男性看護師の苦悩

男性看護師の苦悩

私は、総合病院の外科病棟で働く看護師です。今回は、医療現場で活躍する男性看護師について、実際の周りの医療スタッフの声や私の体験をもとに紹介していきます。今回の記事が、男性看護師の理解を深めることに繋がればと思います。

「看護師」という言葉の浸透

ひと昔前までは、看護師は女性がほとんどでした。そのため、呼び方も現在とは異なり、「看護婦」と言われていました。その名残なのか、高齢の患者さんの場合は、「看護婦さん」と呼んでくれることが多いです。昔は、女性の看護師は「看護婦」で男性の看護師は「看護士」と呼ばれていました。男性看護師は、現代と同じ「かんごし」と言う呼び方でも漢字が異なっていることがわかりますね。

現在のように「看護師」と呼ばれるようになった1つの理由としては、看護師になる男性が増加したことが挙げられます。男性看護師の数は年々増加しており、需要も多くあります。そのため、男女の区別をなく呼ぶことができるように、「看護師」という呼び方に変更されました。

具体的に言うと、1986年に「男女雇用機会均等法」が施行されたことで、"看護婦"から"看護師"に名称が変更されました。現代では「看護婦」という言葉は死語になっていますが、私個人としては、「看護婦さん」と呼ばれることには抵抗はなく、むしろ親近感がわいてうれしいものです。

男性看護師のメリット

女性が多い職場の中で、男性の看護師が1人でもいると頼もしいシーンは多くありますし、メリットもたくさんあります。看護師の仕事は、患者さんの移動の介助をしたり、体位変換したりと、何かと力が必要です。そのようなときに、女性よりも体力のある男性看護師がいてくれると非常に心強いです。

また、精神科の場合には暴れたりする患者さんもいるため、力のある男性看護師がいることで、安全に患者さんを抑制することが可能になります。私は外科病棟で働いているため、術後のせん妄の症状が出現した患者さんが大暴れしているときなどには、力のある男性看護師がいると大変心強いと言われます。

また、入院中はどうしても羞恥心を覚える処置があるものです。そのため、思春期の男子や若い男性などが入院してきた際には、男性看護師が受け持ちとなって担当することで、気兼ねなく看護を受けることができます。

看護師は女性が多いため、職場がギスギスした雰囲気になりやすいこともあります。そのようなときに男性看護師が働いていると、職場の雰囲気が柔らかくなりますし、ムードメーカー役となることも多いです。

このように男性看護師がいるメリットは、本当にたくさんあります。

男性看護師の苦悩

男性看護師のメリットがたくさんあることがわかったと思いますが、逆に男性看護師であるからこその苦悩もあります。私の同期にも数名、男性看護師がおり、学生時代から一緒に学んできたのですが、やはり「最初は女性だらけの環境に慣れるまでに時間がかかり、大変だった」という声が多かったです。基本的には、学生時代に一緒に授業を受けたり、実習をこなしたりしているうちに自然と環境に適応していくことが多いです。

看護師になってからも性別の壁はあるようで、年齢を問わず、女性の患者さんの中には、男性看護師に処置をされることに対して抵抗がある患者さんがいます。男性看護師は、女性看護師と同じように仕事として処置をしているだけですが、患者さんの中には、男性看護師を露骨に拒否したり、時には心無いことばをぶつけたりといったこともあります。そのため、精神的な苦痛もあり、男性看護師は大変な部分も多いです。

また、男性は女性の脳と異なり、同時にたくさんのことをこなすようなマルチタスク能力は、脳の構造上、低い人が多いです。しかし、看護師の仕事には、同時にたくさんのことをこなさなければいけない場面も多く、これは女性の看護師の方が得意な分野であるため、男性看護師にとっては大変な部分もあると思います。短い時間で、同時に正確にこなしていかなければいけない面では、慣れるまでは大変に感じることが多いかもしれません。

男性看護師あるある

次に、男性看護師のあるあるエピソードを紹介していきます。医療スタッフの方は共感できる部分もあると思いますので、ぜひ楽しみながらお読みください。

1.不穏患者の対応

患者さんの中には、看護師の言うことを全く聞かず、医師と看護師に対する態度を露骨に変える人や、認知症のため状況がわからず、パニックになっている患者さんもいます。そのような場合に男性看護師がいると、患者さんは女性看護師が対応するときよりも話を聞いてくれたりするので助かります。「医師を呼んでこい!」と術後せん妄などで暴れてしまう患者さんに対しては、男性看護師に医師のふりをしてもらい、その場を乗り切るといったことも可能です。夜勤で人手がなく、医師もすぐに来られない際などには本当に助かるでしょう。

2.男性看護師同士は強い絆が芽生える

看護師の職場ではまだまだ男性看護師は少なく、ほとんどが女性看護師になります。そのため、男性看護師同士の交流は盛んで、例え部署が異なっていても、強い絆がある場合が多いです。男性の看護師同士であるからこそ、理解できる部分も多いため、絆が深まりやすいのだと思います。

3.力仕事は頼りにされる

術後や検査後にストレッチャーからベッドに移動する際など、男性看護師がいると、女性看護師2人分の力を発揮します。そのため、移動などで力が必要なときには、男性看護師が大活躍します。体位変換の際や筋力低下していて自分で動けない患者さんの援助には、腕力のある男性看護師がいると心強いでしょう。女性は、夜勤専従などでホルモンバランスが崩れ、生理がこなくなってしまうケースも多いのですが、男性であればそのような心配もなく、体力もあるため、夜勤にも向いていると思います。

理想の医療現場

私の考える理想の医療現場とは、男女関係なく、働きやすい環境が整っていることです。たとえば、男性看護師に対する福利厚生が整っていない職場はまだまだ多いです。そのため、活躍している男性看護師が働きやすいようなシステムを整えて、男女関係なく、働く医療スタッフみんなが満足するような職場づくりができればいいなと思います。

最後に、今一度、男性看護師のいる職場のメリットを以下にまとめます。

  • 安定した体力がある
  • 職場の雰囲気が柔らかくなる
  • 力仕事に向いている
  • 男性ならではの視点で意見を出せる

今回の記事が、男性看護師の必要性について考えるきっかけとなり、今後のより良い病院運営に繋がればと思います。

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