医療機器の選び方
クリニックを開院する際には、必要な医療機器をそろえなければなりません。一口に医療機器といってもさまざまな製品があります。また診療科目、専門分野によっても導入する医療機器は異なります。しかし、これからクリニックを開院するのであれば、「必要な」という部分に注意しなければなりません。この「必要な」の前には、「クリニックの特色を出すために」、あるいは「クリニックの経営にとって」を付けて考えるべきなのです。
経営面から必要な医療機器を考えてみる
クリニックを開院する際には「経営者」の視点が重要です。どこで稼ぐのかを考えて導入する医療機器を選択してはいかがでしょうか。
診療費は、以下の3ブロックに分けることができます。
- 基礎部分(初診料、再診料など)
- 治療部分(処置、注射、投薬など)
- 付加価値部分(検査料・画像診断料など)
「3」が実は最も売上が変動する部分です。下世話な言い方になりますが「おいしい部分」です。患者さんが望むのであれば、自由診療に踏み込む検査えを行なうことも可能です。ここでの売上を考え、そのための医療機器を導入するのも一つの方法です。
一例を挙げます。「低血圧による疾病への対応」を得意とするクリニックがあります。そこでは、立位まで傾けることが可能なベッドを導入しています。普通はこのような医療機器がクリニックに必要となることはないでしょう。しかし、そのクリニックでは、初診・再診を問わず、患者さんが訪れるたびにこれを用いて「正確な血圧測定」を行います。これが検査料収入になっています。
少し特殊な例かもしれませんが、そのクリニックに特徴があれば、このようなことも可能というわけです。
医療機器選定の準備
ただし、上掲はあくまで③の付加価値ブロックの話です。その前に①②がきちんと行える医療機器の選定をしなければなりません。
- レセプトコンピューター(レセコン)
- 電子カルテ
- 予約システム
- 検査ファイリングシステム
- 一般的治療に使用する機器
です。その次に、③に該当する医療機器について考えましょう。MRIやCTといった高価な医療機器を導入するのなら、近隣の医療機関がどのように整備しているのかを知らねばなりません。つまり診療圏調査が必須です。
「診療圏はどのような年齢層か?」「近隣の医療機関の高額医療機器の整備状況はどうか?」について、競合クリニックを調べます。MRIやCTといった高価な医療機器がその地域にすでにあって医療機関が連携している状況なら、無理してクリニックにそれらを入れず、まず連携に加わることを考えましょう。
さらに、「自院の武器になる、得意分野の医療機器は何か」について考えましょう。上記の例でいえば「立位まで傾けることが可能なベッド」のようなものです。例に挙げたクリニックでは、これを導入して「自院だけの特徴」「経営の支えになる検査料収入の確保」と一石二鳥の効果を上げているわけです。この例からも分かるとおり、MRIやCTより、クリニックを際立たせる医療機器をこそ導入するべきです。
さらに、医療機器の導入についてはコストをきちんと考えます。
イニシャルコスト・ランニングコストについて確認
例えば高額なMRIを入れたとしてもそこまでニーズがないのであれば赤字になります。最初にかかるイニシャルコストも高額ですし、大きな電力を食うのでランニングコストもばかになりません。たとえ自院の大きな特徴となる医療機器であってもペイしないものを無理に入れるのは避けましょう。イニシャルコスト・ランニングコストを計算し、必要・不要を判断してください。
クリニックである以上、必要な医療機器はそろえなければなりません。しかし、レセコンや電子カルテといった診療の基礎で必須のもの以外に、自院をアピールできる医療機器も導入したいところです。「クリニックの特色を出すために必要な医療機器」「クリニックの経営にとって必要な医療機器」についてぜひ考えてみてください。