【脳外科医の年収事情】開業にはいくら必要?
確かな技術が必要な脳外科医。くも膜下出血などの緊急治療をおこなったり、生死に関わる重大な判断をしなければならないことがあったりする分、年収も高いのでは? と想像する人も多いでしょう。そこで今回は、実際のところ脳外科医の年収はどのくらいなのかを解説していきます。
脳外科医の平均年収は1,480万円
労働政策研究・研修機構がおこなった「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、脳外科医の平均年収は1,480万円で、その他の診療科と比べてもっとも高い水準です。
順位 | 診療科目 | 平均金額(万円) |
---|---|---|
1位 | 脳神経外科 | 1480.3万円 |
2位 | 産科・婦人科 | 1466.3万円 |
3位 | 外科 | 1374.2万円 |
4位 | 麻酔科 | 1335.2万円 |
5位 | 整形外科 | 1289.9万円 |
6位 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1267.2万円 |
7位 | 内科 | 1247.4万円 |
8位 | 精神科 | 1230.2万円 |
9位 | 小児科 | 1220.5万円 |
10位 | 救急科 | 1215.3万円 |
11位 | その他 | 1171.5万円 |
12位 | 放射線科 | 1103.3万円 |
13位 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1078.7万円 |
年齢や働き方を問わず、年収1,000万円をこえている医師が80%を超えているうえ、年収1,500万円以上2,000万円未満の医師は全体の40.8%にものぼります。さらに、年収2,000万円以上の医者も19.4%存在すると聞けば、脳外科医を目指したくもなるでしょう。
300万円未満 | 300万円~500万円未満 | 500万円~700万円未満 | 700万円~1000万円未満 | 1,000万円~1500万円未満 | 1,500万円~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 500万円未満・計 | 1000万円以上・計 | 平均金額(万円) |
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1% | 3.90% | 2.90% | 10.70% | 21.40% | 40.80% | 19.40% | 4.90% | 81.60% | 1480.3 |
なぜ脳外科医の平均年収がこれほどまでに高いかというと、なり手が少ないから。生死に関わる手術をおこなうことがあり、リスクが高い分、なりたいと思う人が少なく、常に人手不足の状態なのです。厚生労働省が発表した「平成30年度 第4回医道審議会医師分科会医師専門研修部会」のデータによると、脳神経外科の必要医師数は9,021人であるのに対して、脳外科医は7,713人しかいません。実に1,308人もの医師が不足しているのです。
そのため、後任の医師を見つけなければならないとなると探すのが大変。病院側は、辞めないでもらいたい一心から年収を上げていると考えられます。
小さなミスも命に関わるため、訴訟リスクを感じている医者も
では、実際に脳外科医の仕事はどのくらい大変なのでしょうか? 脳外科医が扱う疾患としては、下記のような疾患が挙げられます。
脳外科医が扱う疾患例
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 脳梗塞
- 頭部外傷
- 脊髄疾患
- パーキンソン病などの神経疾患
病名を見ただけでも、小さなミスが命に関わることがおわかりいただけでるでしょう。脳外科医の仕事は、これらの疾患の診断から治療、手術までをおこなうだけでなく、周術期管理、リハビリ、長期予後管理までおこなう大変な仕事。緊急性がない状態であれば、事前にスケジュールを組んで手術をおこなうことができますが、高血圧や血管異常、くも膜下出血などが原因の脳出血や頭部外傷などは、緊急で治療をおこなわなければなりません。そのため、時間外勤務やオンコールにも対応する必要があります。
緊急治療を必要としない疾患を専門としている場合は、時間外勤務やオンコールの負担は大きくはありませんが、脳や脊髄への治療をおこなう以上、少しのミスでも重要な後遺症につながる可能性があります。
その分、脳外科医の仕事は訴訟リスクが高いのも事実。労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」では、訴訟リスクを「非常に感じる」または「まあ感じる」と回答した脳外科医が38.2%にも上ります。
では、勤務先に対しての満足度はどのくらいかというと、52.8%の脳外科医が「満足している」または「まあ満足」と回答。反対に、「少し不満」または「不満」と回答した脳外科医は20.3%でした。
開業に必要な予算は億単位
勤務先への不満が生じることもあるなら、開業するのが一番と考える人もいるでしょう。しかし、脳外科医の開業へのハードルは非常に高いのが現実です。理由は、脳外科医の仕事に医療設備をそろえると、2億円程度かかるから。血圧測定器、X線はもちろん、脳波測定器、CT、MRI、心電図などの、脳や心臓の検査をおこなう機器を一通りそろえる必要があります。加えて、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの病気の患者は、術後、長期間リハビリが必要となる場合があるので、リハビリ施設を備えるためのスペースも必要です。
加えて、緊急を要する患者も少なくないため、命を守るための最善な策を取る過程において、サポート役も必要とします。そうなると人的コストもかかるので、開業医自身の報酬がほとんど得られない場合もあるでしょう。
実際、大学病院などの勤務医と比較して、地方の小規模なクリニックや病院で働く開業医は、年収が1~2割低いケースもあります。また、内科などと異なり、日ごろから診療を必要としている人も少ないので、開業したところでニーズがあるかどうかも、事前にきちんと調査しておく必要があるでしょう。
脳外科医が儲かるかどうかは腕次第
もちろん、ニーズを下調べして開業しても、脳外科医としての実力がなければ高収入にはつながりません。脳外科医は、医者の中でもっとも、腕が大切な医者といっても過言ではありません。即手術をしないと命が危ないという患者やその家族が手術を任せたいと思うのが、腕利きの医者であることは間違いありません。手術がうまくいったかどうか、そしてその後のリハビリが順調であるかどうかが、その後の集患・増患に大きく関わってくるでしょう。
言うまでもなく、「結果を出し続ける」こともとても大切。そのためには、緊急時にいつでも対応できるだけの体力をつけておくことも重要です。体力、精神力、判断力がそろっていなければ務まらない大変な仕事ですが、そのぶん、やりがいもきっと大きいはず。患者に信頼される脳外科医であり続けるために、働き始めてからも研鑽を積み続けることが大切です。