開業にむいている科とは?

開業にむいている科とは?

筆者は医者として、10年勤務を続けています。その視点から、開業にむいている専攻科について解説をします。

1.消化器内科

内科の中でも、消化器内科は開業にむいています。

消化管内視鏡検査ができる

内科とひとくくりにしても、色々な専門科があります。例えば、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、神経内科、血液内科、腎臓内科など、あげれば10種類以上にも上ります。ただ、内科医として開業をする場合、多くの医師は一般内科として開業します。

勤務医として中核病院で働いていたときは、それぞれの専攻科特有の手技を活用して治療したりします。例えば、循環器内科であれば心カテ検査をします。狭心症が疑われれば、カテーテル検査をおこないます。また、心筋梗塞を起こせば、緊急心臓カテーテル治療をおこなったりします。また、呼吸器内科は気管支鏡検査で肺がんの診断をおこなったり、血液内科は骨髄穿刺をして血液がんの診断をしたりします。

しかしながら、一般内科として開業すると、上記の手技はリスクが高いためなかなかおこないません。検査、治療中に急変を起こす可能性もあります。そのため、バックアップがしっかりしている中核病院でおこなうのが通常です。

一方で、消化管内視鏡検査は、クリニック(開業医)レベルでおこなうことが可能です。

消化管内視鏡検査とは、一般的に胃カメラ検査や大腸内視鏡検査を示します。これらの検査は、心臓カテーテル検査や気管支鏡検査とは位置づけが異なります。心臓カテーテル検査や気管支鏡検査は心電図検査、CT検査等で病気を疑われてからおこなう検査です。また、合併症のリスクも比較的高いものです。

一方で、消化管内視鏡検査は、胃がんや大腸がんといった病気を調べる検査になります。なので、対象者は病気を疑われる患者だけでなく、一般住人を対象に検査をおこないます。そうすると、利用者が他の内科に比べても幅広くなります。

胃カメラ検診のバイトで開業資金をゲット

消化器内科は、開業医とならずとも収益性の高い内科です。一般内科としての外来バイトだけではなく、胃カメラ検診のアルバイトもできます。更に、胃カメラ検診バイトは特別手技であるので、バイト単価が高いです。

筆者の地域(都心郊外)であると、半日(約3時間)の胃カメラ検診バイトは、8万円くらいの給与がでます。これは、一般内科の外来バイトに約2倍の単価になります。また、外来業務とは違い、患者さんと会話する量も少なく、医者の業務のなかでもストレスが少なくすむ傾向にあります。

消化器内科医の中には、将来開業を考える医者も多くいます。胃カメラ検診バイトを重ねて、将来の開業の軍資金にしようと考えている医者も結構います。

一般内科としても幅広い

消化器内科は、一般内科としても幅広い活躍ができます。腹部だけではなく、一般内科として、呼吸器の症状に対する治療をしたりします。外科医が開業するよりも、内科医が開業したほうが専門性を保って診療ができます。クリニックの診療のほとんどが、外来業務になります。この外来業務自体の面白さがあるのが、内科が開業する最大の利点です。

いくら開業医の収益が高いとはいえ、仕事の内容が面白くなければ意味はないです。

2.整形外科

筆者は整形外科医(整形外科専門医)です。整形外科は開業にとても向いている専攻科です。

患者ニーズが高い

診療科別全患者数は下記のとおりです。

内科4,300万人
整形外科2,000万人
外科1,000万人
小児科、皮膚科、眼科、産婦人科500万人以下

参考:日本整形外科学会より一部参考

内科がダントツの1位ですが、内科はいろんな分野を含んでいます。呼吸器、消化器、循環器など、いろんな専攻分野を含んで「内科」です。一方で、整形外科は"単科で"内科の半分の2,000万人の需要があることがわかります。たとえば、腰痛の生涯罹患率は80%を超えます。こうした患者さんは整形外科を受診します。

内科と競合しない

循環器内科でも消化器内科でも、内科で開業するとそれぞれが競合をしてしまいます。内科病院がある地域に、新規に病院を開業しても競合になってしまいます。新たな患者さんも、古くからある病院を信頼していれば、そうそう受診はしてくれないでしょう。

