【オンライン資格確認】導入までの流れとシステムベンダー、回線事業者への依頼方法を解説
厚労省によるオンライン資格確認の導入が進められています。2月時点では、オンライン資格確認に必要な機器の1つである顔認証付きカードリーダーのクリニックの普及状況は25%に留まっていました。当初、厚労省は「3月までに6割」を掲げていたため予定よりは大きく遅れています。
しかし
この記事ではオンライン資格確認の導入で欠かせないシステムベンダーへの依頼について重点的に解説します。
参考:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)(厚生労働省)
オンライン資格確認の導入までの流れ
まずオンライン資格確認を導入するまでの流れを整理します。
をよく読み、手続きを始めましょう。
顔認証付きカードリーダーの申し込みや補助金の申請など手続きにかかわる流れはポータルサイトで完結できます。
1.顔認証付きカードリーダー申し込み
ポータルサイトでクリニックとしてのアカウントを登録したら、「顔認証付きカードリーダー」を申し込んでください。
顔認証付きカードリーダーは1台無償提供されます。ただしクリニックに届くまで注文後4カ月程度かかるため、早めの申し込みがおすすめです。
仮に顔認証付きカードリーダーを導入しなければ、システム改修やパソコン、ルーターの購入に必要な費用はすべて補助金の対象外となります。補助金は必要な申請さえすればもらえるものなので、顔認証付きカードリーダーの準備を忘れないようにしましょう。
2. システムベンダーの選定、発注
カードリーダーの申請を行ったら、システム導入に向けてシステムベンダーに見積もりを依頼します。カードリーダーの到着を待つ必要はありません。
依頼先は普段使用しているレセコンのベンダーか、回線のプロバイダーが適切です。
などが見積もりには含まれます。補助金の上限額は42.9万円の4分の3までと定められています。
3. 既存システムの改修・動作確認
すでに使用しているシステムが、オンライン資格確認導入にあたって改修の必要があるかシステムベンダーへ確認、相談を行ってください。
また現在使用している回線事業者(プロバイダー)にも変更の必要がないかを相談してください。オンライン資格確認では通常のインターネット通信と異なる「閉域網」と呼ばれる特殊な通信回線を使用します。
なお利用できるネットワークの回線種類は、IP-VPN接続方式(光回線に限る)またはIP-sec+IKE接続方式の2種類です。接続方式によって利用料金が異なる場合があるのでクリニックが契約している種別やサービス名もベンダーに問い合わせるとよいでしょう。
4. 運用開始
院内での受付時の流れも変更、整理が必要です。
マイナンバーカードを持参した方、従来の保険証を提示される患者さんによってフローは異なります。
また新たな診療報酬制度により患者さんに一部費用負担も生じるため、オンライン資格確認の実施のお知らせと協力のお願いを掲示するのも重要です。
5. 補助金の申請
オンライン資格確認の導入準備がすべて完了したら補助金の申請を行います。
2023年3月31日までに準備を終わらせて、2023年6月30日までに申請するのが補助金がもらえる期限です。
「医療機関等向けポータルサイト」から次の書類を提出してください。サイトでのアップロードまたは郵送提出もできます。
税込金額で領収書の内訳の記載する
2つの書類の金額は一致していなければなりません
「電子証明書発行申請」を行い準備が完了したことを報告する書類
補助内容はレセプトコンピューター
改修等)
※その他の費用:①オンライン資格確認の導入に必要となる資格確認端末(パソコン)の購入・導入、②ネットワーク環境の設備、③レセプトコンピューター、電子カルテシステム等の既存システムの改修 等 ※消費税分(10%)も補助対象で
システムベンダーまたは回線事業者に相談する
レセプトの審査を行う「社会保険診療報酬支払基金」の運営するオンライン資格確認ポータルサイトには、32社のシステムベンダーなどのリストが掲載されています。
全国的な対応を行う業者を一部抜粋しました。
などがあります。
クリニックがオンライン資格確認を導入する場合、一般的にはなじみのあるレセプトのベンダーに相談するケースが多いでしょう。ただしベンダーが必ずしもオンライン資格確認に詳しいとは限りません。
その際、多くのクリニックで使用している回線の提供元であるNTT東日本へ相談するとよいでしょう。
「弊社ではオンライン資格確認ガイドブック、回線・機器・設置設定等をワンス トップでご提供する『オンライン資格確認スタートパック』をご用意しております。機器構成や費用、保守などの詳しいご案内、お問い合わせ等につきましては Webをご参照いただけますようお願いします」と、取材に対しコメントしています。エリアによっては同じグループのNTT西日本がサービス対応します。
同社のサイトには早期に導入したクリニックの事例も掲載しているのでチェックしてみてください。また料金の内容も掲載されています。既存回線を利用する場合の平均費用は30万円でパソコンやルーターなどの機器費用や工事費が含まれます。ただしレセプトコンピューターや電子カルテの更新が発生する場合など、システムベンダーに支払われる費用は含まれません。
一方、システムベンダーでは39万円(税別)と概算費用を掲載しているケースが多くあります。こちらはベンダーが窓口となって回線事業者と連携するパターンです。
また接続方式がIP-VPNかIP-sec+IKE方式かで料金が異なる場合もあります。
なじみのベンダーがオンライン資格確認に詳しければ、そのままベンダーを窓口として導入手続きを行うのがよいでしょう。
オンライン資格確認を安定的に運用するにはインターネット回線が欠かせません。従来レセプト端末が接続していた汎用的なインターネット回線と異なり、オンライン資格確認に用いられる端末はよりセキュリティの高い独自のネットワークに接続されます。
国は今後、オンライン資格確認にとどまらず「データヘルス」を推進していく方針です。クリニックの院長やスタッフが、ネットワークに関する理解を深めるのは重要だと言えるでしょう。
早めの導入に向けて動いたほうがよい理由
「オンライン資格確認導入はまだまだ様子見」というクリニックも少なくありません。ただし、診療報酬改定の影響などにより今後申請が増えれば、申請から準備完了までの時間が長期化するケースも考えられます。
今申請しても数カ月から半年の時間がかかる
今すぐ手続きを始めてもオンライン資格確認の稼働までには半年近くの期間が必要です。すべての手続きを2023年3月までに完了させることから逆算すれば、早めに動き出さなければなりません。
補助金を使ってオンライン資格確認の導入をすすめるならば、顔認証付きカードリーダーの用意が必須ですがすでに4カ月待ち。
到着後からベンダーによる設定などが始まることを考えると、カードリーダーの申し込みは1日でも早い方がよいでしょう。
保険証を持参する患者さんにも対応できる
患者さんがマイナンバーカードをもってきてくれなくてもオンライン資格確認を行う方法はあります。
たとえばORCA専用の保険チェッカーである
は保険証をスキャナで読み取り資格確認と患者登録を行います。
顔認証付きカードリーターと連携させれば、マイナンバーカードと保険証のどちらでも簡単に対応できる特徴があります。
などのニーズがある移行期にはピッタリの製品と言えるでしょう。
オンライン資格確認のメリットは大きい
オンライン資格確認の手続きを解説しました。
紹介した補助金制度や診療報酬など、経済的なメリットに加えて医療の側面からもさまざまな利点があります。
より高品質な医療を安定的に提供するためにも早めのオンライン資格確認導入をおすすめします。