看護師の離職率が高い原因は?
公益社団法人日本看護協会が公表している「2020年 病院看護実態調査」結果によると、正規雇用看護職員の離職率は11.5%にも上ります。また、新卒看護職員の離職率は8.6%とこちらもかなりの高い数値。ではなぜ、看護師の離職率はこれほどまで高いのでしょうか? 考察していきましょう。
参照:公益社団法人日本看護協会「2020年 病院看護実態調査」結果 p.1より抜粋
看護職員の離職率は横ばい状態
看護職員の離職率はここ数年でどのように推移しているのでしょうか? 2013年から2019年の7年間にかけての推移は以下の表の通り。正規雇用看護職員の離職率はほぼ横ばい状態であるものの、2019年度には上昇。新卒看護職員の離職率も同様に、同じ年に上昇しています。
看護職員の離職率
年度 | 既存看護職員 | 正規雇用看護職員 | 新卒看護職員 |
2013年度 | 19.2% | 11.0% | 7.5% |
2014年度 | 18.7% | 10.8% | 7.5% |
2015年度 | 18.0% | 10.9% | 7.8% |
2016年度 | 17.6% | 10.9% | 7.6% |
2017年度 | 16.9% | 10.9% | 7.5% |
2018年度 | 17.7% | 10.7% | 7.8% |
2019年度 | 16.4% | 11.5% | 8.6% |
参照:公益社団法人日本看護協会「2019年 病院看護実態調査」結果 p.4より抜粋
参照:公益社団法人日本看護協会「2020年 病院看護実態調査」結果 p.5より抜粋
看護師の離職率が高いのはなぜ?
では、なぜ看護師の離職率が高いかというと、主な理由として考えられるのが、「忙しすぎて肉体的にも精神的にもしんどい」ということでしょう。特に、夜勤による身体の疲労は年々蓄積していくことが考えられます。公益社団法人日本看護協会では、2013年に作成した「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」で、看護師の健康を守るために取り組んでほしいことを発表していますが、多くの病院が「取り組む予定はない」と回答している項目も見受けられます。「取り組む予定はない」の回答数トップ5は以下の項目となります。
「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」の勤務編成の基準の実施、取り組み状況
取り組み状況 | 取り組む 予定はない | 現在検討中 | 実施している | 不明 |
勤務の拘束時間は13時間以内とする | 39.6% | 26.1% | 29.3% | 5.0% |
交代の方向は正循環の交代周期とする | 25.1% | 45.3% | 27.1% | 2.4% |
夜勤後の休息について、2連続夜勤後の休息はおおむね48時間以上を確保する | 16.7% | 30.0% | 37.8% | 5.6% |
夜勤の途中で連続した仮眠時間を設定する | 15.5% | 11.6% | 69.7% | 3.3% |
少なくとも1か月に1回は土曜・日曜ともに前後に夜勤のない休日をつくる | 11.3% | 30.4% | 56.2% | 2.1% |
これらの項目が取り組まれていないとなると、「拘束時間が13時間以上」「夜勤の途中で連続した仮眠をとれない」などの医療機関が多く存在するということ。そうした厳しい状況であれば、辞めたくなって当然といえるでしょう。
参照:公益社団法人日本看護協会「2019年 病院看護実態調査」結果 p.10より抜粋
夜勤と離職率は関係ある?
続いては、夜勤形態別 正規雇用看護職員の離職率をみていきましょう。
夜勤形態別 正規雇用看護職員の離職率
夜勤形態 | 離職率 |
三交代制のみ | 8.8% |
二交代制(夜勤1回あたり16時間以上)のみ | 13.7% |
二交代制(夜勤1回あたり16時間未満)のみ | 12.5% |
二交代制・三交代制ミックス | 10.0% |
二交代制(16時間以上・未満ミックス)のみ | 10.6% |
その他 | 10.7% |
正規雇用看護職員の離職率がもっとも高いのは、「夜勤1回あたり16時間以上の二交代制」の夜勤形態の職場であることがわかりました。続いて離職率が高いのは、「夜勤1回あたり16時間未満の二交代制」。拘束時間に多少の差はあれど、肉体的・精神的にきついことは間違いないでしょう。
参照:公益社団法人日本看護協会「2020年 病院看護実態調査」結果 p.11より抜粋
勤務日にしっかり働けば、休日はしっかり休むことができる?
続いては、忙しい看護師たちが、休日はきちんと身体を休めることができているのかをみていきますが、答えからいうと、受診日以外にも看護師はやることがたくさんです。なんと68.9%が、受診日以外にも勤務先との関りがあると答えているのです。どんな関わりがあるかというと、下表の通りです。
外来における受診日以外の主な関わり
受診日に来院しなかった未受診者の状況確認 | 45.0% |
地域の訪問看護ステーションとの連絡調整 | 33.9% |
電話・メール等による状況確認・療養指導等 | 32.0% |
地域の行政機関との連絡調整 | 23.5% |
かかりつけ医との連絡調整 | 16.5% |
訪問による状態確認・療養指導等 | 15.9% |
参照:公益社団法人日本看護協会「2020年 病院看護実態調査」結果 p.15より抜粋
職員確保のために具体的に実施されている職場環境整備は?
ガイドラインで守られていない項目がある一方、職員確保のためにさまざまな工夫をおこなっている医療機関も存在します。たとえば、多様な勤務形態を導入すること。具体的に導入率が高い項目トップ5は以下の通りです。
多様な勤務形態の導入として、職場環境整備について法定外で実施している制度 実施率
年休が半日単位で利用できる制度 | 72.0% |
退職した職員の再雇用制度 | 49.4% |
年休が時間単位で利用できる制度 | 49.3% |
能力開発のための休職・休暇制度 | 28.6% |
社会貢献・ボランティアのための休職・休暇制度 | 26.0% |
参照:公益社団法人日本看護協会「2019年 病院看護実態調査」結果 p.11より抜粋
自院の離職率を下げるにはどうすればいい?
では、自院の離職率を下げるにはどうすればいいかというと、離職率の要因と考える「忙しさ」を緩和させて、職員が働きやすい制度を整えてあげることです。また、忙しさ以外に、「職場の人間関係」なども離職の原因となる可能性が高いので、日ごろから看護師としっかりコミュニケーションをとって、メンタルのケアをおこなっていくことも大切です。それでも退職者が出てしまった場合は、代わりの人材を探すしかありませんが、前任者と同じように早期に離職という結果になっては医療機関側にも負担が生じます。そうならないよう、妥協せずに人材を探すことも大切。自院のホームページなどでの募集でいい人材が見つからない場合は、人材紹介会社などを利用するのもおすすめですよ!