オンライン診療における初診について
新型コロナウイルスの影響により、直接対面する必要のない「オンライン診療」の需要が高まっています。そのため、これまで原則的に禁止とされていた「オンライン診療における初診」を政府が特例措置として容認(コロナが収束するまで)しました。今回は、これから受診機会が増えるであろうオンライン診療の「初診」についてまとめてみました。
オンライン診療で可能な行為は?
2018年3月に、厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」をまとめました(2019年7月に一部改訂)。この指針による「オンライン診療で可能な行為」は以下のとおりです。
- 情報通信機器を通じた診察行為
- 処方
- り患の可能性のある疾患名を挙げる
- 一般用医薬品の使用に関する助言
- 適切な医療機関の紹介
初診は患者の症状を細かく把握し、今後の治療計画を立てる必要があるため、原則として対面診療で行うように定められています。しかし、新型コロナウイルスの影響による特例措置として、上の「オンラインで診療可能な行為」に加え、限定的ですが「初診」も可能となりました。
また、従来はオンライン診療を実施する医師は厚生労働省が定める研修を受講する必要がありました。これもコロナの影響で条件が緩和され、研修を受けていない医師でもオンライン診療を実施できるようになりました(コロナ収束後は受講する必要あり)。
オンライン診療の導入とその実施方法
条件の緩和により、オンラインでも初診が可能になりましたが、対応するかどうかは医師の判断に委ねられています。つまり、オンラインでの初診に適していない症状・疾患だと医師が判断した場合には、対面での診療を促したり、ほかの病院を紹介したりといったことが可能です。
オンラインでの初診に適していないケースとして、厚生労働省では「早期の処理や服薬が必要な症状」「診断に当たり検査が必須な場合」などを挙げています。とはいえ、オンラインでの初診を期待していた患者にとっては、いきなり対面での診療を促されては困るかもしれません。患者の理解を得るためにも、「オンラインでの初診が難しい症例をあらかじめ提示しておく」など、病院側の工夫も必要でしょう。
例えば、HPにオンライン診療が可能なことを掲載するだけでなく、専用ページを設けて診察の流れや注意事項、料金などを明記するといったことも重要。慣れないオンライン診療について、不安に感じている人も多くいますから、できるだけ分かりやすくする必要があります。実際にオンライン診療を設けているクリニックのHPを参考にしてみるのもいいでしょう。
また、オンライン診療が可能なクリニックをまとめている医療系検索サイトに登録するのも1つの方法。クリニックのある市町村のHPに掲載してもらうなど、多くの人の目に触れるようにすることも、オンライン診療を成功させるポイントです。
オンライン診療による初診の注意点
オンライン診療を実施する場合は、適していない症状や疾患があることや不利益が生じる可能性、また症状によって対応・方針を変更する可能性を患者に説明する必要があります。その上で、説明した内容を診療録に記載します。
また、通常の窓口受付と異なり、オンラインでは被保険者の確認を十分に行うのが難しいため、患者のなりすましや虚偽申告による処方を防止するための対策を講じないといけません。
厚生労働省では、オンラインで診療時に、まずは医師が身分証明書(顔写真付き)を提示し(同時に医師資格を提示することが望ましいとしています)、次に患者から被保険者証を提示してもらうといった方法など、適切な本人確認法をまとめています。
オンラインでの診療でも処方せんを出すことが認められています。ここで注意したいのが、診療記録などにより患者の基礎疾患が把握できない場合は、処方日数の上限が7日間になることです。服薬指導においても、オンラインでの実施が可能になっていますが、吸入薬など操作が必要な薬の場合は、対面での服薬指導を促すことも重要です。
オンライン診療による初診の診療報酬
厚生労働省が「診療報酬上の臨時的な取扱い」をまとめています。これによると、対面による初診の場合、診療報酬の点数は288点(2019年10月1日改訂)ですが、オンラインによる初診の場合は「214点」を算定します。ここに処方料「42点」、処方せん料「68点」を算定する形になります。
過去に同じ医療機関で受診したことのある患者でも「現在受診中でない場合」は、初診扱いとなり、診療報酬点数は上記と同じ「214点」を算定。同医療機関で「受診中の場合」には、別の症状の診察であっても「再診扱い」となり、「電話等再診料」として「73点」を算定します。
今回コロナ禍による特別措置でオンラインでの初診が可能となりましたが、政府は恒久化の検討を示しています。一方、日本医師会は「オンラインでの初診は緊急時の対応とすべき」と対立しており、どちらに転ぶかはまだ分かりません。とはいえ、デジタル時代に対応するためにも、オンライン診療を理解しておくことは重要でしょう。