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人手不足による医療現場のリアルな声

人手不足による医療現場のリアルな声

人手不足による医療現場のリアルな声

医療現場の人手不足とは今始まった問題ではありません。慢性的なものであるにもかかわらず、改善しづらい問題として医療業界では根強く残っています。現在医療現場で働いている方、そして働いた経験がある方、皆さん一度は人手不足によるさまざまな問題を感じてきたと思います。そこで今回は、私が実際に聞いた人手不足による医療現場のリアルな声についていくつかご紹介したいと思います。

全ての問題の要因は人手不足によるもの?

これは医療現場に限らずどんな仕事でも言えることですが、全ての問題の要因は人手不足によるものだと私は思います。日々、同僚や先輩の愚痴や悩みを聞いていると、要因が人手不足に行き付くことが多いため、実際に聞いた話や私が経験したことなども踏まえてご紹介します。

業務の押し付けあい

本当にこんなことあるの? と思う方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、実際に日常茶飯事なのです。

記録を優先してコール対応が遅い

これは何度病棟会などで話し合っても一向に改善されませんでした。みんな定時で帰りたいのは一緒です。そして、他に数名スタッフがいたら誰かコール取ってくれないかなと思ってしまうのも一緒です。何度話し合っても改善しないのは、実際の現場にいない人ばかりが話し合いをしているからです。話し合いの結果の資料を見ると、「みんなで協力してコール対応し定時で上がれるように務める」と書かれているだけで、現場の現状を配慮してくれるような文面は一つもありません。

私たち看護師もただ帰りたい、コールを取りたくないわけでは決してありません。人手が増えることで1人当たりの受け持ち患者が減り、その分業務も早く終わることからコールも積極的に取ることができるのです。

私は過去に、普通よりも少し看護師の人員が豊富な病棟で勤務した経験がありますが、記録をゆっくり入力する時間もあり、記録が終わっていない看護師を全力でサポートすべく、コール対応も積極的におこない、毎日ほぼ定時で退勤することができていました。

記録に集中したいのにコールが頻回、さらにそこで入院の受け入れがあるとなると、記録どころか定時で上がることも難しくなってきてしまいます。このことからも、人手不足による業務の押し付け合いは必然的に起こってしまうものと考えられます。

会話はほぼ愚痴

働いていると愚痴の一つや二つ出てくるのも仕方ありませんが、ここでは人手不足による愚痴についてご紹介します。

受け持ち患者の振り分けに愚痴

ショックを受けた方がいましたら申し訳ありません、ですがこれがリアルな声です。私のいた病棟では、勝手に割り振りを変える先輩がいました。さすがにだめでしょと思い指摘すると、「だってこの人昨日も受け持ったもん」と平気で言う先輩までいました。なぜそこまで受け持ち患者が重要かというと、これは病棟の種類や患者数にもよりますが、もし認知症の受け持ち患者が不穏になり、ベッドから落ちそう、車椅子を自走してどこかへ行ってしまいそうとなったら、受け持ち看護師は見守る必要があるのです。見守りが必要になると、業務が進まない、記録が終わらない、帰れないと負の連鎖になってしまうため、受け持ち患者の振り分けは非常に重要になのです。患者の振り分けは前日のリーダーがおこなうことになっていて、もし気に入らない振り分けをしていると、振り分けした看護師に指摘する看護師もいました。

シフトの愚痴

私がいた病棟では、小さい子どものいる看護師に関しては、夜勤は月に3回までという契約だったそうですが、人手不足が原因で次第に4~5回になってくる人がたくさんいました。夜勤中に子どもを見てくれる人がいないことや、旦那や保育園との調整などで頭を抱えている看護師も多くいました。

一方、ベテラン看護師たちは、役職に加えて委員会の準備なども日々の業務と並行してやっているにも関わらず、子育て中の看護師があまり夜勤に入れないことから月に6回夜勤をやっている人もいました。彼女たちは子育ても終わっているということで、土日祝は積極的にシフトに入れられて大変だなと後輩ながらに思うこともありました。私は未婚で子供もいなかったのでどちらの大変さもわかりますが、これは子育てをしている/していないが問題では無く、人手不足により充分な休暇や割り振りができていないことが原因なのです。

子育て中の看護師は夜勤少なめや土日休みにしてもらっているので、連休があっても希望休みを出しづらい、ベテラン看護師は嫌とは思っていながらも自分があまり休みを多くとるとその分誰か夜勤が増えるのではないかと、双方が気を遣いながら希望休を取っているため毎月シフトを作る師長も頭を抱えていました。

事故の多発

これは医療現場において最大の問題であると感じました。看護や医療を提供する現場で事故が多発するとなると前代未聞ではないでしょうか。しかも、事故の多くは注意していれば防げることが多いのです。

情報交換・確認不足

実際に私がいた病棟で起きた出来事です。通常は最低でも5人の看護師がいないとまわらない状況の中、1人欠勤が出たのです。1人の業務を4人に振り分け、なんとか業務開始できたのですが事件はすぐに起きました。