一方で、整形外科は内科とは競合しません。むしろ、内科病院の隣に整形外科として開業すれば「内科のついでに整形外科を受診しよう」となります。またその逆もあり、先に開業をしていた内科病院も喜んでくれる場合があります。

収益を拡大しやすい

整形外科は運動器疾患と関連しているため、リハビリ事業を展開もしやすいです。郊外に大きなリハビリ施設を併設した整形外科も珍しくありません。実際に、外来リハビリテーションのニーズの高さは、勤務医として整形外科医をしていても強く感じます。さらに、まだまだリハビリの需要に対して、供給が不十分であることも感じます。

開業をしてもスペシャリティーを保ちやすい

一般外科として勤務医を勤めた後に開業します。すると、元々していた手術はできなくなってしまいます。なぜならば、腹部や胸部手術は全身麻酔で手術を要するためです。一方で、整形外科は手術をしなくてもスペシャリティーを保てます。腰痛や膝痛、肩痛といった関節の痛みの診察、診断は、他科には判断できない分野になります。

開業をしても、小手術ならば可能

手足のケガや小手術ならば、局所麻酔をすることで可能です。たとえば、ばね指の手術は、十分クリニックでもおこなえます。手術が好きな医師も、開業しても手術が続けられるのも利点です。

3.眼科

開業しても手術が続けられる

眼科の主な手術である白内障の手術を含め、多くの手術は局所麻酔で治療ができます。なので、大学病院や市中病院でおこなう手術とクリニックでおこなう手術はほとんど変わりありません。なので、気兼ねなく開業に踏み切れます。筆者のお世話になった眼科の先生は、ある市中病院の眼科に夫婦で勤務していました。それからしばらくすると、夫婦で開業しました。こういったことができやすいのも、眼科の強みだと考えます。

女医さんが多い

眼科は全身管理があまりないため、ライフワークバランスが取りやすい科です。そのため、昔から女医さんに人気です。女医さんに人気なのは、外来のアルバイトやクリニックでの勤務医です。開業すると、他の医者の雇用や確保で苦労することになるからです。子育て中でパート勤務を望む女医さんも多くいますので、働き手を探すことはそこまで難しくはないでしょう。

筆者の先輩の眼科医は、数店舗眼科を経営しています。それぞれの病院に、女性医院長を雇っています。こういった働き方もしやすいのも、眼科の特性と考えます。

開業をしてもスペシャリティーを保てる

整形外科同様、開業してもスペシャリティーを維持しながら仕事ができます。

今後ニーズが高まることが予想される

高齢になると、多くのひとは白内障になります。80歳以上になると、70?80%の人が白内障になると言われます。さらに、生活習慣病である、糖尿病患者数は多くなります。糖尿病にかかると、糖尿病性網膜症を合併する可能性があります。糖尿病の治療と眼科受診はほぼセットの治療となるため、高齢化が進んでいる今後、眼科のニーズはますます高まります。

4.精神科

精神疾患は現代病

うつ病をはじめ、精神疾患はかつて無いほど注目を集めています。抑うつ状態を含めれば、多くの人がかかる病気と考えられます。また、精神疾患を含め、脳をあつかう分野は科学的発展の目覚ましい分野でもあります。新たな治療法が次々に出てくる分野でもあります。

少ない開業資金で始められる

精神科の診断、治療の基本は問診になります。CTやMRIといった大掛かりな器械を必要としません。また、リハビリ施設や診察、処置スペースを必要ともしません。そのため、場所や設備を選ばずに開業できます。

対極的なのが整形外科です。整形外科は、最低でもレントゲン装置は必須になりますし、処置道具も多く必要です。リハビリ施設を増設したり、事業拡大したりはしやすいですが、一方で借り入れ金額も大きくなりやすいリスクもあります。

一方で、精神科の開業資金は少なく始められるのが最大の利点です。

患者さんの継続通院率が高い

精神疾患は1回の受診で完治するのは難しいです。最低でも半年?1年以上は通院して、病状を安定させることが必要です。また、その後も長期的に通院を続けることが多いです。うつ病や統合失調症といった病気は、20代でも発症する病気です。そのため、その後、何年も通院することになりえます。継続通院率があがれば、それだけ病院の経営は安定しやすいメリットがあります。

上記の専攻科は、筆者が特に開業にむいている専攻科と考えています。

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