クリニックの終活はいつから考えるべきなのか?
クリニックを開院しても、いつかは終わりが来ます。医師・クリニック院長がリタイアするときには、長年経営してきたクリニックをどのようにするのか決めなくてはなりません。承継する人がいなければ閉院することになるでしょう。クリニックのいわば「終活」は、いつから考え始めればいいのでしょうか。
今回は、クリニックの終活について『いっぽいっぽの会(医ッ歩一歩の会)』横山実代代表にお話を伺いました。すでに15年の歴史がある『いっぽいっぽの会(医ッ歩一歩の会)』は院長夫人同士をつなぐ、いわば互助会。横山代表も院長夫人で、会を通じてクリニックの経営について多くの実例をご存じです。
承継案件にはメリットも多い
まずクリニックの承継案件についてお伺いしました。
――開業医の平均年齢が60歳を超えていますので、そろそろリタイアしようかという医師・クリニック院長も増加しています。そのため、承継案件も増えているようです。新規開業を考えている医師の中には、承継案件を選ぶ場合もあると思われます。クリニックの承継についてはどのように思われますか?
横山代表 承継はいわば居抜き物件のようなものです。新規開業でも居抜きの方が楽なことは多いと思います。患者さんの認知度もありますし、医療機器もすでにそろっているわけですから。
――そのメリットは大きいでしょうか?
横山代表 はい。ゼロから患者さんを集めるというのは非常に大変なことです。認知度を上げるのは難しく、クリニックの経営が軌道に乗るのに数年かかるというのはざらにあります。とりあえず集患に困らないというのは大変に助かることなのです。
クリニックの終わり方は開業時に考えておくべき
――承継に関わるクリニックの終わり方についてですが、クリニックの終活についていつから考え始めるべきでしょうか。
横山代表 始めれば終わりが来るのは当然のことですので、クリニックの終わり方は開院時に考えておくべきだと思います。結末は一つでなくてもいいので、何パターンかは考えておくべきではないでしょうか。例えば、何年クリニックを経営するのか、何歳でリタイアするのかといった点。また、子どもに後を継がせるのか、継がせないのかなどですね。
終わり方を決めておくと、開業時の大きさが逆算できると思います。何歳で開業して何年やるかを決めるとします。もしその時間が短いのあれば、クリニックも建てるのではなく賃貸の方がいい、などの判断ができます。その判断ができれば、ミニマムな大きさで開業できるのではないでしょうか。開業にはとてもお金がかかりますが、終わりを見据えていれば無駄なお金をかけなくて済みます。
――実際に開業時に終わり方を決めている医師は多いのでしょうか?
横山代表 いえ、ほとんどいらっしゃらないでしょう(笑)。先生には開業することしか見えていないと思います。
しかし、終わりに向かって準備するのは大切なことです。例えば、子どもに継いでほしいという希望があれば、医者になってもらわなければなりません。この時期にいくらかかって……といった資金のことや、相続問題についての計算ができます。夫婦の老後資金もためなければいけませんし、リタイアの準備は何年前から、と考えることもできます。
――なるほど。
横山代表 ですから、「転ばぬ先の杖」ではないですが、終わり方の計画を持っておくのは大事なことです。うっすらとでもいいですので、開業時に何パターンか終わり方を考えておいた方がいいと思います。
――ありがとうございました。
というわけで、これから開業する医師の皆さんも、開業にだけ意識を集中するのではなく、自院の終わり方にも考えを巡らせておくのがよいそうです。開業に向けての時期は、しなければならないことが多く、とかく視野が狭くなりがち。終わり方も考えられるような心の余裕を持ちたいところです。
取材協力:『いっぽいっぽの会(医ッ歩一歩の会)』横山実代代表