院内処方と院外処方はどう違う? 併用は可能?
クリニック開業時に考えなければならないことのひとつが、薬を院内処方にするのか院外処方にするのかということです。そこで今回は、院内処方、院外処方それぞれのメリット、デメリットや、併用の可否について解説していきます。
院内処方と院外処方、主流はどっち?
院内処方と院外処方ではどちらが多いかというと、ほとんどの人が実感としても「院外処方」だと答えるでしょう。しかし、子どものころ病院に行くと院内で薬を処方されたと記憶している人も多いはずです。なぜかというと、1997年に厚生労働省が37のモデル国立病院に対して完全分業(=院外処方箋受取率70%以上)を指示して以降、医薬分業が加速化したためです。結果、2003年には全国における医薬分業率が初めて50%を超え、そこから右肩上がりで数字は伸び続け、2019年には74.9%という数字を記録しています。
≪院外処方箋受取率の推移≫
1997年 | 26.0% |
1999年 | 34.8% |
2001年 | 44.5% |
2003年 | 51.6% |
2005年 | 54.1% |
2007年 | 57.2% |
2009年 | 60.7% |
2011年 | 65.1% |
2013年 | 67.0% |
2015年 | 70.0% |
2017年 | 72.8% |
2019年 | 74.9% |
上記の通り、現在ではほとんどが院内処方とはいえ、院外処方率は100%ではなく、院内処方を続けている医療機関も存在します。では、それぞれのメリット、デメリットはなんなのかを続いて解説していきます。
院内処方のメリット
診療と同じ場所で薬を受け取れる
院外処方のメリットとしてまず挙げられるのは、患者が薬局に出向く必要がなくなるということです。また、窓口負担費用を安く抑えられる点も、患者にとってはメリットです。このことは、クリニックの評価向上につながり得ます。
日数の調整等にも応じやすい
遠方在住でなかなか来院できない患者などに対して、場合によっては日数の調整をしてあげることもできます。また、薬の変更や追加もしやすいです。
院内処方のデメリット
薬によっては取り寄せが必要なことがある
特殊な薬の場合、取り寄せが必要で患者を待たせてしまうことになります。
在庫リスクがある
薬剤には使用期限があるため、発注したものの無駄になって廃棄しなくてはならなくなることがあります。
薬剤を管理するためのスペースが必要
ある程度の薬剤を管理するためにはそれなりのスペースが必要です。
人件費がかかる
調剤を担当するスタッフの人件費が発生します。
仕入れに消費税がかかる
仕入れ時には消費税を支払う必要がありますが、処方時には消費税を徴収することができません。
院外処方のメリット
処方内容を二重チェックできる
医師、薬剤師のダブルチェックによって、重複投薬や調剤ミスの防止体制が強化されます。
他の医療機関から処方された薬との飲み合わせもチェックできる
患者にかかりつけの薬局があれば、他の医療機関から処方された薬との飲み合わせもチェックしてもらえます。また、過去に処方された薬の履歴なども確認してもらえます。
在庫管理の手間が省ける
医療機関にとっては、薬を発注して在庫管理する手間が省けることになります。また、使用期限切れの薬剤を廃棄する際の費用も削減することができます。
医療行為に集中できる
薬の管理や処方について考えなくてよくなるぶん、医療行為に集中することができます。
院外処方のデメリット
患者にとっては時間的にも金銭的にも負担が大きい
薬局に行く時間、薬局に支払う金額を考えると患者にとってはデメリットが大きい院外処方。患者から、「院内で処方してもらえたらいいのに……」と思われることもあるかもしれません。
院内処方と院外処方の併用は可能?
院内処方と院外処方の併用は原則として認められていません。同じ患者に対して、同じ診療日に、薬剤の一部を院内で投薬して残りを院外処方とすると、処方料と処方箋料を二重に算定することになってしまうためです。しかし、日にちが違えば問題はありません。
自院の患者のニーズについて考えることも大切
冒頭で述べた通り、昨今の主流は院外処方であるとはいえ、患者のなかには、クリニックと調剤薬局の2か所を訪れるのは身体的に大変だという人もいます。クリニックにとっての利便性や採算性を考えることももちろん大切ですが、患者のニーズも併せて考えることで、ベストな方法を選んでくださいね。