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クリニックの内装工事「発注前に必須の基礎知識」とは?

クリニックの内装工事「発注前に必須の基礎知識」とは?

クリニックの内装工事「発注前に必須の基礎知識」とは?

これから開院しようと考えている医師にとって、クリニックの内装工事は大仕事です。全くの門外漢で初めてのことですから、どのように業者に相談したらいいのかから迷うことでしょう。

そこで今回は、内装工事を依頼する際の基礎知識について、医療施設の設計(建築・内装)を専門に行う『株式会社ラカリテ』の鈴木伸コーディネーターにお話を伺いました。

『医療法人社団慧心会 ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島』

↑『株式会社ラカリテ』の手掛けた『医療法人社団慧心会 ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島』

「設計・施工」と「設計・監理」に分かれます

――これから開院するという医師が内装工事を発注する際に知っておかなければならないことはなんでしょうか?

まず根本として、内装工事を行う工事会社は「設計・施工」と「設計・監理」に分かれます。「設計・施工」は「設計」と「施工」を一括で請け負う会社で以下のようなメリットがあります。

  • 設計から施工までがスムーズに行いやすい
  • 打ち合わせから施工までの期間が設計監理と比較すると早い

デメリットとしては、施主である先生自身が見積もりや図面の内容などをチェックしていただかなくてはなりません。

一方の「設計・監理」は基本「設計事務所」が設計を行い、実際の工事は別の建築会社が行います。一番のメリットとしては、

  • 設計者が施主の代わりを務めるため、検査・監理体制を厳格にできる

となります。

設計と工事が分かれているため、「工事請負契約」の他に「設計監理契約」も結ぶ必要があります。また、設計が全て決まってから、建築会社へ見積を依頼し、建築会社を選定するため、時間がかかってしまいます。急いでいる場合には向きません。

すぐ開業したい、規模感もそこまで大きくないというなら「設計・施工」の方が向いています。ちなみに弊社『株式会社ラカリテ』は、テナント開業の場合「設計・施工」、戸建て(建築)開業の場合「設計・監理」で行っています。

――それはなぜでしょうか?

大きな理由として、戸建ての場合、図面や見積書の枚数がテナント開業時より格段に増えます。先生がそれを一つ一つチェックするのは困難なことと思います。また、建築用語も知らないよりは知っている方がいいです。そのため、監理業務を行うようにしています。また、一般的に戸建て開業は都心部より地方の方が多いです。地域や地場にある建築業者さんに依頼する方が、何かあった時のメンテナンスが行き届きやすくなります。

――なるほど。そこは分業した方がいいわけですね。

建てて終わりではありません。やはりメンテナンスのことまで考えた方がいいです。

『大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック』

↑『株式会社ラカリテ』の手掛けた『大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック』

テナント開業の場合でも「6カ月」かかります

――時間はけっこう大事な要素だと思われますが、内装工事にかかる時間はどのくらいと考えればいいでしょうか?

一般的にですが、開業する場所が決まり、テナント開業の場合には6カ月、戸建ての場合には1年以上と考えておくのがいいでしょう。建築確認申請(戸建ての場合)や関係各所の確認や検査などもありますので、目安としてそれぐらいは見てください。

――ちなみに繁忙期はあるのでしょうか?

診療科目にもよりますが、春に開業したいという先生が多いので、前年の秋から冬にかけて依頼が増える傾向にあります。

規模感にもよるが「テナント開業」の場合は「設計・施工」がおすすめ

――「設計・施工」と「設計・監理」、どちらでいくかはどこで分ければいいでしょうか?

それは規模感によります。テナント開業の場合にはまず「設計・施工」の方がいいと思います。たまに、整形外科や健診センター、専門性に特化したクリニックとして100坪以上と面積規模が大きい場合がありますが、テナント開業の場合にはそれでも「設計・施工」の方がよいでしょう。

――なるほど。100坪でも「設計・施工」がいいのですね。

あくまでテナント開業の場合です。整形外科の場合100坪といっても半分がリハビリ室だったりしますので。もちろん診療科目にもよるわけですが。

見積もり内にあるものなら極端に価格が上がったりしない

――内装の色やデザインなどはどのくらい要望を出してよいものですか?

例えば、壁紙といわれる「ビニールクロス」は同じ金額で数多くの種類がありますのでどの色を選んでも同じ値段です。たまに「金額を安くしたいため白でいいよ」とおっしゃる先生がいらっしゃいますが、他の色にしても金額は変わりません。

では、何が変わると値段が変わるかというと、素材が変わった場合です。例えば、ビニールクロスの代わりにタイルにするとか、塗装や石にするなど素材が変化すると価格が上がります。

――なるほど。「壁はタイルにしたい!」などと素材を変更しなければいいわけですね。

どの会社さんでも同じかと思うのですが、こちらから出したお見積もり書を基に打ち合わせしていますので、その見積もりのグレード内にある変更であれば、基本価格が上がることはありません。もし上がりそうでしたら「先生こちらを使うと値段が上がってしまいます」など一声掛けたり「こういうのもありますよ」と提案を差し上げるようにしています。

「概算の見積もり」は精度に注意しましょう

――内装工事の仕事を発注する際には、まず見積もりを取ると思うのですが、「見積書」について注意する点はありますか?

