看護師の理想と現実

看護師の理想と現実

私は現在、総合病院の外科病棟で働く看護師です。看護師になる前に描いていた理想の看護師像と現在の姿には、ギャップがあり、理想と現実は異なることを日々、実感させられる毎日です。今回は、そんな看護師の理想と現実について、実際の周りの医療スタッフの声や私の経験をもとに紹介していきます。今回の記事が、より良い病院運営に繋がればと思います。

理想の看護師像

どのような職業にも、その職種を目指していたときに描いていた理想像があると思います。医療従事者もそうでしょう。何らかの魅力を感じて進む道を選び、勉強をして専門職種の資格を取り、医療現場で活躍している人が多いはずです。

私は小学生の頃、看護師と言えば、優しくて穏やかなイメージがありました。そのような看護師になれればと思って学校に入り、具体的な看護師像も見え、「患者さんの思いに寄り添った看護を提供できるような看護師になりたい」と思っていました。

無事に看護師になり、現在があるわけですが、今思うと、理想の看護師像と現在の姿には、ギャップがあります。実際の医療現場では、「理想はこうしたいけどできない」という場面が多々あります。

理想と現実のギャップ

現実は、日々こなさなければいけない大量の業務があり、忙しさに追われて患者さんとゆっくり話す時間すらありません。

例えば、常に人手不足の医療現場では、一人ひとりの抱える仕事量も多く、時間に追われる中で患者さんの対応もします。そのため、患者さんが何気ない世間話をしたかったとしても、看護師側は、次に待っている患者さんがいたり、やらなければいけない業務があったりするため、話を切り上げなければいけないときがあります。

患者さんは、このような対応を「冷たい」と感じてしまうことがあるでしょう。そのようなつもりはなくても、時間に追われていると、自分自身にも余裕がなくなってしまい、それが表情や態度に出てしまい、患者さんが敏感に感じ取ってしまうのだと思います。看護師は時間に追われ、患者さんは不安が募り、お互いに悪循環になってしまっています。

プロとして、このようなときにも余裕の持った対応ができればいいのですが、実際の医療現場ではそれも難しく、トラブルに繋がってしまうようなケースもあります。

働いていくうちに、現実は理想通りにいかないこともあることに気づかされ、成長していくものですが、新人看護師の中には、理想と現実のギャップを受け入れることができずに苦しんでしまうスタッフもいます。実際に多いのは、「大変な仕事だということは知っていたけど、ここまで大変だとは思っていなかった」という声です。

また、医療現場では患者さん優先で動くため、他のことをしていても、ナースコールが鳴れば対応しなければいけません。慣れればこなしていくことができるのですが、新人の頃は、業務が中断されることで混乱したり、ミスに繋がってしまったりも多いです。業務に追われるような日々に挫折してしまう看護師も少なくありません。そのため、お互いにサポートをしあったり、協力や相談できる体制を整えたりすることが大切であると思います。

私自身も、時間に追われているうちに、看護ではなく業務的な関わりになってしまうことも多く、反省する日々です。患者さんという人間ではなく、その人の病気の方ばかりに目がいってしまい、患者さんの思いに寄り添った対応ができていなかったことに気づかされることも多々あります。

ナイチンゲールの言葉

「白衣の天使」という言葉がありますが、実際は、「白衣の戦士」の方が、医療現場で働く看護師には合っていると思います。「天使とは、美しい花をまき散らすものではなく、苦悩する者のために戦う者である」というナイチンゲールの名言もあります。働いていると、本当にこの通りだと思う瞬間が多く、患者さんのために、時には大変な業務をこなさなければいけないこともありますし、患者さんのためを思って、時には厳しい対応をしなければいけないこともあります。生死がかかっているため、医療者側も必死で、いつもニコニコ笑ってもいられないのが現実です。

死に直面した際に、必死に生きようとしている人を目の前にすると、こちらも必死になります。時には死に直面し、悲しい思いをすることももちろんあります。精神的にも強くなければ、医療現場での仕事は厳しいと思われます。このように、患者さん同様、医療スタッフも戦っている瞬間は多くあるものです。

また、ナイチンゲールは、「どんな仕事をするにせよ、実際に学ぶことができるのは現場においてのみである」と言っています。いくら高い理想を持ち、知識を集めたり、勉強したりしたとしても、実際にその現場で働いてみないと得られない知識や技術は多くあるものです。特に医療現場は、人対人の仕事のため、実践が一番大切であると思います。医療現場で働いていく中で技術や知識の他にも、コミュニケーション能力が身に付いたりもします。実践で得られる経験は価値が高いものであり、どんなに優れた教科書から得られる知識も、実践で得られる知識には劣ります。

理想の医療現場

私の考える理想の医療現場は、医療スタッフが生き生きと働くことができる環境です。ナイチンゲールの遺した言葉に、「看護は犠牲行為であってはなりません。人生最高の喜びのひとつであるべきです」という言葉もあります。医療スタッフが使命を持って生き生きと医療を提供する姿が理想なのですが、現代の医療現場では、常に人手不足で時間に追われる日々です。

これでは、医療スタッフの疲労も蓄積され、業務をこなすことでいっぱいいっぱいになり、理想とかけ離れてしまいます。このような状況が改善され、少しでも医療従事者の負担が減り、患者さんに対してより良い医療を提供していければいいなと感じています。

ナイチンゲールは、「進歩のない組織で持ちこたえたものはない」、「進歩し続けない限りは退歩していることになる」と言っています。この言葉の通り、病院全体としても、どうすればもっと良い医療現場になり、患者さんにより良い医療が提供できるのか常に考え、アップデートし続けることが大切であると考えます。そのためには、実際に働いている医療スタッフの声に耳を傾け、実際の患者さんの声を大切にして病院経営を考えていくこと必要があると思います。

どのような職種にも、どのような病院にも、理想像があると思います。理想どおりにいかないことも多いですが、理想と現実のギャップを少しでも少なくする考え方を以下にまとめます。

  • 理想どおりにいかないことを実感することも学びであると考える
  • 理想と現実のギャップを少なくするにはどうしたらよいのか日々考える
  • 理想に近づける現実的で具体的な方法は何か、組織として話し合う

今回の記事が看護師の異動について考えるきっかけとなり、今後のより良い病院運営に繋がればと思います。

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