リーダー看護師が、欠勤した看護師の代わりに委員会に出席することになりました。それだけならいいのですが、そのリーダー看護師は、朝の一番バタバタしているときに師長から3人の受け入れがあるという報告を受けたため、それぞれの受け持ち看護師や助手に伝達できないままでした。そんななか、予定通り3人が他の病棟から転棟してきたのです。みんなパニックでもう地獄のようでした。ベッドの準備前病棟看護師との情報交換、やっとの思いで3人を受け入れることができましたが大変でした。もちろんリーダー看護師の伝達ミスも原因ですが、ただでさえ人員が少ないなか、やっとの思いで働いているのにと誰もリーダーを責めることはしませんでした。

見守り不足による転倒

これは医療現場や介護現場では最も多い事故ではないでしょうか。「見守り不足」と一言で片づけられがちですが、1人に対しての受け持ち患者数や業務量を加味すると、そのような一言で片づけてはいけないと思います。最終手段として抑制帯などもありますが、基本的にみなさん嫌がります。抑制帯が付けられないとなるとさらに見守りは必須になってきますので、通常業務が進まず誰も助けてくれない状況に悩んでしまう人もいます。実際、ステーション内に数名看護師が居たにも関わらず、車椅子から離席してそのまま転倒してしまった高齢患者がいました。このように、記録などの業務に集中していたがための見守り不足が原因で事故が起き、インシデントレポートを書かなくてはならなくなり、結果的にさらに業務が増えてしまうのです。

忙しさで心に余裕がもてない

こうした事故が起きる大きな原因は、忙しさにより余裕が持てていないことです。医療現場は特に1分1秒を争う現場もありますので、いかに冷静に判断できるかが大事ですが、心の余裕がなければ判断力が鈍ります。冷静であれば「忙しいのはお互いさま」と思うこともできるのですが、鬼気迫る状況や自分のキャパシティーオーバーのときはどうしても「お互いさま」と思うことは難しいです。並大抵の人ではできないことのように感じます。

患者に優しくできない

人手不足や忙しさは患者には何も関係のないことです。だけど、患者に優しくできなくなってしまうことがあるのです。その日もぎりぎりの看護師の人数で業務をおこなっており、ある先輩看護師が、受け持ち患者が急変していろんな職種の方と電話しながら病院中を走り回っていたところ、別の受け持ち患者からコールがありました。訪室すると患者から、「テレビカード買ってきてもらえる?」と言われたそうです。先輩看護師の状況を知っている私たちからすれば今じゃなきゃだめなの~?(泣)と思いましたが、患者は何も知らないのでただ買ってきてほしいから呼んだだけなのです。ですが先輩看護師は、「今じゃないとだめなんですか? またあとで時間があるときに来ます」と言ってその場を立ち去ってしまいました。偶然その場に居合わせた私はテレビカードを買いに行き、後で先輩看護師に報告すると「そうだった! ありがと!」と忘れていた様子でした。その日の夕方、テレビカードの患者からコールがあり、先輩看護師が向かうとこのように言われたと言います。

「忙しいのはわかる。それを承知して私はあなたを呼んだけど、案の定あなたは忙しさを理由に私を後回しにした。忙しさや私情は患者には何も関係のないこと。私が、"今日はあなたの顔が見たくないから部屋に入って来ないでくれ"といったらどういう気持ちになる? 忙しいときこそ余裕をもって人に接さないと、どんどん君の居場所が無くなるよ」。怒るそぶりはなく、諭すようにその患者は先輩看護師に伝えたと言います。

確かに患者の意見も理解できますが、これも人手不足でなければ起こらなかったかもしれないことなのです。先輩看護師が忙しいとわかっていながらも、他の看護師はその患者のコールを取ろうとせず自分の業務に精一杯だったことが原因も1つとして考えられます。

認知症の悪化

実は人手不足と認知症には非常に深い関係があることはご存じでしょうか。認知症患者の怒りっぽさや何度も同じことでコールを押す原因の一つは寂しさです。人手不足により忙しいことからゆっくり話を聞いてあげることも訪室することもできず、やっと来たと思ったら看護師からそっけない態度を取られたりすると、認知症患者特有の不穏要素が強く刺激されてしまうのです。

実際に私も、忙しいながらも丁寧に声かけや対応することを意識したところ、非常に怒りっぽい認知症患者から1度も怒られることがなくなり、さらに「君だけだよ、優しくしてくれるの。みんないつも怖い顔してやってくる」と言ってもらえるようにもなりました。その後、他の看護師が忙しいときに強い口調でその患者に対して対応していると、その患者は怒っていました。人手不足による忙しさは認知症を悪化させると感じた瞬間でした。

人手不足で得られるメリット

これまでマイナスな面をご紹介しましたが、最後にプラスな面についてご紹介して終えたいと思います。

効率的になる

他にナースに頼ることが難しい状況であるため、自分ひとりでいかに業務をこなせるかを日々考えるようになるため、自然と効率的になります。

人生の糧になる

これは私の経験談でもありますが、大変な経験をすると、それは人生において大きな糧になります。私も人手不足でお給料も休みも少ないという大変な経験をしたおかげで、どこでもやっていけると思えるようになりましたし、大変な場面に遭遇しても、「あのときに比べれば」と思いますし、さらにステップアップできた経験もあります。

まとめ

「お互いさま」「忙しいときこそ余裕をもって」と日々、意識しているのですが、やはり常にそうあることは難しいのも事実です。過酷な現場ですが、学ぶことも非常に多い医療現場に、もう少し人員が増えることを祈っています。

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