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クリニックの開業に最適な時期はある?

クリニックの開業に最適な時期はある?

220517

クリニックを開業するにあたって考えるべきことのひとつが、"開業のタイミング"です。「準備が整ったそのときがタイミング」という考えももっともですが、実は、自身のタイミング以外の要素も考えたほうが賢明なのです。具体的な理由を解説していきます。

開業医の独立時の平均年齢は?

開業医として独立できるもっとも若い年齢は26歳です。18歳で医学部に現役合格して6年間学んだ後、一発で医師免許に合格したとしても、そこから2年間の前期研修を終えなければ、医師として一人前にはなれないからです。しかし、実際のところ20代で開業医となる人はごく少数。日本政策金融公庫が公表している「2021年度新規開業実態調査」のアンケート結果によると、同年の調査において、開業医の独立時の平均年齢は43.7歳とされています。

≪2021年度の開業医の独立時の年齢≫

開業時の年齢割合
29歳以下5.4%
30歳代31.3%
40歳代36.9%
50歳代19.4%
60歳以上7.0%

参照:日本政策金融公庫「2021年度新規開業実態調査」p.2より一部抜粋

開業医になる年齢的にベストなタイミングは?

では、43.7歳がベストなタイミングかというと、ベストなタイミングの"範囲内"ではあります。独立するベストなタイミングは30歳代後半~40歳代前半とされていますが、その最たる理由は、勤務医時代とは異なりマネジメントスキルも必要になるなど、新しく身につけねばならないことが多いため。学ぶことは何歳からでもできるとはいえ、年齢を重ねるほど記憶力も体力も落ち続けることを考えると、早めに準備を進めるに越したことはありません。

また、今やクリニックもホームページを持つのが当たり前の時代ですが、集患・増患のためにはそれだけでは不十分なので、SEO・MEO対策やSNSの活用なども重要になりますが、年齢を重ねるほど、新しいデジタルマーケティングに疎くなっていく可能性も考えられます。

若いうちに開業するメリット、年齢を重ねてから開業するメリット

続いては、開業のベストタイミングと仮定される40代前半よりも若いうちに開業するメリット、反対に年齢を重ねてから開業するメリットとしてはどんなことが考えられるのかをみていきます。

若いうちに開業するメリット

  • 土地を購入して戸建て開業する場合、固定資産を長期間活用できることになる
  • 返済期間が長い分、融資がおりやすい
  • 体力がある分、事業が軌道に乗るまでの間の忙しい期間などもへこたれずにがんばれる
  • 分院展開など次なるチャレンジをする余裕が持てる
  • DXに対応しやすい
  • 万が一うまくいかなかった場合、再就職しやすい
  • 独立後のライフプランを立てやすい
  • 年齢を重ねてから開業するメリット

  • 開業までにより高度な医療を提供する大病院などで研鑽を積めば、知識やスキルをしっかり磨ける
  • 先に開業している同期などにアドバイスをもらいやすい
  • 独立して忙しくなる前に医局の人間などとの人脈を築ける
  • 患者や競合からなめられにくい
  • 子どもが既に手がかからない場合などは、プライベートの心配事が少ない状態で仕事に専念できる
  • これらを見比べると、「いつごろまでにどのくらいの資産を用意できそうであるか」「独立前にどんな知識やスキルを身に着けたいか」のほか、家族とともに今後どんな人生を歩んでいきたいかを考えることも重要だとわかります。

    ライフプランニング的にベストなタイミングは?

    ライフプランニングを組む際には、まず、「開業によって移住エリアが変わるかどうか」を考えます。たとえば、子どもがいる場合であれば、学年や学期が変わるタイミングのほうが動きやすいですし、子どもの習い事に関しても区切りがつくタイミングを見計らったほうがいいでしょう。

    また、結婚や同棲を機に生活スタイルが変わることもあるので、「今はまだ予定がない」という人も、理想の将来をイメージしながらプランを立てると、望む未来に近づきやすくなるかもしれません。

    診療科ごとにベストなタイミングは?

    開業時の滑り出しを好調にすれば、その後もいい流れに乗れる可能性が高まります。では、どうすれば順調なスタートとなりやすいかというと、診療科ごとの"ニーズが高い季節"を意識することです。

    たとえば、耳鼻咽喉科であれば花粉症シーズンに開業すれば、すぐに多くの患者が来院する可能性が高いでしょう。内科であれば、インフルエンザや風邪の流行時期が狙い目です。

    季節によって発症率が高くなりやすい疾病としては、そのほか、下記などが考えられます。

    自律神経のバランスの乱れ、環境変化による集団生活のなかでの感染などが原因の疾病が増える時期です。具体的には、麻疹、風疹、おたふく風邪、水疱瘡、伝染性紅班などの患者が増加する傾向にあります。

    プールでの感染や、冷房による冷えが原因の疾病が増える季節です。具体的には、プール熱(咽頭結膜熱)、手足口病、ヘルパンギーナ、流行性角結膜炎(はやり目)、とびひなどが増えやすいでしょう。

    空気が乾燥し始める時期であるため、肺に関連した疾病が増えやすいでしょう。また、急激な気温や気圧の変化によって自律神経のバランスが乱れることも。具体的には、マイコプラズマ肺炎、RSウイルス感染症、ノロウイルス感染症などが増えやすくなります。

    体温が下がることで、ウイルスや細菌に対しての免疫力が落ちやすい季節です。インフルエンザ、ロタウイルス感染症、溶連菌感染症などの患者が多く見られます。

    無駄な残業を省きたいなら2024年3月以前の開業がおすすめ

    現在、勤務医として働いているものの、将来的に開業したいと考えているなら、2024年3月までの開業を目標とすることをおすすめします。なぜかというと、2024年に「時間外労働の上限規制」が適用となるから。これはどんな規制かというと、過重労働が常態化している医療関係者の労働環境改善のために導入が決定した規制で、一言でいうと「一定時間以上の残業ができなくなる」ということです。

    もちろん、多くの病院は、生産性を上げるために、DX化、デジタルツールの導入、あるいは業務量そのものを減らす方針で進むと思いますが、中には、対応が間に合わなかったが故に、残業申請ができなくなるにも関わらず、労働量は減らず給料が下がってしまう可能性も考えられるので見極めが重要ということです。

    上限規制の原則は「960時間以下/月100時間未満」。ただしもちろん、救急医療をおこなっている医療機関などは別で、具体的には以下のような水準が設けられています。

    A水準

  • 対象:診療従事勤務医
  • 上限:年960時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
  • B水準=地域医療暫定特例水準

  • 対象:救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関
  • 上限:年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
  • C水準=集中的技能向上水準

  • 対象:初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指しているなど、短期間で集中的に奨励経験を積む必要がある医師
  • 上限:年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
  • いうまでもなく、2024年以降"ずっと"適用される規制となる予定なので、このことを踏まえたうえで今後の計画を立てることも大切です。

    エリア独自のタイミングも要チェック!

    地域に密着して医療を提供することはクリニックにとって重要な任務なので、開業するエリアの動向を見極めることも大変重要です。開業予定のエリアに開発の予定があれば、今後、人の流れが大きく変わる可能性もあるので、診療圏調査にもしっかりと時間をかけることで、活性化の波に乗ってくださいね。

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