【小児科医の年収事情】開業すれば年収2,000万円以上を目指せる?
厚生労働省が2016年におこなった「医師・歯科技師・薬剤師調査」によると、小児科医の数は全国で1万6,937人。そのうち1万355人が病院に勤務しており、残りの6,582人が診療所に勤務しています。病院に勤務する小児科医のうち、女性医師の割合は35.6%と高め。今回は、そんな小児科医の年収事情に迫ります。
小児科医の平均年収は1,220万円
労働政策研究・研修機構が実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、小児科医の平均年収は1,220.5万円。他診療科目と比べると真ん中の水準程度と見えます。
順位 | 診療科目 | 平均金額(万円) |
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1位 | 脳神経外科 | 1480.3万円 |
2位 | 産科・婦人科 | 1466.3万円 |
3位 | 外科 | 1374.2万円 |
4位 | 麻酔科 | 1335.2万円 |
5位 | 整形外科 | 1289.9万円 |
6位 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1267.2万円 |
7位 | 内科 | 1247.4万円 |
8位 | 精神科 | 1230.2万円 |
9位 | 小児科 | 1220.5万円 |
10位 | 救急科 | 1215.3万円 |
11位 | その他 | 1171.5万円 |
12位 | 放射線科 | 1103.3万円 |
13位 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1078.7万円 |
参考:勤務医の就労実態と意識による調査 – p.30 一部抜粋
年収価格帯ごとにみると、もっとも多い年収帯は1,000万円から1,500万円で全体の33.1%、続いて、1,500万円から2,000万円で全体の28.4%です。
300万円未満 | 300万円~500万円未満 | 500万円~700万円未満 | 700万円~1000万円未満 | 1,000万円~1500万円未満 | 1,500万円~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 500万円未満・計 | 1000万円以上・計 | 平均金額(万円) |
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2.40% | 7.70% | 5.90% | 14.80% | 33.10% | 28.40% | 7.70% | 10.10% | 69.20% | 1220.5 |
上記は2012年のデータから確認した場合の数字で、データが古いため令和2年の平均診療点数からみた小児科医の診療点数で比較した場合は以下の結果となりました。
診療点数でみた場合の、小児科の診療点数平均
順位 | 診療所 | 平均診療点数 |
---|---|---|
1位 | 内科(人工透析有) | 9,820 |
2位 | 内科(人工透析以外(在宅)) | 1,590 |
3位 | 外科 | 1,347 |
4位 | 泌尿器科 | 1,306 |
5位 | 精神・神経科 | 1,240 |
6位 | 整形外科 | 1,218 |
7位 | 内科(人工透析以外(その他)) | 1,184 |
8位 | 産婦人科 | 977 |
9位 | 小児科 | 974 |
10位 | 眼科 | 968 |
11位 | 耳鼻咽喉科 | 807 |
12位 | 皮膚科 | 684 |
上記での、診療点数でも9位という水準となっており、他診療科目と比べるとやや低い水準ということがわかります。
開業医になると年収は3,000万円以上
では、小児科医は開業医になると年収が高くなるのでしょうか? 答えはYES!厚生労働省が2015年に発表した「医療経済実態調査 」によると、開業医の小児科医の平均年収は3,300万円。かなり年収がアップしていることがわかります。
ただし、開業したら必ず年収が上がるかというとそうではありません。
まず、小児科医として評判を上げようと思ったら、それなりに開業資金をかける必要があります。土地や建物代、医療設備代はもちろん、子どもたちが喜んで来院するようなキッズスペースを設けるなど、工夫を凝らすクリニックや病院が増えてきているからです。中には、子どもが怖がらずに治療を受けられるよう、処置室でアニメを再生するためのパソコンを完備しているクリニックもありますし、広々としたリラックスルームを備えているクリニックもあります。
小児科医として開業して高収入を得ようと思ったら、事前に成功しているクリニックの施策を調べて、どこにお金をかければいいかを考えてみるのもよさそうです。
開業医の場合、内科を兼業することも
小児科医のターゲットは、乳幼児から15歳までの子どもです。子どもたちの病気を診察・治療するだけでなく、ワクチン接種や乳児検診をおこなうこともあります。ただし、特に地方などでは、小児科医と内科医の療法を標榜しているクリニックも少なくありません。地域住民みんなの健康を守ろうと思ったら、より幅広い知識や技術を身に着けることが必要となるでしょう。
子どもと大人の患者の大きな違いのひとつは、子どもは自分の症状についてうまく説明できない場合が多いということ。そのため、小児科医は子どもの表情やしぐさから症状を読み取るスキルを磨くことも必要です。また、大人の場合は、基本的には部位ごとに専門の診療科が診ますが、小児科医は身体全体を診るため、幅広い知識が必要とされます。さらに、おたふく風邪やはしか、先天性疾患などといった子どもならではの疾患もあるうえ、年齢や発達度合いによって処方する薬の量を調整する必要もあります。
モンスターペアレントなどの対策が必要なことも
小児科医として信頼される存在になろうと思ったら、子どもとのコミュニケーションだけでなく、その親とのコミュニケーションを重視することも鍵となってきます。なんの問題もないと思われる対応を取っていても、相手がモンスターペアレントの場合、トラブルに発展することもあるため、高い精神力が必要であることは言うまでもありません。そのため、できる限り事前に対策を取っておくのが得策。たとえば、「子どもの具合が悪いのに待たされた」のクレームを避けるためにインターネットの予約システムを導入したり、おたふく風邪や風疹、水疱瘡などの院内感染を予防するために、感染症の患者が待機する部屋を設けたりするのも一手です。
クレーム対応に関しては、大人相手の診療と比べて気を付けるべき点が多いとはいえ、やりがいが大きいのも事実。子どもたちの笑顔や元気になった姿を見ることができるなど、幸せな気持ちになれる瞬間もたくさんあるので、子どもが好きな人にとっては魅力的な仕事であるに違いありませんね。