1年以内に退職した看護師13名。原因はお局看護師だった

医療従事者の中でも転職率が高いのが看護師です。
転職後、看護師という仕事を辞め、全く異なった仕事に就く離職者も少なくありません。
資格を有しているのに、看護師として働いていない人が多いことを、コロナ関連のニュースを通して知った人も多いかもしれません。
現在、潜在看護師は71万人いると言われていますが、これほどまでに離職者が多い職業は珍しいでしょう。
看護師が退職する理由
看護師が退職や離職をしたい代表的理由は以下です。
- 産休や育児
- 人間関係が面倒
- 超過勤務が多い
- 医療事故が怖い
- 責任の重さ
- 身体的負担
- 休暇が取りづらい
- キャリアアップ
なかでも、人間関係、超過勤務、身体的負担、休暇の取りづらさは大多数を占めていると思われます。
圧倒的に多い退職理由は「人間関係が面倒」
人間関係に関する悩みが、退職理由ランキング1位と言ってもよいでしょう。
近年、男性看護師も増えていますが、まだまだ女性の多い職場です。
女性の多い職場では、女性特有の面倒臭さがあります。
わたし自身、最初のうちは「女性特有の面倒臭さ」と言われてもピンと来ませんでしたが、仕事をおこなっていくうちに、「このことか」と実感するようになりました。
新人いじめが多い
専門学校を卒業して国家試験に晴れて合格したら、理想の看護師を目指して働き始めます。
しかし、その理想はすぐに打ち砕かれてしまいます。その理由はいじめです。
専門学校を卒業したからといって、すぐに一人前の看護師並みに仕事ができるわけではありません。右も左もわかりません。
現場で働くようになると、知識も技術もたくさん身に付けなくてはらず、その過程では失敗することも多いものです。
それは仕方のないことなので「怒られる」「注意される」ならまだわかるのですが、直接怒ったり注意したりするのではなく、陰口として他のスタッフと共有する先輩看護士が多いのです。
しかも、その後、責められ続けるのです。
日々、繰り返されれば、夢も理想も忘れてしまいます。
仕事を教えたがらない
看護学校では、看護技術を教わる実習も数多くあります。
しかし、相手が実際の患者である現場のほうが、圧倒的に学びは多いもの。
学生同士でやるのとは訳が違います。
であるからこそ、責任も問われます。
もちろん、新人であるためミスは仕方がありません。
ミスをしない看護師など存在しないし、ミスして覚えることだってあるのです。
ですが、先輩看護師の多くは、新人のミスを事前に回避したがります。
なぜなら、先輩看護師の指導の下、新人がミスをすると、
指導の下での出来事であるため、その先輩のミスでもあるということになります。
そうした事態に陥ることを避けようとしているだけでなく、
「新人がミスしたことで、わたしがミスしたと思われる」
「わたしの価値が下がる」
「わたしが医師に怒られる」
と考える先輩看護士もいるのです。
「わたしが」をまず考える先輩看護師は、何か起きたときに自分のせいにされたくないがために、後輩に仕事を教えたがらないのです。
細かくいつまでのミスを指摘したがる
医療現場では、患者さんの身体を預かり、ケアをおこなっていくため、ミスが許されないことも多いです。
ですが、そのミスを執拗に責め立ててこられては、ミスしたほうも「今後同じことをしないように気を付けよう」と自分を鼓舞できません。
「前も同じことやったよね?」
「何で一回注意されたことができないの?」
「何回、同じこと言われるの?」とまくしたてられると、
新人はもう「すいません」としか言えません。
ミスを指摘してその場で終わればよいですが、ミスしたことが周りのスタッフにも伝わるので、「また」だと指摘されることもあるのです。
そんなことが続けば精神的にも辛くなってきます。
悪口がデザート
わたし自身が思う「女性看護師の一番の怖さ」は、「仲間を作り、悪口を共有すること」です。
看護師は日々、忙しく働いています。
「休憩が取れない」「トイレに行く暇すらない」といったことも少なくありません。
やっと一息つくのは、勤務の終わり頃です。
そこで、失敗を話題にするのです。
疲れた身体を甘い物で癒すように、悪口で癒そうとするのです。
元々、悪口を言わないような人でも、先輩看護師が声をかけてきたら、聞かないわけにはいきません。
そして、先輩看護師は悪口を共有しようとするのです。
自分はそう思っていなくても、共感してしまうのです。
それが続くと、「この子は私の話を聞いてくれる」と思い、勤務日時が合うたびそうした話をするようになるのです。
話をされた看護師は「この先輩を敵にまわしたらまずい」と感じるため、次第に一緒になって悪口を言うようになります。
こうした連鎖により、悪口を言う人が増えていくのです。
超過勤務が多い
超過勤務が多いことも、退職の理由として挙げられます。
看護師の超過勤務に関しては、看護師の仕事をしている誰もが不満に感じていることでしょう。
しかも、看護師の残業には、通常の残業の他にもう1種類の残業があります。
それは、「前残業」です。
この「前残業」は後残業と違い、残業手当が支払われません。
病院としても早く出勤するように勧めているわけではなく、自分の判断として早く出勤しているのです。
なぜ看護師は前残業をするのか?
