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医療法人化のメリット・デメリットとは?

医療法人化のメリット・デメリットとは?

クリニックを開院する際には、個人事業主でいくか、医療法人でいくかが考えどころです。個人事業主で設立して、そのうちに医療法人化するという選択肢もあります。節税を考えるなら医療法人の方が良いのですが、いいことばかりではありません。今回は、医療法人化のメリットとデメリットについてご紹介します。

「医療法人化」のメリットとは?

「医療法人」は税金を安くするために大きなメリットがあります。なぜ医療法人にした方が税金が安くなるかというと、税率の差です。

個人事業主の場合には所得税が累進課税になっており最高税率が「45%」にもなりますが、法人税の場合には、年800万円以下の部分は15%、年800万円超の部分は23.20%で済みます(資本金1億円以下の場合/事業開始年度が2019年4月1日以降)。最高税率は法人税の方が圧倒的に低くなりますから、税金だけを考えるなら、医療法人の方が安く済みます。

また、医療法人には以下のようなメリットがあります。

社会保険診療報酬の源泉徴収がない

個人事業主の場合、社会保険診療に対する源泉徴収がありますが、医療法人の場合には「法人税」になりますので、これがなくなります。

給与所得控除がある

医療法人になると、医師はその法人から給与を得ているという形になります。この場合には、給与所得者ですから給与所得控除が受けられます。

親族に役員報酬を出せる

夫、妻や親族に給与を支払い、これを経費に取り込みたい場合には「青色事業専従者給与に関する届出書」を出さなければなりませんが、医療法人の場合には親族に役員報酬を出せます。しかもこれは経費になります。役員報酬を出せば所得分散になって、その分税金を安くできます。

退職金を出せる

個人事業主の場合、退職金は経費になりません。しかし、医療法人の場合には設立してからの継続年数に応じて退職金を出すことが可能で、しかも経費にできます。生命保険の途中解約(被保険者をクリニック院長、保険者を医療法人にする)を利用して退職金の準備を行うこともできます。

欠損金を10年繰り越せる

青色申告の医療法人の場合、赤字決算になった場合は、その欠損金を10年は繰り越して控除することが可能です(事業開始年度2018年4月1日以降)。例えば、ある事業年度に1,000万円の赤字となったとします。翌年に500万円の黒字であっても、前期の赤字を繰り越して-500万円。赤字ですから基本法人税はかかりません(均等割は支払う/資本金1億円超の医療法人の場合は全額を差し引けません)。また残った赤字分の500万円はさらに次期に繰り越すことができます。青色申告の個人事業主の場合は繰り越し可能なのは3年ですので、そのメリットは大きいのです。

介護保険事業への展開が容易

老人訪問介護施設などの開設は法人のみに許されています。個人事業主ではこれができません。介護保険事業への事業展開を考えるなら医療法人が有利です。

他にも、「医療法人というステータスが得られる」「事業承継が(個人事業主よりも)容易に行える」といったメリットがあります。

「医療法人化」のデメリットとは?

上掲のとおり医療法人には多くのメリットが挙げられるのですが、やはりデメリットもあります。

最大のデメリットは一度医療法人になると基本「個人事業主には戻れない」ことです。医療法人は公益性が重んじられているため、「継続すること」が前提なのです。

また、解散時には積み上げた利益・財産は基本「国・地方公共団体など」に帰属することになります。これを取り出すには独特の工夫が必要になります。

経済的に気を付けたいのは以下のような点です。

  1. 厚生年金の負担が増える
  2. 小規模企業共済は解約になる

公益性が重視されるため、官庁の行政指導監督が厳しくなるのもデメリットの一つです。

まとめ

「医療法人」のメリットとデメリットをご紹介しました。確かに医療法人には多くのメリットがあります。しかし、メリットだけ見るのは良くありません。

最も重要なポイントは、節税効果は各種あるにせよ、手元に残るお金が「個人事業主」と「医療法人」でどのように変化するかをシミュレーションを行って確認することです。売上など諸条件によっては、医療法人化した方が手取りが減ることがあり得ます。そのため、開院時のみならず、個人事業主から医療法人にするという場合には、決断の前に詳細な計算を行ってみることをお勧めします。