医療機器のリース・割賦どちらがいいか?
クリニックを開業する際には医療機器をそろえなければなりません。しかし、とにかく医療機器は高価です。全てを購入するとなると多額の資金が必要です。資金がそれほど潤沢ではないのであれば、「リース」「割賦(かっぷ)取引」を考えましょう。
「リース」のメリットとデメリット
「リース」は文字どおり医療機器をレンタルすることです。リース会社に毎月レンタル代金を支払って医療機器を利用します。
リースには以下のようなメリット・デメリットがあります。
医療機器リースのメリット
- 手元の開業資金を別の投資に回せる
- リース料金が全額経費処理として扱える
- 不具合が発生しても保険加入するため追加費用が発生しない
- 固定資産税がかからない
医療機器リースのデメリット
- 中途解約ができない
- 契約満了時、返還するか再リースしなければならない
- 特別償却が受けられない※
リースを利用する最大のメリットは資金を温存できることです。クリニックの経営が黒字になり軌道に乗るには10年かかる、などと言われることもあり、キャッシュはできるだけ多く保持しておくのが得策です。また、リース料金は全額経費として計上できますので、購入して減価償却するよりも、資金が限られている開業すぐのクリニックには向いています。税制でいえば固定資産税がかからない点もメリットになります。さらに、機器に不具合が発生しても保険に加入するので追加費用は発生しません(契約を要確認)。
このようにメリットも多いのですが、購入するよりは割高になります。また、期間内は中途解約ができません。解約する場合には違約金を支払うなどの条項があるケースもあります。契約満了時には返還するか再リースを選ぶことになります。税制上でのデメリットは、医師の特権である「特別償却」が受けられないことです。この点は、売上が少ない開業すぐのクリニックにとっては大きなマイナスポイントといえるかもしれません。
※特別償却とは、医師に与えられた税法上の特典で、通常の減価償却より多くの金額を経費にできる。詳細については『クリニック開業ナビ』の以下の記事を参照してください。
「割賦取引」のメリットとデメリット
「割賦取引」は簡単にいえば「分割払い」による購入です。頭金を「購入金額の10~30%」入れて、満期(普通は7年程度)まで「月○万円」という形で支払うことになります。クルマのローンと同じで、割賦支払いをしている間は所有権は販売者側にあります。支払いが終わったら自分のものになります。
割賦取引には以下のようなメリット・デメリットがあります。
割賦取引のメリット
- 手元の開業資金を別の投資に回せる
- 完済後、医療機器の所有者になれる
- リースとは異なり、契約期間に原則制限がない
- リースより安い金利のため、総額は安く済む
割賦取引のデメリット
- 固定資産税がかかる
- 保険料もクリニック負担となる
- 買い替える際、旧式を買い取ってもらうか廃棄処理する手間が発生
「リース」の場合と同じく、資金が温存できるという大きなメリットがあります。しかも、
完済後は自分のものになるので、その後売却することも可能です。また、リースよりも金利が安いのが一般的ですので総額は割賦取引の方が少なく済みます。
しかし、リースと異なり税制上は固定資産税がかかります。また、メンテナンス代金や保険料はクリニックで支払わなければなりません(ただしリースの場合でもその費用がリース代に含まれていれば結局同じ)。さらに買い替える際には、元の機器を売却するか廃棄するという手間が掛かります。とはいえ、自分のものになるということは、この手間を引き受けるということですから、これは仕方がありません。
まとめ
「リース」と「割賦取引」についてご紹介しました。どちらも一長一短がありますが、将来的にその医療機器を自分で所有したい、というのであれば割賦取引を選ぶべきですし、次々と最新機種を使っていきたいといった希望があるならリースの方が向いています。ただし、リースの場合には保険代や固定資産税分の経費、リース会社の利益などが乗って「リース料」になりますから、どうしても支払い総額は割高になります。この点も考慮して選択してください。また、複数の会社から見積もりを取って比べることを忘れないようにしましょう。