看護師が前残業をする理由は、患者さんや医師に対応するための準備をしたいからです。
前残業の開始時間は、30分~1時間半前など人それぞれです。
早めに入った分、患者さんに対応するための情報収集や処置、手術、入院の準備などを、ゆとりを持っておこなえます。
定時になってからのスタートでは、焦りからスムーズに仕事ができないこともしばしば。
しかも、患者さんや医師は待ってはくれません。
看護師はそれをわかっているからこそ、早めに出勤しておくのです。
超過勤務の原因は何か?
前残業を除く超過勤務の原因としては、
- 突発的な入院、急変、手術
- 看護記録の作成
- 慢性的な人員不足
などが挙げられます。
他にも、勤務形態による忙しさや院内研修の参加などの理由もありますが、主な原因としてはこの3つでしょう。
超過勤務に手当が支給されればまだ許せますが、病院によっては、「1ヶ月8時間までしか出さない」「経験年数によっては出さない」という病院もあります。
どんなに働いても、サービス残業となってしまうのです。
これでは、その病院にいるメリット、看護師を続けるメリットが考えらえず、離れていく人がいて当然です。
身体的負担
医療従事者の中でも、看護師の勤務体制は不規則です。
2交代制や3交代制のため、生活リズムが乱れて身体に負荷がかかりやすいです。
加えて、超過勤務が多いのも現状です。
これが日常的ですから、身体的負担は大きいといえるでしょう。
休暇が取りづらい
看護師の休暇は土日、祝日など関係ありません。
GW、年末年始などでも同じです。
しかし、別日には休みをもらえてはいます。
では何が問題なのか?
それは、希望が出せないことです。
一般企業のように土日、祝日、祭日が休みであれば、いつが休みかわかりやすいですが、病院はそうはいきません。
外来が休みであっても、病棟には入院患者さんが存在しているのです。
夜勤を含むその日の勤務のメンバーを決めて、毎日誰かが勤務しなければなりません。
看護師の人数によっては、希望の休暇を受け入れてもらえない場合もあれば、休みの希望は3コまでなど制限がかけられている病院もあります。
また突発的な不幸や体調不良でも、「人数が足りないから」という理由で有休すらもらえないこともあります。
いくら長年働いていて有休があったとしても、ある程度の日数以上は捨てられてしまうことが現実的に多いのです。
以上のような理由で退職や離職をする看護師は後を絶ちません。
それでも辞める理由の多くは「人間関係」
看護師の仕事がいくら重労働で、休暇が取りづらく、給料が割に合わなかったとしても、人間関係がうまくいっていれば我慢ができるのです。
看護師の仕事の大変さは、学生のときからイメージはできています。
しかし、人間関係に関しては、実際に働かなくてはわからないところがあります。
学生のときは、人間関係を考えるよりも、自分がやりたいことや目指す看護師像を考えます。
ですが、実際に働くと、人間関係の面倒臭さを目の当たりにすることになるのです。
オープン1年で6人の退職
わたしが入職した病院のなかには、オープニングスタッフの募集で採用されたものもありました。
条件を見たところ、給料、賞与もそれなりで、休暇日数、有休消化率も悪くありません。
実際に入職したところ、オープニングスタッフの募集だったため、さまざまな経験を持つ人が集まっていました。
年齢も20~50代と幅広かったです。
とはいえ、オープニングスタッフなので序列はないはずです。
しかし、徐々にお局さまのような看護師が本領を発揮してきたのです。
具体的には、「新人いじめ」「仕事を教えない」「ミスをいつまでも指摘してくる」といったことを始めたのです。
その結果、オープンから5、6ヶ月程度でまず3人退職しました。
最初は本当の理由が明らかにされませんでした。
「他にやりたいことが見つかった」「家庭の事情」といった理由で退職したと聞かされていました。
しかし1年が経過する頃、また3人が退職しました。
オープンから1年で6人の看護師が退職したのです。
新人、既卒を合わせ8名の入職
1年で6名退職したことは病院にとっても痛手でしたが、翌年に8名の入職が決まりました。
これは大変喜ばしいことでした。
その間にも中途採用で2名が入り、「マイナスになったけどプラスだね」と話していたところでした。
新規の病院は、とにかくたくさんの患者さんを診ていかなくてはなりません。
そのためには、看護師の人数を減らすわけにはいかないのです。
