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医院承継のメリットや注意すべきポイントは?

医院承継のメリットや注意すべきポイントは?

クリニックを開業する方法の一つに、既存のクリニックを譲り受けて開業する「医院承継」があります。引き継ぐ手間はかかりますが、ゼロからの開業よりもメリットが多いことで注目を集めています。今回は、医業承継サポートを行っている『株式会社エムステージマネジメントソリューションズ』の田中宏典代表取締役に、医院承継のメリットや注意すべきポイントを伺いました。

イニシャルコストの削減などメリット多い

――医院承継のメリットは何でしょうか?

新規で立ち上げる場合はゼロからのスタートです。物件探し、機材の購入、人の採用と、時間もお金も必要です。また、患者さんを新規で集めるのも難しく、軌道に乗るまで数カ月必要です。

しかし、医院承継は建物、設備をそのまま引き継げるなど、新規開業と比べてスタートアップの部分でのメリットが多くあります。特に大きなメリットが「患者さんを継続して受け入れられる」という点です。

――患者さんもそのまま引き継げるのは大きいですね。

患者さんが集まっている状態から始められるので、初月から安定した収入を得ることが可能です。収益の見通しがある程度立っていれば、早期の黒字化も期待できます。

また、スタッフもそのまま受け継ぐという承継案件もあります。この場合は新規採用の必要がありません。これもメリットの一つですね。

――開業に必要な資金も抑えられますか?

イニシャルコストも新規開業よりも安くなり、だいたい新規開業の半分ほどになるといわれています。中には譲渡金のない無償の案件もあります。

――デメリットはどんなことが挙げられますか?

デメリットというよりも、気を付けた方が良いポイントとしては「事業譲渡」に際して、後々トラブルにならないように、諸々の条件を事前にしっかり詰める事が重要になります。事業承継で、譲渡側・譲受側とで事前の認識と違ったという事でトラブルになるケースも見受けられるのも事実です。

医院承継の流れは?

――医院承継はどのような流れで行われるのでしょうか?

承継での開業を行いたい場合は、弊社のような仲介会社に相談するのが一般的です。希望条件をお伝えいただいた後は、ノンネームシートという概略(匿名情報)の情報を適宜ご覧いただく形になります。その情報で興味を持ち、より情報を知りたいという場合に、NDAとアドバイザリー契約を締結します。その後は案件概要書という実名情報をご覧いただけうようになるので、その情報を基に検討してもらいます。

紹介した案件で話を進めたいという場合は、譲渡するオーナーさんと面談。その面談で大枠の条件(譲渡対象の範囲・譲渡価格・譲渡のタイミングなど)が合意できていれば、基本合意契約を結びます。

基本合意後に、財務的な面、医療機関が締結している各種契約書関係(取引企業との契約・従業員との雇用契約など)を中心に財務・法務のデューデリジェンス(価値やリスクなどを調査すること)を行い、最終的な譲渡契約を結びます。その後、行政手続きを行った上で医院の引継ぎを行う流れです。

――相談から開業までどのくらいの日数が必要になりますか?

状況にもよりますが、相談から開業までに要する時間は半年ほどが一般的です。

――例えば、新しい設備を導入したい、一部リフォームしたいなど、借り入れが必要な場合はどうすればいいのでしょうか?

医院承継でも、金融機関から借り入れを行うことが多いです。ただ、医師の方は経営の知識がないことが多いため、どのようにしていいか分からないというケースも多々あります。弊社では、そうした面のサポートも行っているので、ぜひご相談いただきたいです。

医院承継を成功させるポイント

――医院承継で失敗しないためにはどうすればいいでしょうか?

やはり入念に調べていただくことです。立地や間取り、経営状態などだけでなく、雇用や支払いなどの契約も確認しましょう。チェックのし忘れがあった場合、後で「こんなはずじゃなかったのに」となることが多くあります。リスクとなることはあらかじめ確認してつぶしておきましょう。

また、通っている患者さんと新規の患者さんの割合、通院中の患者さんはそのまま引き継げるのか調べるのも必要です。専門とする分野のクリニックが近くにあるかどうかの「競合環境」の調査、立地や設備の情報を基に有利、不利を判断するのも、医院承継の成否を左右します。

――そのクリニックだけでなく、地域の情報も調べておくべきなのですね。

「地域で必要とされるクリニックになれるか」がポイントです。その地域で飽和している診療科目は淘汰される可能性が高く、求められている医療を提供できるかが成功の鍵です。受け継ぐ前に、地域のニーズを把握しておくことが重要です。

また、今後の需要を含め、「在宅医療」も考慮すべきです。在宅医療の需要は年々高まっており、実際に訪問診療を行っている診療所は承継のニーズも高いですね。今後の医療を考え、中長期的な視点を持つことも承継を成功させるための大事なポイントだといえます。

――新型コロナウイルス感染症の影響も考慮すべきでしょうか?

もちろんです。承継を考えているクリニックが、コロナの影響をどれだけ受けているかは確認すべきです。例えば、コロナ前とのデータの比較です。緊急事態宣言の前後、第2波の影響の有無などは把握しておくといいですね。その内容を踏まえ、承継後にどれだけカバーできるかを考慮しましょう。

――ありがとうございました。

新規開業の方法の一つである「医院承継」についてご紹介しました。田中さんによると、医院承継による開業という形は増加傾向にあり、今後は主流になるのではと予測されています。患者さんにとっても、通っているクリニックが廃院となると困りますから、新しく受け継いで診てもらえるのは助かります。開業を考えている医師は、医院承継という形での開業も考慮してみてはいかがでしょうか?

取材協力:株式会社エムステージマネジメントソリューションズ