医療スタッフには女性が多いが、男性医師・院長はどう振る舞うべき?
医療の現場はどうしても女性の方が多くなります。クリニックでも、ともすると医師・クリニック院長だけが男性で、受付・会計などの医療事務業務スタッフ、看護師はみな女性といった状態になりがちです。医師・クリニック院長も周りが女性ばかりだとやりにくいかもしれませんが、振る舞いには十分な注意が必要です。
女性が多い職場で男性の医師・クリニック院長はどのように振る舞うべきでしょうか。『いっぽいっぽの会(医ッ歩一歩の会)』横山実代代表にアドバイスを頂きました。
横山代表自身も院長夫人でいらっしゃいますが、『いっぽいっぽの会(医ッ歩一歩の会)』は情報交換、勉強会などを通じて院長夫人同士のつながりを広げるべく結成され、すでに15年の歴史があります。
とにかく「ハラスメント」に細心の注意を払う
――医療の現場では多くの女性が働いています。クリニックを開院しても、往々にして周りは女性ばかりということになります。このような職場で、男性の医師・クリニック院長はどのように振る舞えばいいでしょうか? 注意点などを教えてください。
横山代表 確かに女性の多い職場ですから、気を付けないといけないのは「ハラスメント」です。
- セクシュアルハラスメント
- モラルハラスメント
- パワーハラスメント
など、最近ではすぐに問題になります。特にクリニックでは先生が「NO」と言ったら「NO」です。先生の判断は絶対という意識で皆さん仕事に当たりますので、「強要された」と感じやすいということを忘れないようにしましょう。
仕事上の指示も先生の絶対的立場から出るものです。指示が仕事上必要なものでなく、ほんの少しずれたものになっても、「ああ言われた」「こんなことを言われた」となる可能性があります。
また、現在ではSNSというものがありますので、一緒に働いている女性が「ハラスメントを受けた」などとSNSに書き込んだりしたら、あっという間に広まってしまいます。しかも一度書き込まれたら基本消すことができません。クリニックの評判は落ちる上にそれがずっと付いて回ります。
――確かに、一度炎上したら消せません。
横山代表 例えば、クリニックには差し入れがされるため、スタッフの控え室にはお菓子がたくさんあったりします。お菓子を食べているスタッフの女性を見て、「お菓子を食べすぎじゃないの」と言ったり、「だから太るんだよ」と言ったりするとか。このような発言もハラスメントに当たります。ひどい場合には「だから結婚できないんだ」と言うなどです。
――「親愛の情を示した」などと言う人もいますね。
横山代表 たとえ冗談でも言ってはだめです。発言者の気持ちではなく、受け手がどう取るかが問題なのです。この点を理解していないといけません。たとえ軽い気持ちで発言しても相手が不快に思ったら、その時点で「○○ハラスメント」と解されてしまいます。
ぴんとこない先生がいらっしゃるかもしれませんが、起こってからでは遅いので、「ハラスメント」については講習を受けるなどして勉強しておかれるといいでしょう。
転ばぬ先の杖が大事!「就業規則に定める」「二人きりで面談しない」
――「ハラスメント」と言われないように、何か対策はあるでしょうか。
横山代表 まず勉強して「ハラスメント」に当たる発言をしないように心掛けることです。また、就業規則をしっかり作っておくことです。「もしハラスメントがあった場合には、「ここに連絡してください」と会計事務所あるいは労務士の事務所などの電話番号を記載するなどします。これは最低限行っておきましょう。
――なるほど。就業規則にしておくのは大事ですね。
横山代表 「ハラスメント」と取られるというのはコミュニケーション不足が原因かもしれません。ですから、普段からスタッフとしっかりコミュニケーションを取るように心掛けるのも予防策になるでしょう。
私もスタッフの面談をよく行います。ただし、先生が行うときには必ず第三者を入れることを忘れないでください。二人きりでというのは、それ自体が問題になりかねませんし、また、後で言った・言わないの水掛け論に陥る可能性もあります。
――そういった点にも注意が必要なのですね。
横山代表 繰り返しになりますが、問題になってからでは遅いので先生方はハラスメントについて学ぶ機会を得ることをお勧めします。一度きちんと勉強しておくのがいいと思います。
――ありがとうございました。
横山代表の指摘は、男性ではなかなか気付かない点ではないでしょうか。医師・クリニック院長以外は全て女性という職場は決して珍しくありません。せっかくクリニックを開業しても、SNSで悪い評判が立ってしまったら取り返しがつきませんから、くれぐれも「ハラスメント」と取られないように注意してください。また、横山代表のアドバイスにあるとおり、一度は講習を受けるなどして勉強しておくのがいいのではないでしょうか。
取材協力:『いっぽいっぽの会(医ッ歩一歩の会)』横山実代代表