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クリニックからみた薬局活用法

クリニックからみた薬局活用法

クリニックからみた薬局活用法

まず始めに

私は薬局薬剤師です。薬剤師として、薬局側の視点で様々な病院やクリニック、そして医師や看護師などの医療従事者と接してきました。

その経験から、意外に知られていない、クリニックからみた薬局の活用法をご紹介したいと思います。

クリニックと薬局の関係

クリニックと薬局の関係は非常に重要です。法的には過度な関係性を規制されており、当たり前ですが別の法人格です。あくまで別々ではありますが「チーム医療」という言葉がある通りクリニック(医師)と薬局(薬剤師)が連携をして初めて質の高い医療を患者さんに届けることが出来ると考えております。過去には、薬局とクリニック(医師)が主従関係であった話なども聞きます。しかし現在は、単科のクリニックには薬局は付きづらいというのが現状です。

そのような中で改めて、薬局の必要性やメリットに目を向けていただきたいと思っております。そこで今回は、「薬局の活用法」ということで以下のを4点を紹介したいと思います。

  1. 併用の確認
  2. 残薬の確認と調整
  3. 薬の備蓄
  4. 処方提案

1.併用の確認

病院に勤務されている先生であれば、何かあれば薬剤部に電話1本で確認ができるはずです。もしくは、あまり意識することなく処方として出しても、薬剤部のチェックが入っているかもしれません。しかし、クリニック開業をすると院内に薬剤師がいないので、基本的にはご自身で確認しなければなりません。「そんなこといつもやってる当たり前のことだよ」と思う医師が多数だと思います。しかし、忙しい外来で多数の患者さんを診る中で、自身で出した処方以外も把握して、飲み合わせの確認と用量調整をおこなうことは非常に労力がいることです。そこで薬局が頼りになるのです。

おくすり手帳があれば、それを元に飲み合わせを含めた併用薬のチェックができますし、おくすり手帳がない場合は患者さんにヒアリングして併用薬を確認したり、併用薬の処方元の医師や調剤した薬局に問い合わせをして確認をしたりすることもできます。薬局薬剤師は、薬の薬効のみでなく剤形やシートの色などの外観まで把握しているので、患者さんの曖昧な記憶の中にある薬を特定できることが多いです。

2.残薬の確認と調整

残薬の確認と調整も薬局がおこなうことができます。これは知っている先生方も多いのではないでしょうか。定期的にクリニックに来られている慢性疾患の患者さんでは、どうしても飲み忘れや来院のタイミングなどによって残薬がでてきてしまいます。患者さんから口頭で「△△という薬が〇〇日分残っているから減らして」と訴えがあれば、先生のほうで処方箋上で日数を減らして処方することが容易です。

しかし、以下の3つのケースは薬局を活用してください。

患者さんが残薬を持参してきた場合

お年寄りの患者さんに多いですが、実際に残薬を持参してくれる場合があります。この場合は、薬を1錠単位で数えて用法用量から日数を計算して処方日数を調整します。業務自体は難しいことではありませんが、慣れていないと時間と労力がかかります。患者さんの待ち時間にも影響がでますし、クリニックのスタッフさんにも業務負担となってしまいます。その点、薬局は薬の計数は日ごろの業務で慣れていますのでスピードも速く患者さんの用法用量はもちろんですが、服薬頻度や来局頻度なども分かっており、日数調整も難なくおこなうことが出来ます。

多数の薬を服用しているため、どの薬が残っているのか分からない場合

患者さんからの口頭の訴えで多いのがこのケースです。患者さんが薬の名前や薬効をしっかりと記憶していれば良いのですが、多数の薬を服用している場合は曖昧な場合もあります。患者さんから「血圧の薬は余っているんだよね」と言われた場合でも、血圧の薬を2種類以上服用している場合もあります。

また、こんな場合もあります。患者さんから「あの赤いシートの黄色い粒の薬が余っているんだ」ジェネリック医薬品も増えている昨今、先生方がすべての薬の見た目を覚えていることはほぼないと思います。その点、薬局では備蓄の薬の見た目を把握しておりますし、何よりも実際の薬を患者さんに見せて確認することが出来ます。多数の薬を服用している場合でも、どの薬が余っているかを適切かつ迅速に把握して調整することができます。

残薬の訴え頻度が多い場合

患者さんによっては、残薬の訴えが毎月のようにある患者さんもいます。場合によっては、日数調整というよりも1か月分の処方がまるまるカットになることも珍しくありません。

都度、残薬の聞き取りをおこない、どの薬が残薬による処方カットか症状改善によるカットかなどを確認するのには労力が必要です。しかし、薬局では処方日数の確認と残薬の確認を毎回おこなっているので、労力はそこまでかかりません。

3.薬の備蓄

「薬局が薬の備蓄なんて当たり前でしょ」と考える先生方は多いのではないでしょうか。

その通りです。当たり前です。しかし、その当たり前がどこまで当たり前なのか…

院外処方のメリットのひとつが、院内在庫薬であるかどうか問わず最適な処方薬を出すことができることがあります。今回紹介したいのはその部分ではありません

ズバリ「検査薬」です。検査に伴い薬を使いたいときも、場合によっては処方箋で出して薬局でもらうことができるのです。例えば、大腸内視鏡検査で使う下剤もその1つです。

これにより下剤を在庫するリスク回避にもなりますし、発注・保管・患者さんへの受け渡しなどのスタッフの業務が軽減されます。検査薬を処方箋で出す場合には、通常の外来で薬を処方する場合と少し違うので、その点はご留意ください。

4.処方提案

処方権は医師のみに許されるものです。しかし、薬剤師も薬の用法用量や併用についての知識は高いです。だからこそ薬局を活用してください。例えば、販売中止や供給停止などなんらかの理由で既存の薬で代替品が必要になった場合、代替品となる処方の提案をすることも可能です。実際にあった例だと、内服のカリウム製剤で販売中止になったものがありました。その影響で様々なカリウム製剤が入手困難となった結果、患者さんがこれまで服用してきたカリウム製剤から、入手できる別のカリウム製剤に変更しなければならなくなりました。ここで必要だったのが、

  • 他にはどんなカリウム製剤があるか調べること
  • 入手できる別の薬に変更した場合、用法用量がどう変わるか調べること

です。

実際にあったこのケースでは、クリニックの医師より薬局薬剤師に相談があり、薬局薬剤師がカリウム換算をおこなって処方を提案し、その通りに医師が処方を出した結果になりました。

まとめ

院長であり経営者でもある開業医は、業務に関して全てを抱え込んでしまいがちです。そのほんの一部分ですが、協力できることが薬局薬剤師にはあります。クリニック内のスタッフに相談しづらいことでもぜひ話してください。

来院してくれる患者さんに質の高い医療を届けるためには、薬局との連携が必要ではないでしょうか。そのためにも、薬局の活用の仕方をぜひ医師の方々には知っていただけたらと思います。そして実践していただけたらと思います。

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