「オンライン資格確認」システムベンダーの注意点とは?
「厚生労働省」の旗振りによって官民一体で導入が進められている「オンライン資格確認」。そもそも2021年3月下旬本格運用開始の予定でしたが、10月まで延期となりました。しかし、導入の推進力が失われたわけではありません。着々と日本各地の病院・診療所で導入が進んでいます。
とはいえ、本格運用まで半年の時間が得られたのでほっと胸をなで下ろしている医師・クリニック院長もいらっしゃるでしょう。十分な準備期間が得られたともいえます。
そこで今回は、オンライン資格確認を導入するクリニック側の状況、システムベンダーの動きについて、「株式会社 三栄シスポ」の中井貴士さんにお話を伺いました。「株式会社 三栄シスポ」は日医標準レセコン「ORCA(オルカ)」(以下「オルカ」と表記)のシステムベンダーです。
「本格運用開始」延期の影響は?
――今回の延期による影響はありましたか。
中井さん そうですね、中には今回の延期でオンライン資格確認の導入に後ろ向きになってしまったクリニックさまもあることは確かですが、決して全体としての導入の熱が冷めたわけではありません。
これも考え方によっては、今回の延期によって「よい準備期間が得られた」と捉えることも可能です。弊社はシステムベンダーとして、クリニックさまと一緒になってテストを続け、10月の本格運用開始に備えましょうというスタンスでおります。
――延期になって先に導入を進めていたクリニックに何か不利益はあったのでしょうか。
中井さん それも特に起こっておりません。例えば、「顔認証付きカードリーダー」のメーカーさま、それに接続するパソコンの開発元である「アイ・オー・データ機器」さまも保証期間のカウントを本格運用が始まる10月から始める、という対応を取っています。
そのため、保証期間がむしろ延びた形になっています。また、レセプト(診療報酬明細書)に何か間違った情報が入ってきても「社会保険診療報酬支払基金」の方で10月までは担保してくれることになりました。ですので、クリニックさまに不利益になるようなことはありません。
――なるほど。ではクリニック側は本格運用開始までに、日々の業務の中、システムを十分試せるわけですね。
中井さん しかしながら、まだやはり情報は錯綜しておりまして、これからも日々刻々と対応しなければならないことは変化していくでしょう。お忙しい医師・クリニック院長の先生方の場合には、的確な情報をつかんでいらっしゃらない可能性があります。そのため、私たちもシステムベンダーとして情報提供に努めているところです。
ただし、10月を待たずに導入しても、特に損なことはありませんし、繰り返しになりますが、かえって十分な備えができるものと考えています。
「オルカ」とオンライン資格確認の連携は2月に終わった
――御社はレセコン「オルカ」のシステムベンダーです。「オルカ」は、日医の標準レセコンとしてユーザーも多いわけですが、「オルカ」のオンライン資格確認への対応はいかがですか?
中井さん 「オルカ」の場合は、2月にオンライン資格確認とのシステム連携を行うための改修は終えております。
――すでに病院、診療所で稼働していますか?
中井さん 本格運用は10月からとなりましたので、テスト運用という位置付けになるかと思いますが、すでに使われております。
――なるほど。「オルカ」ユーザーのクリニックにとって、オンライン資格確認の導入のメリットとはどのようなものでしょうか。
中井さん 「オルカ」をお使いのクリニックでは、オンライン資格確認の導入によって日々の業務効率が向上すると思います。
これまでは、患者さんの健康保険証を目視確認し、情報を手入力していたのですが、顔認証付きカードリーダーから読み取られた情報がすぐに「オルカ」に送られますので、その作業がなくなります。入力間違いがなくなり、スタッフの仕事が軽減されますね。
これは大きなメリットです。ただ、これまでとは仕事の流れが変わりますので、慣れるまでは注意していただいた方がいいでしょう。
他にも、例えばレセプトをCD-Rで送付しているクリニックの場合には、今回のオンライン資格確認のデジタル証明書がそのまま使えますので、レセプト提出をオンラインで行えるようになるというメリットもあります。今回のオンライン資格確認の導入に合わせて、レセプトをオンライン請求に切り替えるという選択が可能なのです。
まずは正確な情報を手に入れよう
――オンライン資格確認を導入するかどうかで迷っているクリニック院長にアドバイスをいただけますか。不安を感じている医師・クリニック院長も少なくないようですので。
中井さん 不安を感じていらっしゃるとすれば、先行きが分からない、かつどこに相談をすればいいのか分からないというのが原因ではないでしょうか。先ほども申し上げましたが、情報が錯綜しており、的確な情報を入手するのも難しいというのが本当のところでしょう。
では、システムベンダーの足並みがそろっているかといえば、正直そうでもありません。積極的なところもあれば、全く分からないというところもあります。ですので、的確な情報を持っているベンダーにまずはご相談をいただくのが一番いいかと思います。その上で、導入についてご判断されるのがいいでしょう。弊社にもぜひご相談いただけたらと思います。
――ありがとうございました。
日医標準レセコン「オルカ」を使っているクリニックでは、スタッフのワークロードを軽減する効果が得られるとのこと。また、現在は情報が錯綜している状態なので、正確な情報を入手するのが先決とも。自院のオンライン資格確認導入について迷っているなら、レセコンのシステムベンダーに相談してみるのがおすすめです。
取材協力:「株式会社 三栄シスポ」