「オンライン健康相談」とは? 何かできて何ができない?
2020年のコロナ禍によって、「オンライン診療」がにわかに脚光を浴びるようになりました。ICT技術を利用して非対面で患者さんを診ることができるのですが、ややこしいことに「コロナが疑われる場合には使用できない」などの制限があります。また、「オンライン診療」に向いている診療科目とそうでないものがあります。しかし、「オンライン診療」の可能性が探られている現状であることは間違いありません。
一方で『厚生労働省』は「オンライン健康診断」についても推進しています。2020年夏には国の事業として無償での「オンライン健康診断」を提供しました。
今回はこの「オンライン健康診断」についてご紹介します。
「オンライン健康診断」とは?
『厚生労働省』では、「オンライン診療」と区別するために「遠隔健康医療相談」という言葉を用いています。これが、いわゆる「オンライン健康診断」です。
『厚生労働省』が2018年03月に出した「オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和元年7月一部改訂)」によれば、「オンライン診療」と「遠隔健康医療相談」は以下のように定義されています。
オンライン診療
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。
遠隔健康医療相談(医師)
遠隔医療のうち、医師-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないもの。
遠隔健康医療相談(医師以外)
遠隔医療のうち、医師又は医師以外の者-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学的判断を伴わない行為。
参照・引用元:『厚生労働省』「オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和元年7月一部改訂)」
まず、「遠隔健康医療相談」(オンライン健康相談)は、「医師」が行う場合と「医師以外」が行う場合が想定されています。つまり、医師が行わなくても構わないのです。
「医師以外」が行う場合には、
- 一般的な医学的な情報提供はOK
- 「お医者さんにかかった方がいいですよ」という受診勧奨はOK
- 「どんな病気にかかっているか」という可能性の提示はNG
- 診断などの医学的判断を行うのはNG
となっています。
「医師」が行う場合には、
- 医学的助言はOK
- 相談者に個別の診断を下すのはNG
です。つまり、個別の具体的な診断まで踏み込むと、それは「オンライン診療」になります。また、オンライン診療ではないので、『厚生労働省』の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は適用されないのが特徴です。
ただし、「遠隔健康医療相談においても、診断等の相談者の個別的な状態に応じた医学的判断を含む行為が業として行われないようマニュアルを整備し、その遵守状況について適切なモニタリングが行われることが望ましい」と釘を刺しています。
『厚生労働省』としては、医師以外の者が行う「オンライン健康診断」が患者さん個別の医学的判断に踏み込んだものにならないかを懸念しているのです。医師以外の「業者」が行うことも可能なのですから。
「オンライン健康診断」では何がOKで何がNG?
「オンライン診療」と「オンライン健康診断」で、現在できること・できないことをまとめると以下のようになります。
オンライン診療 | 遠隔健康医療相談(医師) | 遠隔健康医療相談(医師以外) | |
---|---|---|---|
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の適用 | ○ | × | × |
受診不要の指示・助言 | - | 〇 | |
一般的な症状に対するり患可能性のある疾患名の列挙 | - | 〇 | 〇 |
患者個人の状態に対するり患可能性のある疾患名の列挙 | 〇 | × | × |
一般用医薬品の使用に関する助言 | 〇 | 〇 | 〇 |
患者個人の心身の状態に応じた医学的助言 | 〇 | 〇 | × |
医師の立場からすると、患者さんから乞われれば「患者個人の状態に対するり患可能性のある疾患名の列挙」を行ってしまいそうになるのではないでしょうか。医師にとっては「オンライン診療」と「オンライン健康診断」の切り分けは難しいかもしれませんね。
参照・引用元:『日本医師会総合政策研究機構』「オンライン診療およびオンライン健康相談について」
まとめ
企業による「オンライン健康診断」はすでに始まっています。『LINEヘルスケア株式会社』(『LINE株式会社』と医療業界大手『エムスリー株式会社』が共同出資)、『ソフトバンク株式会社』など有名企業も参入しており、20社以上がサービスを提供しているといわれています。ICT技術を使った新たな健康サービスというわけですが、これからどのように発展するのかにご注目ください。