソフトがあるので、パソコン作業が得意な人は検討してみてもいいかもしれません。
参照:高精度なサービスをリーズナブルな価格で提供しているベンチャーも見逃せない!
防犯カメラ・クラウド動画サービスsafie(セーフィー)なら、カメラをインターネットにつなぐだけで、スマホやPCからいつでもどこでもクリアな映像を確認することができます。従来の防犯カメラの画質はVGAで30万画素であるのに対して、SafieはHD画質の100万画素。1秒間に最大30フレームで表示されるため、テレビと同じくらいなめらかな映像であるのが特徴です。
また、クラウドに保存された録画データは最新の暗号化技術によって守られているうえ、ユーザーやカメラが利用する通信経路も暗号化されています。必要なコストは、カメラ本体の料金(21,780円~)とクラウド録画の利用料(月額1,320円~)のみ。極めて気軽に導入できます。
ダミーカメラには防犯効果はある?
自作はハードルが高く、レンタルやリースにかける費用も最初のうちは渋りたいなら、ダミーカメラを設置するという手もあります。ダミーなのでもちろん録画することはできませんが、侵入や犯罪を未然に防ぐ効果は期待できます。安い物なら1,000円以下で手に入るので、最低限受付には設置することをおすすめします。
ただし、見た目にも安いものなどだと、ダミーであることがすぐにバレてしまう可能性は高いです。特に、窃盗常習犯などであれば、防犯カメラについても詳しいのは当然のこと。構造が本物と違いすぎたり、素材がプラスチックであったりと、常習犯にとっては笑ってしまうような造りのものもあるかもしれません。
また、電源がとれない位置や、防犯カメラの撮影範囲や距離に合っていない位置などに設置することもNG! 偽物であることがすぐにばれてしまいます。少なくとも、本物のカメラであればどこに設置するのが正解かを理解したうえで、設置する場所を決めることが必要です。
内部スタッフによる犯罪を防ぐためであれば、設置場所が適切でなくても騙せる場合もあるかもしれませんが、内部の犯罪を防ぐためには、カメラがダミーであることを口外しないことが大変重要です。「あのカメラって本物ですか?」と尋ねられるとうっかり口を滑らせてしまいそうになるかもしれませんが、防犯の精度を高めるためにも絶対に口を割らないようにしましょう。
スタッフを守るためにも防犯カメラを設置することが理想的
点滴への異物混入やカルテの改ざんなどが起きると、真っ先に疑われるのは内部の人間です。警察による捜査の結果、外からの侵入者による犯罪であることが明らかになる場合もあるかもしれませんが、無実のスタッフが罪を着せられる可能性もゼロとはいえません。スタッフを守るため、そしてスタッフの手を犯罪に染めさせないためにも、防犯カメラの導入を検討できたらいいですね。