相談を受けた業者からは「概算見積書」というものが出てきます。注意していただきたいのは、「概算見積書」は業者ごとに「こうだろう」という考えの下に作るという点です。例えば、3つの業者に見積もりを取ると、出てくる3つの概算見積書の精度は業者によってばらばらです。

同じ見積もりに見えて、実は仕様が同じではないのです。平面図が違うと概算見積書も違うものです。しかし、施主である先生はその金額だけを見て発注先を決めてしまいがちです。

――なるほど。

仕様を同じにして見積もりを取ることは事実上できませんので、表紙の金額ではなく、工事の大項目の内訳(仮設工事・電気設備工事など)を確認することが大事です。また、見積もりに何が入っていて、何が入っていないのかを確認する見積条件も重要となりますので確認してください。

「概算見積書」というのは、あくまでも「おおよそ」「あらまし」の見積もりです。大事な内容が入っていない見積書は、後で追加工事としてお金が大きくかかることもあります。

――どのような例がありますか?

例えば「X線室」です。医療関係をあまり手掛けたことのない工務店の場合には、鉛を用いた防護室(鉛防護工事)の見積もりが抜けていたりします。それを見逃して発注すると、その分後でお金がかかります。

ですので項目、中身を見てほしいです。もし、詳細が分からなければ「大項目」を見比べてみてください。「仮設工事」や「軽鉄・ボード工事」など同じまたは似たような項目で比較して極端に金額差が生じているところはないか、項目が抜けているところはないかなどをチェックするといいですね。

――表紙の金額だけで判断しないことは重要なのですね。

「あと何を足せばクリニックができますか?」と聞いてみるのもいいかもしれません。そこで出てくるものが見積もりに反映されていないのでしょうから。

『吉丸女性ヘルスケアクリニック』

↑『株式会社ラカリテ』の手掛けた『吉丸女性ヘルスケアクリニック』

とにかく「経験豊かな」会社を選ぶこと!

――伺っていますと、やはり医療施設を手掛けたことのある会社に頼むのがいいようですね。

そう思います。会社も重要ですが、担当者も同じくらい重要です。やはり、クリニックは特殊な施設ですし、ノウハウが必要です。幾つものクリニックを手掛け、長い経験を持つ会社(担当者)の方が間違いも少なく済みますし、修正も素早いです。また、できるならその会社の評判も確認した方がいいです。

――どのように確認するのがいいのでしょうか? ネットなどで調べるのでしょうか?

いえ、単純に医療業界(開業マーケット)にいる方に聞いてみればいいと思います。医療業界は狭いため、例えば、弊社のことでしたら、他の会社さんに相談した際に「『株式会社ラカリテ』ってどう思いますか?」などと聞いてみるわけです。

――そういう方法もあるのですね。

はい。医療業界で長くビジネスを行っていれば、他社についてきっとなんらかの評判が聞こえているでしょうから、ストレートに確認できると思います。

どこまで無料かを理解しておきましょう

――ぜひ未来のクリニック院長に内装工事についてアドバイスをお願いいたします。

私はやはり担当者が重要だと思います。クリニックの内装工事というのは、開業の際に一番か二番目にお金がかかるところです。ですから、担当者がどうも合わないと感じたら代わってもらうか、やめておいた方がいいと思います。後で大なり小なり問題が出てくるものです。

きちんとコミュニケーションの取れる担当者と一緒に仕事をされるのがいいと思います。例えば先生が「こうしてほしい」と言ったときに、「はい、分かりました」と言うだけではなくて、「こういう懸念がある」「こういう方法もある」という提案をしてくれる人であるかどうかです。

――内装工事もやはり「人」が大きな影響を与えるのですね。

また、どこまで無料で行ってくれるのかも確認しておくといいですね。

――例えば見積もりは無料なのでしょうか?

恐らくほとんどの会社で概算見積書は無料だと思います。ただ、詳細な見積書になりますと、より多くの人も動かないといけませんので無償というわけにはいかないのです。

――どこから有料になると考えればいいのでしょうか?

一般的には、「依頼します」と指名や内定を受けて以降の作業については有償になります。それ以降はクリニックを作るための詳細図面や詳細見積書の作成、現地調査や関係各所への確認などに取り掛かるためです。金額の費用発生時期は会社により異なりますので、確認が必要です。

あとは、医療機器ですね。将来の導入予定も含めて最初から言っていただいた方がいいです。後から「これを入れるんだけど」となっても、入らないということがあり得ます。ですので、医療機器のご希望があったら、入れる入れないは別として早く相談しておくのがいいでしょう。

――ありがとうございました。

付録のアドバイス!「コロナ対策に役立つものがある」

鈴木さんにおすすめの素材を伺ってきましたので、付録としてご紹介します。コロナ禍の中、抗菌・抗ウイルスの処理を行った壁紙が注目を集めているとのこと。金額も通常のものと変わらないそうですので、これから開院を考えている医師の皆さんはぜひ利用をお考えください。経験豊かな『株式会社ラカリテ』ではすでに提案を行っているとか。

内装工事を発注する際の基礎知識について、プロ中のプロである『株式会社ラカリテ』の鈴木さんにお話を伺いましたが、いかがだったでしょうか。これから開院を考えている医師の皆さんは、ぜひ今回の基礎知識を持って発注に臨んでください。またテナント開業でも「6カ月はかかる」ので、早めに開院の準備を行うことをお忘れなく。

取材協力:『株式会社ラカリテ』

http://www.laqualite.jp/