クリニック設立資金の調達審査とはどのようなものか
クリニック設立には多額の資金が必要です。そのため、金融機関の融資制度を利用して、設立資金を調達することも考えないといけません。では、金融機関の融資を受けるにはどうすればいいかご存じでしょうか? 今回は、事業者支援を行う政策金融機関である「株式会社日本政策金融公庫(国民生活事業)」の、「個人企業・小規模企業向け融資」のプロセスをご紹介します。
必要な書類を事前に把握しておこう
融資は、
- 申し込み
- 面談
- 契約
- 融資の実行
- 返済
という流れになっています。
申し込みの前に、融資制度そのものや、申し込み手続きの方法などについての相談も可能です。日本政策金融公庫(以下、「日本公庫」)では、全国の各支店や事業資金相談ダイヤルで相談を受け付けていますが、その他、商工会議所、商工会などでも融資の相談をすることができます。
融資の申し込みを決めた場合は、借入申込書のほかに、以下の必要書類を日本公庫に提出する必要があります。
申し込みに必要な書類 ※日本公庫の場合
個人営業の場合(申告されている方)
- 最近2期分の申告決算書
法人営業の場合
- 最近2期分の確定申告書・決算書
- 最近の試算表 ※決算後6カ月以上経過、または事業を始めたばかりで決算を終えていない場合
設備資金を申し込む場合
- 見積書
初めて融資を受ける場合
- 創業計画書(新たに事業を始める、または事業を開始して間もない場合)
- 企業概要書(創業計画書を提出する場合は不要)
- 法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人営業の場合)
クリニックを開業する場合は、「初めて融資を受ける場合」に該当するため、創業計画書や法人の履歴事項全部証明書、または登記簿謄本を借入申込書に添付して提出することになります。
審査から融資までのプロセスは?
借入申込書、および必要書類が受理された後は「面談」が行われます。
面談では、資金の使途や事業の状況、または事業計画などについて質問されることとなります。面談を受ける側は、営業状況(計画)や資産・負債の分かる書類などを準備しておく必要があります。また、面談後に日本公庫の担当者がクリニックを訪問することもあるとのこと。
提出書類や面談の内容を踏まえ、融資の審査が行われます。一般的に審査期間は約1カ月程度となっており、融資が決まると融資結果が通知されます。なお、支店の混雑状況や申込内容によっては、それ以上の審査期間が必要となる場合もあります。このとき、事業計画などが条件を満たすことができず、残念ながら融資が行われない、いわゆる「ご希望に添えません」というケースになることも当然ながら想定しておかないといけません。
さて、無事に融資が決定した後は、借用証書など契約に必要な書類が送られてきます。日本公庫の場合、契約センター、または各支店から契約書類が送られてくるとのこと。契約書類に記入し、必要書類を添えて返送し、不備がなければ、指定の金融機関の口座に融資金が振り込まれることになります。これで融資は完了。あとはその資金を基に、開業準備を進めましょう。
とはいえ、「借りたお金」はもちろん返さないといけません。返済は原則として月賦払いとなります。また、返済方法は元金均等返済や元利均等返済などが用意されています。
団体信用生命保険の加入も可能
日本公庫から事業資金の融資を受ける場合は、「団体信用生命保険」に加入することができます。融資を受ける個人事業主、中小企業法人または医療法人などが、任意で加入できる保険で、加入者が高度障害を負った場合や、死亡した場合に残りの債務が全額弁済されます。
医療法人の場合は、法人の代表者かつ連帯保証人であって、加入申込日(告知日)時点で満15歳以上満68歳未満の場合、生命保険会社の審査を経た上で被保険者になることができます。また、常時使用する従業員の数が300人以下である必要があります。「もしも」のときに備えることができるため、開業資金の融資を受ける際には検討するといいでしょう。
クリニックには多額の開業資金が必要です。自分で全額出すというのは現実的ではありませんから、ぜひこうした金融機関の融資制度を利用しましょう。
取材協力:株式会社日本政策金融公庫