この病院に来てくれた看護師を辞めさせないようにと、丁寧な指導やフォローを心がけ、積極的な声かけや飲み会の開催などに力を入れることで、入職してくれたスタッフとの絆を深めていきました。
オープン2年目で13名の退職
しかし、それから1年でさらに13名が退職したのです。
これには大変驚きました。
一斉に退職していったのではなく、数名ずつ退職して、1年が経過したら合計13名が退職していました。
確かに「少しずつ辞めていっているな」とは感じていましたが、13名も退職しているとは思いませんでした。
こればかりは、病院全体でも問題になりました。
辞めた理由が明らかに。原因はお局看護師
最初のうちこそ理由は明らかにされませんでしたが、病院も危機を感じたのでしょう。
「原因を周知すべき」と通達がきたのです。
すると、原因はお局看護師3名の存在だということが判明しました。
13名のうち11名が、そのお局看護師が原因で退職したと発表されたのです。
他の2名は、退職時に本当のことは告げず退職しましたが、本当はお局看護師の存在と後から知りました。
そのため、13名全員がお局看護師の存在に耐えられず退職したということになります。
退職した原因が明らかに
お局看護師からの対応や言動も明らかになってきました。
最初は、お局看護師1名が発端です。
後の2名はそこまで酷くはなかったのです。
そのお局看護師は、新人や既卒看護師の仕事やプライベートについて、他の看護師にも話し始めました。
それが次第に広がり、1名から3名になったのです。
3名になったことにより、気も大きくなっていったのでしょう。
- 「あの子は使えない」
- 「看護師に向いていない」
- 「あの子に彼氏がいるなんて信じられない」
- 「〇〇さんと〇〇さん付き合ってんだって」
- 「何回言ったらわかるの? 学習して」
など1人をターゲットにしては執拗に責めたり、裏で有りもしないことを噂したりしていました。また、
「人に任せて自分は帰る」
「人には言うが自分はやらない」
「都合が悪くなるとその場からいなくなる」
といった行動もしていました。
そして、1人が辞めると、またターゲットを見つけては、同じことを繰り返していたのです。
そもそもなぜ、最初は問題にならなかったのか?
お局看護師たちが原因で辞めていることを、一部のスタッフはわかっていました。
管理職の人たちも薄々感じ始めていましたが、スタッフは管理職の人たちには話さなかったのです。
というよりも話せなかったのです。
話したことが管理職の耳に入れば、今度は自分がターゲットにされると思ったからです。
それほど怖かったのです。
緊急会議開催
「お局看護師3名により、みんな退職していった」
と、1人の看護師が話してくれました。
本当なのか、退職した人にも事実確認をおこないました。
その結果、原因が明らかになり、管理職全員に知れ渡り看護管理職者の緊急会議が開かれました。
そこで出された答えが、「厳重注意」でした。
経験年数もあり、戦力ではあることも間違いありません。
ここで辞めさせると影響が出ると、管理職の人たちはわかっていたのです。
そのため「厳重注意」という形で本人にも伝えることになりました。
変わらないお局看護師
お局看護師3名は厳重注意を受け、1ヶ月程度は静かでした。
しかし、会議が開催され3ヶ月たった頃、また1人の看護師から「退職したい」と申し出があったのです。
原因はまたしても、お局看護師でした。
堪忍袋の緒が切れた管理職者たちは、面談をおこない、解雇を告げることにしたのです。
そして、面談を行なうため、3名の看護師を呼びました。
しかし、3人のうち2人は来ましたが、1人は来なかったのです。
最初に発端となったお局看護師は来なかったのです。
連絡してもつながらなくなっていました。
おそらく状況を察知したのでしょう。
1人は来ないまま面談をおこない、お局看護師2名は退職。
来なかったお局看護師も解雇となりました。
お局看護師がいなくなって。
お局看護師がいなくなった現在、数年経ちますが、人間関係によって退職した看護師はいません。
コロナの影響でボーナスは下がり、忙しさから体調を崩すスタッフもいます。
時には、体調不良者の代わりに出勤してくれる人もいます。
ですが、「給料が安いから」「ボーナスが下がったから」「身体的の辛いから」といった理由で退職した人はいません。
給料や超過勤務による身体的な疲労がない状況よりも、精神的安定を求められる時代になっているのは確かですね。