医用モニターは一般的なモニターと何が違う?
医療機関では「医用モニター」と呼ばれる、医療専用のモニターが用いられます。では、この「医用モニター」は一般的なモニターと何が違うのでしょうか? 今回は、ディスプレーメーカーの『EIZO株式会社』に、医用モニターの特徴や優れている点などを伺いました。
専用の規格を満たした医用モニター
――医用モニターと一般的なモニターは何が違うのでしょうか?
主な違いは、以下の3点です。
- 医用画像表示の規格やガイドラインに適合している
- 輝度や画面の均一性など、品質が高く、安定している
- 品質を長期間維持できる品質管理機能が備わっている
これらに対応していない一般的なモニターは、読影など診断用途に適切ではありません。なお、一般社団法人 日本画像医療システム工業会(JIRA)の定義では、正しくは医用画像表示用モニターという分類になります。
――医療用に適した規格・特徴を持つ医用モニターですが、どのような点が特に優れているのでしょうか?
まずは階調特性(滑らかなグラデーション)です。医用モニターはDICOM Part 14で規定されているGSDFという「グレースケール標準表示関数」に適合し、工場で1台1台調整されています。
GSDFでは、入力信号と出力輝度の関係において、人間が識別できる最小の輝度差が1ステップ(1JND = Just Noticeable Difference)と規定されています。よって、一般的なモニター(ガンマ2.2の表示関数)に比べると、輝度が線形的に(滑らかに)変化していると感じられ、診断に必要な微細な陰影や濃淡を識別できます。
次に、「画面全体の輝度や色の均一性」が挙げられます。液晶モニターは、バックライトを光源として画像を表示するため、画面中央部が明るく、周辺部が暗く表示される傾向にあります。医用モニターの多くは画面均一性を向上する機能を搭載しており、画面の中央だけではなく、画面全体で均一に画像を表示できます。
加えて、「品質の安定性(経年劣化の補正)」も優れている点です。液晶モニターは、長期間の使用により、液晶パネルのバックライトが劣化し、画面が少しずつ暗くなっていきます。そのため、定期的な品質確認および調整が必要になります。医用モニターは品質管理ソフトウェアに対応しており、表示の補正(キャリブレーション)はもちろん、受入試験や定期確認(不変性試験)も簡単なガイドで実施できます。
正しい診察を行うためにも品質管理が重要
――優れた性能を持つ医用モニターですが、利用する際はどのような点に注意すべきなのでしょうか?
先ほどもご説明しましたが、モニターは品質管理が重要です。品質管理を怠ると、医用画像を適切に表示できず、見落としや診断結果に影響を及ぼす懸念があります。とはいえ、モニターの品質管理に多大な時間を割くことは、多忙なクリニックでは難しいものです。そこで、品質管理が容易に行えるよう、以下の点に対応した品質管理ソフトウェアや測定センサーの導入をお勧めします。
- DICOM Part 14に準拠したキャリブレーションができる
- 規格やガイドラインに準拠した試験パターンやガイドが搭載されている
- 点検・試験のタイミングをスケジュール設定できる
センサー内蔵の医用モニターなら、自動でモニター調整が可能です。そのため、品質管理時間の省力化につながります。
日々進化する医用モニター
――医用モニターにはより専門性の高い特殊なモニターもありますが、そうした「医療用ならではの製品」を教えてください。
例えば、診断・検査用モニターの「RadiForce RX360」「RadiForce MX216」です。これはCRやCT画像の表示に最適な3メガピクセル、2メガピクセルモニター。モノクロ・カラー画像が混在しても、ピクセル単位で自動判別し、それぞれ適切な階調で表示します。
電子カルテ用モニターの「RadiForce MS236WT」は、医療規格を取得したタッチパネルモニターです。スムーズなマルチタッチ操作で、滑らかな書き味のスタイラスペンにも対応しており、電子カルテの閲覧や治療の説明などに最適です。
ほかには、品質管理ソフトウェア&センサー「RadiCS UX2」は、キャリブレーションから、各種ガイドラインに準拠した受入・不変性試験を簡単に行えるソフトウェアおよび測定センサーです。点検・試験のスケジュールも設定できます。また、2台のPCでマウスやキーボードを共用できるUSB切替え機能など、業務を快適にする機能も搭載されているのも特徴です。
参考:「RadiCS UX2」
――ありがとうございました!
皆さんが利用している医用モニターは、一般用モニターと比べて高い品質や安定性を持つだけでなく、その品質を長期間維持できる非常に優れた性能を持っているとのことでした。とはいえ、その高い品質も管理が適切でなければ劣化してしまいます。患者さんの病気をいち早く見抜き、また見逃さないためにも、機器の品質管理を怠らないようにしたいですね。
取材協力:EIZO株式会社